児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

粟田知穂(あわたともほ)検事曰く「わいせつな行為とは,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいう」(条文あてはめ刑法)

「わいせつな行為とは,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいうものとされます」(金沢支部s36.5.2)は、性的意図を含み社会的法益を重視する定義であり大法廷h29.11.29では採用されませんでした。

高裁判例は定義を模索しています。

 いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう(金沢支部S36.5.2)
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 性的自由を侵害する行為(大阪高裁 大法廷h29.11.29の控訴審
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 「一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。」東京高裁H30.1.30(奥村事件 上告棄却)
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 「被告人が13歳未満の男児に対し,~~などしたもので,わいせつな行為の一般的な定義を示した上で該当性を論ずるまでもない事案であって,その性質上,当然に性的な意味があり,直ちにわいせつな行為と評価できることは自明である。」(広島高裁H30.10.23 奥村事件 上告中)
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「わいせつな行為」に当たるか否かは,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すべきである。(福岡高裁H31.3.15)

条文あてはめ刑法

「わいせつな行為」
わいせつな行為とは,性欲を刺激,興奮又は満足させ, かつ,普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいうものとされます5)。
5)名古屋高金沢支判昭和36. 5 . 2下刑集3 . 5=6 .399
ただし, その保護法益は個人の性的自由ですから,被害者の意思に反するかどうかが重要であり,例えばキスをする行為は,公然わいせつ行為には該当しませんが,被害者の意思に反して無理に行うときは強制わいせつ行為となります6)。
具体的に問題となるのは,着衣の上から身体に触れる態様ですが,陰部や乳房を下着の上から撫でるような態様についてはわいせつな行為と言い得る7)一方, それに至らない態様のものについては,痴漢行為として条例違反により処理されることが多いようです(例えば,東京都や大阪府では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」等において,人を著しく差恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法で,公共の場所又は公共の乗物において,衣服等の上から又は直接人の身体に触れることを禁止しています。
ただし,条例による罰則により科することのできる刑は法176条の法定刑をかなり下回るため, まずは強制わいせつ行為に該当しないかどうかという検討を先行させるべきでしょう。)。また,従来強制わいせつ行為とされていた行為のうち,肛門性交, 口腔性交については,改正後は法177条の強制性交等罪により重く処罰されることとなりました(後述「5性交等」)。
本件事例においては, 甲がVに対して行った行為のうち,右手でVの右胸を鴦掴みにして更に抱き付くようにした行為については,冬季における着衣の上からとは言え,被害者の性的自由に対する侵害が相当程度認められるので, わいせつな行為といえるでしょう。
ただ, その前のVの頬に唾をかけた行為については, Vの心情を考えるとやり切れない思いもありますが,客観的に性的差恥心を害するものに至っているかについて疑問があり, わいせつな行為には至らず,暴行にとどまると解することが多いのではないでしょうか。
他方, 甲が保管していた動画十数点に記録された甲の行為については,前述のとおり, その具体的態様を明らかにした上で,法177条の強制性交等に至っているか,法176条のわいせつな行為に当たるか, それとも痴漢行為として条例違反に止まるか(ただし, その場合に公共の場所における行為といえるかについては問題となり得ます。) ,判断することになると思われます。