児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

盗撮と製造罪

 アクセスログにこういう検索がありますが、

proxy02.police.pref.×××.jp
http://search.yahoo.co.jp/search?p=児童ポルノ法 盗撮 単純製造

 一般的には
  「盗撮とか隠し撮りなら3項製造罪(姿態とらせて製造)は成立しない」
ということになりますが、「姿態をとらせた」がないから成立しないと説明されています。
 性交等の姿態を撮影するのではなく、性交等の姿態を取らせて撮影するのが3項製造罪(姿態とらせて製造)だから。
 でも、隠し撮りなら事情を知っている犯人が「姿態をとらせた」こともあり得るわけです。一概に成立しないとは言えません。
 さらに、事実認定上、ハメ撮りの場合の「姿態を撮影」と「性交等の姿態を取らせて撮影」の区別は極めて微妙ですね。
 つくづく、刑事事件の証拠を見たことがない人が作った法律だと思います。

新司法試験組どっと、現場悲鳴 法廷に座る場所もなく

 奥村も修習生時代、傍聴席で傍聴していたことがあります。修習生全4人を2班に分けていたので、参考になる事件で全員傍聴することにしても、残りの2名は傍聴席。

http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200611260272.html
東京地裁刑事部ではかつては一つの部で受け入れるのは2人程度だったが、12月から8人を同時に指導する。3人の裁判官で行う合議事件の法廷では裁判官脇にすべての修習生が座る場所はなく、一部は傍聴席で見学することになりそうだ。

 裁判官側からは、訴訟関係者や法廷内がよく見えます。弁護士になると、二度と、そこには座れません。 
 最近でも特に興味ある事件の判決を傍聴することがあります(必死でメモすれば、判決閲覧しなくても済むから)が、岡目八目で、大変勉強になります。

会派誌「法曹同志会」2006秋季号

 よその会派の雑誌も読んでいます。
 立派な冊子が配布された。
  特集 消費者契約法研修委員会報告
は役に立つ。
 ところで、会員近況として、ネット関係で有名なO弁護士(テレビにも時々出てる)が、写真を載せて御家族を紹介されているのだが、弁護士の肖像写真が似てないような気がする。
 人のことはいえないが。

『インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン』等の公表について

 パブコメ、面倒だから出さなかったんですが、実は、裁判所に「掲示板管理者の刑事責任についてはこのガイドラインを採用してください」とお願いした事件の判決を待っていますので、その当否とか適用範囲についても判断があると思います。

○ 児童(18歳未満)に該当する場合
・ 画像等に描写されている対象者の外見(例:陰毛がない、幼児、小学生にしか見えない)から明らかに18歳未満と認められる場合
・ 画像等に描写されている対象者の外見に加え、附随する情報(対象者の年齢に関する情報等)、対象情報が掲載されているウェブサイトや電子掲示板に掲載されている他の情報(他の画像等の内容等)等から、18歳未満と認められる場合

というのは、要するに、もっぱら画像の人物(顔・体つき)で判断することになって、「これはどうなんだ」という相談が多いです。
 プロバイダーは小児科医じゃないから、素人の常識的判断でいいと思います。
 見かけ20歳の人がセーラー服を着て「中高生」って説明してあっても、「20歳」ですからね。
 

http://www.telesa.or.jp/consortium/Illegal_info/20061127.htm
インターネットは国民の社会活動、文化活動、経済活動等のあらゆる活動の基盤となる等国民生活にとって必要不可欠な存在となっておりますが、一方で、インターネット上における児童ポルノの公然陳列、違法な出会い系サイト、規制薬物の濫用を唆す情報等の法令に違反する情報の流通が社会問題となっております。
 これらの違法な情報については、発信側への対応、受信側の対応等が行われているところですが、情報の流通の場を提供する電子掲示板の管理者やウェブサーバの管理者においても、何らかの対応が可能な場合があります。しかしながら、電子掲示板の管理者等は、必ずしも法律の専門家を擁しているわけではなく、又、容易に相談できる状況にない場合もあるため、特定の情報の流通が法令に違反するか否かの判断に関し、法解釈及び事実認定の両面から困難が生じる場合があります。
 このような状況をふまえ、電気通信関連4団体において、違法な情報に対して適切かつ迅速な対応を行うことができるよう「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン(案)」、および「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項(案)」を取りまとめ、同案について、10月25日から11月15日まで意見募集を行いましたところ、合計19件のご意見をいただきました。ご意見をいただきました方々のご協力に御礼申し上げます。
 このたび、皆様からお寄せいただいたご意見をふまえ、「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」、および「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」を策定しましたので、公表いたします。
 本ガイドライン等は、電気通信関連4団体に属さないプロバイダや、電子掲示板やウェブサーバの管理者等においても、違法な情報等への対応に際しては、本ガイドライン等を参考にしていただきたいと考えております。
 今回のガイドライン等の公表の結果、インターネット上の違法な情報への対応指針が明らかになることにより、適切かつ迅速な対応が促進されることを期待しております。

↓こんなのは当然であって、言わずもがなです。

http://www.telesa.or.jp/consortium/pdf/20061127think.pdf
提出された意見の概要及びそれに対する考え方
児童ポルノが実在する児童を描写したものに限られているのはご意見のとおりです。ご意見を踏まえて、ガイドライン中の「児童ポルノ」という用語に以下のような注記を加えることとします。
「本ガイドラインでいう「児童ポルノ」とは実在する児童を描写したものを指し、「実在しない児童」を描写した画像等を含まない。」


なお、このガイドラインは法律ではありませんから、裁判所は、刑法総則の解釈の範囲で、いろいろ対応してくると思います。


追記
 「素人でもわかるように」とはいうけれど、画像の人物が児童かどうかについて警察が小児科医や産婦人科医に判断させている点については、管理者に判断させているところは、免責する仕組みが必要ですね。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/27/news076.html
ガイドラインは、わいせつ物の公然陳列や児童ポルノの公然陳列、売春防止法違反、出会い系サイト規制法違反、薬物関連法規、振り込め詐欺関連法規、携帯電話不正利用防止法違反など違法な書き込みについて、法律に明るくない管理者でも、違法と判断できる基準を定めた。

通帳詐欺の論点

 詐欺罪もやってます。

 違法な目的を秘して口座を開設したことが、銀行に対する詐欺罪(通帳・カード)を構成するか?
 1件上告しました。
 犯罪収益と知らずに運用して利益を得ていた銀行の「財産的損害」とはなんでしょう?
 だいたい、ネットバンクをみれば通帳なんて必ずしも必要ないのに。



 追記1128
 前例としては、福岡地裁H16.6.23、東京高裁H16.11.16があって、文献としては

  • 松並孝二「他人に譲渡する意図を秘して自己名義の預金口座を開設し、金融機関から預金通帳等の交付を受けた行為に詐欺罪を適用した事例」研修674
  • 辻裕教「他人に譲渡する意図を秘し、自ら利用するように装って、預金口座を開設し、銀行から自己名義の預金通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為について詐欺罪の成立を認めた事例」警察学論集第58巻第9号
  • 実例捜査セミナー 自己名義預金口座開設に伴う通帳等詐欺事犯の捜査について / 日野 浩一郎 捜査研究. 53(11) (通号 639) [2004.11]

がある。

阪高裁H18.9.21
第5控訴趣意中,詐欺罪に関する法令の解釈適用の誤りの主張について(控訴理由第8)
論旨は,原判決は,その判示第5の詐欺につき,被告人がYと共謀の上,Yが開設した口座を自ら使用する意思はなく,かつ,交付を受けた預金通帳及びキャッシュカード(以下「通帳等」という。)を被告人に直ちに譲渡する意図を秘して,金融機関から自己名義の通帳等をだまし取った事実を認定し,本件詐欺の事実につき被告人を有罪としたが,口座開設時の金融機関の関心は,当該口座開設者が通帳等を自己の用途に使用するか,第三者に譲渡する意図であるかという点にはなく,また,通常そのような確認は行われていないから,口座開設者においてこれを告げる義務もなく,たとえその目的を秘していたとしても詐欺罪の欺同行為には当たらない,それにもかかわらず,上記事実につき詐欺罪の適用を認めた原判決には,刑法246条に関する法令の解釈適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,通帳等を預金口座名義人以外の第三者に貸与ないし譲渡してはならないことは通常預金規定上明記されている上,近時マネーローンダリングを防止する観点から,預金口座の名義人とその実際の利用者との一致が求められ,口座開設時における本人確認の徹底が図られていることにも照らせば,名義人のみが預金口座及びその通帳等を利用し,それ以外の者が利用しないことは,金融機関にとって極めて重要な事項といえる。そうすると,もし,通帳等を他人に譲渡する目的で預金開設を申し込んだことが当初から判明していれば,金融機関として当該預金口座の開設に応じないのは当然であって,このような目的を秘し,自ら利用するかのように装って口座開設及び通帳等の交付を申し込む行為が,金融機関に対する欺同行為に当たることは明らかである。
なお,所論は,本件が不作為による詐欺に当たることを前提に,口座開設者において第三者に譲渡する意図を告知する義務はないから,これを秘していたとしても詐欺罪の欺岡行為には当たらない,と主張する。しかし,本件において,Yは,前記のとおり真意と明らかに矛盾する外観を積極的に装ったものであって,作為による詐欺と評価すべきものであるから,所論はその前提を欠くというべきである。