児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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師弟関係の強制わいせつ事件(刑事事件では否認・有罪)につき、183万円の慰謝料が認容された事例(奈良地裁葛城支部H28.11.7)

 わいせつ行為は2回
 学校が110万円支払ったのは控除されています。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/edit?date=20990706

奈良地方裁判所葛城支部
平成28年11月07日
愛知県(以下略)
原告 X
(旧姓X’)
同訴訟代理人弁護士 安永一郎
同 林慶行
奈良県(以下略)
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 金岡繁裕
同 佐竹靖紀

主文
1 被告は、原告に対し、183万3220円及び内金123万3570円に対する平成28年4月12日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その6を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求の趣旨
 1 被告は、原告に対し、300万円及びこれに対する平成23年2月21日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 2 訴訟費用は被告の負担とする。
 3 仮執行宣言
第2 事案の概要
  本件は、B高等学校(現「C高等学校」。以下「B高校」という。)の生徒で同高校の女子柔道部(以下、単に「柔道部」という。)に所属していた原告が、B高校の教諭で柔道部顧問・監督であった被告からわいせつ行為(以下「本件不法行為」という。)を受けたと主張して、被告に対し、不法行為民法709条及び710条)に基づき、損害賠償金の一部である300万円及びこれに対する原告がB高校柔道部女子寮から自宅に帰った平成23年2月21日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
  (7) 被告の刑事事件(以下「別件刑事事件」という。)
  ア 被告は、平成23年6月14日、同年2月21日午前9時頃から午前10時30分頃までの間にラブホテルにおいてAの尻を着衣の上から触るなどしたという強制わいせつ罪で名古屋地方裁判所に起訴され(同裁判所平成23年(わ)第1128号)、さらに、同年8月8日、平成22年11月28日午後11時30分頃に柔道部の寮の被告居室において原告の臀部等をなでるなどしたという強制わいせつ罪で同裁判所に追起訴された(同裁判所平成23年(わ)第1637号)。その後、原告に対する強制わいせつ罪の公訴事実については、犯行日時を「平成22年11月28日午後11時30分頃」から「平成22年11月下旬頃から同年12月上旬頃」に変更する請求がされ、許可された。(甲2、31)
  イ 別件刑事事件第1審は、平成25年9月9日、前記アの各公訴事実(原告に対する強制わいせつについては、訴因変更後の公訴事実)を認定し、被告を強制わいせつ罪により懲役2年2月、執行猶予3年に処した。被告は、同判決に対して控訴したが、別件刑事事件控訴審は、平成26年3月6日、被告の控訴を棄却した(名古屋高等裁判所平成25年(う)第338号)。(甲2、35)


第3 当裁判所の判断
 1 争点1(本件不法行為の有無)について
  (1) 別件刑事事件第1審での原告の供述について
  ア 別件刑事事件第1審での原告の供述の概要
  別件刑事事件第1審では、原告の証人尋問が平成24年3月1日の第4回公判期日及び平成25年2月4日の第13回公判期日の2回にわたって行われた(以下、前者を「1回目の証人尋問」、後者を「2回目の証人尋問」という。)。その供述(以下「原告供述」ともいう。)の要旨は、以下のとおりである。(甲4の2、甲40)
  (ア) 原告は、中学時代に柔道を始め、その指導者になりたいと思っていたが、中学時代の柔道の先生から被告のことを勧められ、B高校柔道部に入部し、同部の寮に入った。
  被告からは、練習試合で負けてのどを拳で突かれたり、元柔道部員の母親が倒れたという話をした際に同人が倒れた理由を問われて答えられずに首を蹴られたりといった暴力を受けたことがあった。また、他の柔道部員も、被告から暴力を受けていた。そのため、暴力を振るわれたり、練習をさせてもらえなかったりすることが怖くて、被告に逆らうことはできなかった。
  (イ) 原告は、平成22年11月27日の練習中に、被告に腰が痛いと言ったところ、被告から、腰を見てやると言われて女子更衣室に呼ばれた。女子更衣室に入ると、被告は、出入口の鍵を閉めた。
  原告は、下着の上にTシャツとスパッツを着て、その上に柔道着を着ていたが、柔道着の上を脱ぎ、ロッカーに手をつき、尾てい骨よりも少し上辺りに手を当てて、この辺りが痛いと言った。すると、被告は、「ちょっとずらすで。」と言ってスパッツと下着を臀部の下辺りまでずらし、「ここか。痛いのここか。」と言いながら、先ほど示した場所とは違って臀部の中央より下辺りを、両手で5分から10分程度触った。その後、被告は、「また病院に行こか。」などと言った。逆らったら怒られると思って、止めてくださいなどとは言えなかった。
  (ウ) 同日から約2週間以内のいずれかの日だと思うが、原告が被告と二人で車に乗っていると、腰の痛みについて被告から「楽になるかもしれへんから、テーピングしてみようか。」と言われた。原告は、腰が痛いのにテーピングする必要があるか疑問に思うと共に、再度着衣をずらされるかもしれないので抵抗を感じたが、「はい。」と答えた。午後9時か10時頃に寮に戻ると、被告は、「風呂入っとけ。」と言って、Aと共にどこかへ行った。
  原告は、風呂に入った後、被告から呼び出されて寮の1階の被告の部屋へ行き、被告と二人きりになった。その後、被告がたんすを指さして、「そこに手ついて。」と言ったので、原告は、たんすに手をついた。すると、原告の後ろに座っていた被告は、「ちょっとずらすで。」と言って、はいていた半ズボンと下着を足首まで下げた。すごく驚くと共に、生理前でおりものシートを下着に貼っていたのですごく恥ずかしいと思ったが、逆らうと何をされるか分からなかったので、やめてくださいなどと言うことはできなかった。そして、被告は、原告の腰回りに1周テーピングを施し、臀部から両足のふくらはぎにかけてそれぞれ1本ずつテーピングを施した。その後、被告から「ちょっとこっち向いてくれるか。」と言われて振り返ると、ひざまずいていた被告の顔が原告の下半身の前辺りにあったので、とても嫌で恥ずかしい気持ちになった。そして、被告は、原告の腰回りに再度1周テーピングを施した。テーピングを施した後、被告は、原告の臀部からふくらはぎ辺りを何度もなで回すように約10分間触った(本件不法行為)。すごく恥ずかしくて、早く終わってほしいと思ったが、被告にやめて欲しいと言うことはできなかった。
  原告は、被告の部屋を出て、2階の部屋に戻り、Aを含む複数の寮生に、ズボンを下げられて臀部を触られたことを、再現を交えて話すと、寮生らは、とても驚いていた。また、その日のうちに彼氏に電話をし、着衣を下げられて下半身を見られたことを話すと、彼氏は、すごく驚き、怒っていた。さらに、その日か次の日に母親に電話をし、下着をずらされてテーピングを巻かれたことや生理前でおりものシートを貼っていたところを見られたかもしれないことなどを話すと、母親は、とても驚いていた。
  (エ) 原告は、被告からテーピングを施されるなどした後、柔道部を辞めることを考えたが、辞めることで中学時代の先生や母親を裏切らないために、辞めずに頑張ろうと思っていた。
  しかし、平成23年2月下旬頃、原告が洗い物当番なのに洗い物をしなかったところ、被告が、原告だけでなく先輩にも怒ったり、原告に「強くなれへんのはテーピングお願いしますって言いに来うへんからや。」と言ったりしたので、原告は、テーピングを頼んで下半身を見られたくなかったことなどから、ついに寮を飛び出した。
  その後、柔道を続ける意味が分からなくなり、原告は、柔道を止めて、B高校も止めた。
  (オ) 同年6月6日、被告のAに対するわいせつ事件について女性警察官が話を聞きに来た時、原告も被告からの被害を受けているかどうか聞かれたので、原告は、警察官に隠し事をするのはよくないと考え、また、被害届を出したAを見習って勇気を出して被害を申告しようと考え、前記女性警察官に本件不法行為を申告した。
  イ 原告供述の信用性
  (ア) 原告供述は、本件不法行為の際、おりものシートを貼っていたのに下着などを下げられてすごく恥ずかしく思ったという点など、総じて非常に具体的かつ迫真的である。また、原告供述は、以前から被告に暴力を振るわれており、逆らうと怒られると思って2回のわいせつ行為(女子更衣室でのわいせつ行為及び本件不法行為)を拒否できなかったという点、本件不法行為後も柔道部を辞めなかったが、被告から強くなりたければテーピングを頼みに来いという趣旨のことを言われ、自らそのようなことを頼んで下半身を見られたくはなかったことなどから寮を飛び出したという点、被告のAに対するわいせつ事件についての警察官の事情聴取の際、被害届を出したAを見習って勇気を出そうなどと考えて本件不法行為を申告したという点など、原告の行動を合理的に説明できる自然なものでもある。
  さらに、原告は、本件不法行為後すぐに、寮にいたAらに、本件不法行為を伝え、本件不法行為の当日か翌日に、母親に、下着をずらされてテーピングを巻かれたことや生理前でおりものシートを貼っていたところを見られたかもしれないことを電話で伝えたと供述するところ、Aは、別件刑事事件第1審の証人尋問において、平成22年11月頃、被告と夕飯を食べに出てから寮に帰り部屋にいると、原告が部屋にやって来て、被告にテーピングされる際に下着を脱がされたと話したなどと供述し(甲4の4)、母親は、別件刑事事件第1審の証人尋問において、同月末頃、原告から電話があり、被告に部屋に呼ばれ、テーピングをすると言われて、生理前でナプキンを着けていたのに下着もすべて下ろされたことや、自分がされたことを先輩に伝えると、まだましだなどと言われたことなどを話されたなどと供述しており(甲4の3)、原告供述は、A及び母親の供述と良く符合する。
  これらの事情からすると、原告供述は信用できる。
  (イ)a これに対し、被告は、〈1〉被告には、平成22年11月下旬頃から同年12月上旬頃の間、本件不法行為の機会がなかったこと、〈2〉原告は、本件不法行為の日について、1回目の証人尋問と2回目の証人尋問で異なる供述をした上、原告陳述書では、2回目の証人尋問と異なる陳述をしていることから、原告供述は信用できない旨主張する。
  また、被告は、〈3〉被告請求の原告本人尋問の申出が却下されたから、原告陳述書(甲42)に基づいて本件不法行為を認定することは、手続的に許されない旨主張する。
  b まず、被告の前記〈1〉の主張については、原告は、2回目の証人尋問において、本件不法行為は平成22年11月27日から約2週間以内に起こったと思うこと、その日は原告と被告が午後9時か午後10時頃まで二人で出かけ、かつ、Aが寮に泊まっていた日であることを供述するところ、証拠(甲4の5、4の8、乙2、4、5、6の1・6の2、7ないし11など)を検討しても、前記期間内にAが寮に泊まっていた日全てについて、被告が午後9時か午後10時頃まで原告と出かけ、その後本件不法行為を行う機会がなかったとは認められない。この認定は、原告が、2回目の証人尋問において、被告と二人で車でどこかへ行った日に本件不法行為があったが、同年11月中下旬から12月上旬までに被告と車で行った場所の具体的な記憶がないと供述していること(甲40)、原告が柔道部在籍中に作成していた柔道部ノート(甲47ないし49)のうち本件不法行為があったとされる期間の部分に、同年11月28日にE治療院へ行ったことを除いて被告と出かけたことの記載がないことなど被告の主張する点を考慮しても、揺るがない。
  よって、被告の前記〈1〉の主張は採用できない。
  c 次に、被告の前記〈2〉の主張については、証拠(甲4の2、甲40)によれば、確かに、原告は、1回目の証人尋問において、平成22年11月27日に女子更衣室で被告に臀部を触られるなどした翌日の同月28日に本件不法行為があった旨供述したが、2回目の証人尋問において、本件不法行為の日は同日ではなく、同月27日に柔道の練習をしなくなってから約2週間以内だと思う旨供述しており、本件不法行為の日について供述の変遷が認められる。
  しかしながら、原告は、2回目の証人尋問において、供述の変遷理由について、本件不法行為の前に車中で被告からテーピングを提案された記憶があったところ、同月28日にE治療院を受診しており、その受診の帰りにテーピングの提案をされたと思い、本件不法行為が同日にあったと考えたが、その後、同日にAが寮に泊まっていなかったことを知り、前記受診の後に本件不法行為があったという記憶よりも、本件不法行為の直後にAにそのことを話したという記憶の方が確実なので、本件不法行為の日が同日であったという1回目の証人尋問での供述を変えたと供述する。原告は、本件不法行為の約半年後に、ようやく本件不法行為を警察に申告しているため、本件不法行為の日についての記憶があいまいで、その点の供述が後日判明した事情によって変遷することもやむを得ないと考えられることからすると、原告の供述する変遷理由は、十分に合理的である。本件不法行為の日のほかは、その内容等について供述の変遷がないことなども考慮すると、原告が1回目の証人尋問と2回目の証人尋問で本件不法行為の日についての供述を変えたことは、原告供述の信用性を減殺しない。
  なお、原告は、2回目の証人尋問において、女子更衣室で被告に臀部を触られるなどした事件と本件不法行為の先後関係について、前者が先だと思うが自信はないと供述し(甲40)、原告陳述書において、前者が先であると陳述している(甲42)。被告は、この点を捉えて、原告供述と原告陳述書において、本件不法行為と女子更衣室で臀部を触られた事件の先後関係等に関する供述が変遷しており、原告が、原告供述が偽証であることを認めたと主張する。しかしながら、前記のとおり、女子更衣室で被告に臀部を触られた事件と本件不法行為の先後関係について、前者が先だと思う旨の原告供述と前者が先である旨の原告陳述書における陳述は同趣旨であり、変遷したとは評価できない。よって、被告の主張は採用できない。
  以上によれば、被告の前記〈2〉の主張は採用できない。
  d その他、証拠及び弁論の全趣旨を検討しても、原告供述の信用性は揺るがない。
  e 続いて、前記〈3〉について検討するに、当裁判所は、前記認定説示のとおり、原告陳述書ではなく、別件刑事事件第1審での2回の証人尋問における原告供述により本件不法行為を認定しており、原告陳述書を基に本件不法行為を認定することを前提とする被告の前記〈3〉の主張は、採用できない。なお、前記各証人尋問では、被告の弁護人が原告に対して十分な反対尋問を行っていることなどからすると、当裁判所が被告請求の原告本人尋問の申出を却下したことは相当である。
  (2) 別件刑事事件第1審での被告の供述について
  これに対し、被告は、別件刑事事件第1審において、原告が練習中に腰にサポーターを着けていることに気づき、E治療院を受診する二、三日前に、被告の部屋において、原告から腰(背骨の尾てい骨よりも上辺り)を痛めていることを聞き、原告の承諾を得て、原告の下着を下ろさせて臀部を露出させ、両太ももの裏側から背中の中央辺りまでテーピングをしたが、原告の両太ももの裏辺りと背中にしか触れていないこと、下着を元の位置に戻させてから、さらに腰骨の上辺りにテープを2周ほど巻き付けたこと、テーピングのために臀部を露出させることについて、特に問題があるとは思っていなかったことを供述する(甲4の5。以下、同供述を「被告供述」ともいう。)。
  しかしながら、被告供述は、信用できる原告供述に反する上、原告が痛みを訴えた箇所と離れた両太ももの裏側から背中の中央辺りまでテーピングをした点、そのテーピングをした時、腰の痛みへの対処であるにもかかわらず、両太ももの裏辺りと背中にしか触れていない点などに疑問がある。また、教師及び柔道部の監督である被告が、テーピングの必要があったとしても、所属高校の女子生徒及び柔道部員である原告の臀部を密室において露出させたことについて、特に問題があるとは思っていなかったという点は不自然である。
  以上によれば、被告供述は信用できない。
  (3) 小括
  以上によれば、被告は、原告の意に反して、本件不法行為をしたことが認められる。これが原告に対する不法行為に当たることは明らかである。
 2 争点2(原告の損害)について
  (1) 慰謝料 200万円(請求額300万円)
  本件不法行為の態様(前記1)、原告と被告との関係及び原告の年齢(前提事実(1)イ、ウ)に加えて、原告は、本件不法行為を契機にB高校から転校し、柔道を止めてその指導者になるという夢もあきらめたこと(前提事実(5)、甲4の2、弁論の全趣旨)、被告が別件刑事事件において本件不法行為を否認したため、2回にわたる証人尋問において、本件不法行為についての供述をしたこと(弁論の全趣旨)など、本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は200万円が相当である。
  (2) 転校に伴う諸費用 19万8570円(請求額19万8570円)
  証拠(甲4の2)及び前提事実(5)によれば、原告は、被告からテーピングに際して臀部などを触られるという本件不法行為を受けたが、その後も、被告から「強くなれへんのはテーピングお願いしますって言いに来うへんからや。」などとテーピングを強要されたため、寮を飛び出し、平成23年5月、B高校からG高校に転校したことが認められる。以上によれば、本件不法行為とG高校への転校との間には相当因果関係があり、同転校に伴う後記の諸費用は、本件不法行為と相当因果関係ある損害と認められる。
  ア 選考料 1万円(甲20)
  イ G高校の制服代 3万8800円(甲21)
  ウ 平成23年度学費 44万8930円(甲22の2、23)
  エ 平成24年度学費 31万9540円(甲24、25)
  オ 小計 81万7270円
  1万円(前記ア)+3万8800円(前記イ)+44万8930円(前記ウ)+31万9540円(前記エ)
  カ B高校に在籍し続けた場合の学納金の損益相殺
  原告は、本件不法行為を受けてG高校に転校したことにより、平成23年5月から卒業(平成25年3月予定)までの23か月分の学納金の支払を免れた。よって、原告が支払を免れたB高校の学納金は、転校に伴う諸費用から損益相殺すべきである。B高校の1か月当たりの学納金は2万6900円である(甲6の1〜3)から、原告が卒業するまでの学納金は合計61万8700円となる。
  2万6900円×23か月
  キ 損益相殺後の金額 19万8570円
  81万7270円(前記オ)−61万8700円(前記カ)
  (3) 柔道着代 2万5000円(請求額15万8640円)
  証拠(甲4の2、26の1〜26の4、40)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、平成22年4月にB高校へ入学して柔道部へ入部するに際し、B高校卒業まで使用するために、「B」という刺繍入りの柔道着5着(販売価格合計15万8640円)を購入したが、本件不法行為を契機に、平成23年2月に寮を飛び出して柔道も止め、その後B高校から転校したことが認められる。以上によれば、前記柔道着は、本来3年間使用される予定であったところ、本件不法行為によって、寮を飛び出すまでの約11か月しか使用されなかったから、その購入価格のうち少なくとも2万5000円は、本件不法行為と相当因果関係ある損害というべきである。
  (4) 学納金等 0円(請求額7万4600円)
  原告は、寮を飛び出してから転校までの学納金をDに支払う義務がなかったにもかかわらず支払うなどした平成23年3月分及び4月分の学納金並びに未返還の修学旅行積立金合計7万4600円が本件不法行為と相当因果関係がある損害であると主張する。
  しかしながら、原告が寮を飛び出してから転校までの前記学納金等をDに支払う義務がないのは、その間にDが原告に対して安全配慮義務を含む在学契約上の債務を履行しなかった場合と解されるところ、被告は、本件不法行為の時点で、その後Dが原告に対して前記義務を履行しないことを予見できなかったというべきである。そうすると、原告が主張する学納金等は、本件不法行為と相当因果関係ある損害であるとは認められない。
  (5) Dによる弁済
  前提事実(8)のとおり、原告とDは、被告の不法行為を防げなかったこと等を理由とする安全配慮義務違反又は使用者責任に基づく別訴について、平成28年3月18日、Dが原告に対し慰謝料として110万円の支払義務があることを認め、これを同年4月18日限り支払うこと、原告がDに対してのみ、その余の請求を放棄すること、原告とDが両者の間にはこの和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認することなどを内容とする和解をし、Dは、同月11日、原告に対し、110万円を支払った。
  以上によれば、被告に対する不法行為に基づく債務とDに対する安全配慮義務違反又は使用者責任に基づく債務は不真正連帯債務であり、Dによる慰謝料名目での110万円の弁済は、被告に対しても効力が及ぶというべきである。そして、原告とDとの間では、前記110万円が原告の慰謝料の元本に充当される旨の合意がされたと解されるから、Dの前記支払により、原告の慰謝料の元本が110万円弁済されたと認められる。これに反する原告及び被告の各主張は採用できない。
  そうすると、慰謝料の残額は90万円となる。
  200万円−110万円
  (6) 小計112万3570円
  90万円(慰謝料の残額)+19万8570円(転校に伴う諸費用)+2万5000円(柔道着代)
  (7) 弁護士費用 11万円(請求額:30万円)
  本件事案の難易度、認容された額その他諸般の事情を総合考慮すると、本件における弁護士費用は11万円が相当である。
  (8) 合計
  ア 残元本 123万3570円
  Dによる弁済の充当(前記(5))後の損害金残元本は、123万3570円となる。
  112万3570円(前記(6))+11万円(弁護士費用)
  イ 平成28年4月11日までの確定遅延損害金
  (ア) 損害額元本 233万3570円
  200万円(慰謝料)+19万8570円(転校に伴う諸費用)+2万5000円(柔道着代)+11万円(弁護士費用)
  (イ) 平成23年2月21日から平成28年4月11日までの確定遅延損害金 59万9650円
  233万3570円×5パーセント×(5年(平成23年2月21日から平成28年2月20日まで)+51日(同月21日から同年4月11日まで)÷366日)(ただし、小数点以下切り捨て)
  ウ 合計 183万3220円
  123万3570円(残元本)+59万9650円(確定遅延損害金)
第4 結論
  以上によれば、原告の請求は、被告に対し、183万3220円及び内金123万3570円に対する平成28年4月12日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 五十嵐常之 裁判官 濱谷由紀 裁判官 三木裕之)

教え子にわいせつ 180万円の賠償命令 元弥富高柔道部監督
2016.11.08 中日新聞社
 愛知県の私立弥富高(現・愛知黎明高)の女子柔道部に所属した元生徒がわいせつな行為をされたとして、監督だった四十代の元教諭に三百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、奈良地裁葛城支部は七日、約百八十万円の支払いを命じた。

 元教諭は「テーピングをするために承諾を得て服を脱がせた」とわいせつ目的を否定したが、五十嵐常之裁判長は判決理由で「元生徒の供述は非常に具体的かつ迫真的で信用できる」と指摘し、わいせつ行為を認めた。

 判決によると、二〇一〇年十一月〜十二月ごろ、腰の痛みを訴える元生徒を寮の部屋に呼び出し、服を脱がせて体を触った。

 元教諭はこの元生徒ら二人に対する強制わいせつ罪で有罪判決が確定している。