児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

バルテュス「夢見るテレーズ」は日本法の児童ポルノには該当しない。

バルテュス「夢見るテレーズ」は日本法の児童ポルノには該当しない。

 日本の児童ポルノ法に照らすと、実在が証明されないと「児童」に該当しません。
 3号ポルノの「衣服の一部を着けない児童の姿態」の要件については、社会通念の判断になり、スカートは下が空いていてもそれで衣服の「全部」を着けていることになるし、風でめくれることもあってこの絵のように座ると下着が見えることもあり得る衣服なので、この要件に該当しないと考えます。着エロの裁判例が参考になります。
 次に「殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているもの」は検討の必要がありませんが、該当しないと思います。
 さらに「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は、検討する必要がありませんが、これで興奮するのが一般人だとは思いません。
 芸術性も問題になることがありますが、上記の通りですからこの絵については検討する必要がないと思います。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第二条(定義)
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

横浜地裁の事例
極小の水着等を着用させてはいるものの,その一部を陰部に食い込ませるなどして性器の周辺を露わにさせ,あるいは,臀部を露わにするようにずり下げるなど,社会通念上衣服の一部を着用していない状態で,殊更に性器や臀部等を強調した姿態
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東京地裁の事例
被害児童が乳首や陰部がかろうじて隠れる程度の極めて小さい水着,ひも状のパンツあるいは半透明のレオタードを着用している様子が描写されていることが認められる。したがって,本件DVDの本編部分は,衣類の一部を着けない児童の姿態を描写したものと認められる。
そして,本件DVDの本編部分の大部分は,水着等の性器に当たる部分を引っ張って性器に食い込ませている場面,水着等の上から性器に指やハンドバイブを当てるなどしている場面,発泡スチロール製の人の頭の模型の口部分に性器を押しつけて腰を前後させている場面,ガラス瓶やバナナを舌でなめたり,口に出し入れした上,唾や練乳を口から垂らすなどしている場面等,性器の部分を殊更強調したり,性的行為を暗示したりする場面で占められている。
したがって,本件DVDの本編部分は,全体として性欲を興奮させ又は刺激するものであることも明らかである。
そうすると,本件DVDの本編部分は児童ポルノに該当し,これに描写された姿態と同ーの姿態が描写されていたと認められる本件ビデオカセットテープについても,児童ポルノに該当するものと認められる。
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横浜地裁の事例
水着を着るなどした当時9歳又は10歳の女児を被写体として撮影された動画映像であり,その中には,ハイレグ・Tバックの極小面積の水着のみを着用した同女児がバランスボールを使って運動する様子を,至近距離からその股間及び露出された啓部に焦点を当てて撮影した場面等が含まれている。
かかる女児の着衣の状況及び撮影方法に照らせば,上記DVDは,衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され文は強調されているものであり,かつ,一般人を基準として性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものと認めるのが相当であるから,児童ポルノ法2条3項3号の児童ポルノに該当する。
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名古屋高裁金沢支部平成17年6月9日
2 しかしながら,まず所論①が指摘する6個の3号児童ポルノの画像について見ると,被害児童がベッド上で,スカートを腰まで捲り上げて四つん這いの状態になり,両足を開いてハンティーを露出させ, しかも,ハンティーの陰部に当たる部分を殊更に細くして,陰部が見える状態にした画像であることが認められるのであり,そうすると,これらは社会通念上衣類の一部を着けていない状態であると認定することができる。

http://www.sankei.com/world/news/171225/wor1712250030-n1.html

芸術か、わいせつか論議 NY、バルテュスの少女画
米ニューヨークのメトロポリタン美術館で、故バルテュス氏の「夢見るテレーズ」を鑑賞する人たち=7日(ゲッティ=共同)

 米ニューヨークのメトロポリタン美術館に展示されている著名画家、故バルテュス氏による少女の下着が見える構図の絵画が芸術か、わいせつかを巡り論議を呼んでいる。いかがわしいとして撤去を求める署名活動が進むが、美術館は表現の自由を理由に拒否している。

 米国ではハリウッド映画界の大物プロデューサーのセクハラ疑惑発覚を機に自らの被害体験を証言する動きが広がっており、わいせつ性への意識の高まりも撤去要求の背景にありそうだ。

 バルテュス氏はフランス人で「20世紀最後の巨匠」とされた。絵画は代表作の一つで1938年の「夢見るテレーズ」。目を閉じて椅子に座る少女が片膝を上げてスカートの中の下着が見える姿勢を取っている。

 オンラインで署名活動を始めた女性ミア・メリルさんは「美術館が誇らしげにこのような絵を展示しているのは不快だ」として撤去するか説明文を添えるよう要求。23日時点で全米の女性を中心に1万1500人を超す署名が集まった。(共同)