採用されてるから、量刑理由で触れられているわけですよ。
紙切れだけだと裁判所の評価としては、そうなることが多いと思います。
こういうことは時々あって、「経緯の不自然さ」は、弁護人の説明不足を疑います。
同種事件の量刑理由で評価されるのは、
縁を切って2度と接触しない
18歳までの養育費を託する
とか尽くした上での、被害児童らの嘆願書です。
http://mainichi.jp/articles/20161201/k00/00e/040/152000c
「提出自体が不自然」
性暴力被害者からこうした嘆願書が提出されるのは極めて異例。29日に言い渡された判決などによると、40代の男は2008年、離婚していた妻と当時小学生だった娘と同居を再開。直後から性的虐待が始まった。娘は中絶手術も受けている。男は「しつけから始まった愛情表現で、性的欲求を満たすつもりはなかった」と釈明していた。しかし、判決は「身勝手で不合理な弁解だ。反省の態度はうかがえない」と退けた。
弁護側は公判で「娘に被害感情はない」として、執行猶予判決を求めていた。母親と娘がそれぞれ署名した嘆願書2通を情状証拠として提出。文面はパソコンで作成されていた。嘆願書は母親と娘が話し合って作成したとみられる。
これに対し、荒金裁判官は「健全な父子関係を構築できず、性道徳を持てないまま現在に至っているのは明らか。被害女児の健全な育成に与えた影響は甚大だ」と指摘。その上で、「特段の措置が講じられたわけではないのに、このような嘆願書が提出されること自体が不自然」とし、嘆願書による情状酌量を認めなかった。
捜査関係者によると、娘は「違和感はあったが父親の怒りを買うのが怖くて言い出せなかった」と警察に供述。母親は「うすうす(虐待に)気付いていたが、聞かなかった」と話している。
弁護人は嘆願書について、「被告と被害児童の双方の不利益にならないと考え、証拠を提出した。作成の経緯は守秘義務があり答えられない」と取材に話した。
専門家によると、幼少期から性的虐待が続くと、被害をしっかり認識できないことが多いという。虐待だったと将来認識した時点で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症することがあるとされている。
事件は娘が知人に打ち明けたことで発覚し、警察が今夏に同法違反容疑で男を逮捕した。娘は児童相談所に一時保護されたが、現在は自宅に戻って母親らと暮らしている。
日本子ども虐待防止学会事務局長・山本恒雄さん
家庭という閉ざされた空間で起きる性的虐待は、家族関係の崩壊を恐れた子どもに被害を隠そうとする心理が働く。幼少期から虐待を受けた場合、子どもは被害感情を持てないことが多い。違和感に気づいた子どもを「悪い子だ」として、自分の共犯者に仕立てる親すらいる。すると、子どもは自分にも落ち度があると言い聞かせるようになる。虐待が発覚することで両親との関係が悪化しないよう、被害をさらに隠そうとする子どももいる。
虐待を受けた子どもは、自尊感情や主体性を持てなくなる傾向がある。性的虐待の場合は特に、被害を認識できるのが何年も後になることが多い。大人になってから当時の記憶が突然よみがえり、深刻なトラウマ症状やうつ、不眠といった心身の不調に見舞われたり、自殺に至るケースもある。
周囲が被害に気づいたら、児童相談所や警察に相談するなど、早期に手をさしのべることが重要だ。専門的な支援を受けながら、自分の身に起きたことを理解して気持ちを整理していくことが、回復と再被害の防止につながる。
量刑としては全部実刑でして、こんなところで、注目される事案でもありません。
nhkにも出ていますが、嘆願書が有利に評価された裁判例もあります
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20161201/4879441.html
性的虐待 娘の嘆願書認めず
12月01日 18時00分
性的虐待 娘の嘆願書認めず
10代の実の娘に、性的虐待をした罪に問われた父親の裁判で、父親の刑を軽くするよう求めて、娘が書いたとする嘆願書を弁護側が提出したのに対し、大阪地方裁判所は、嘆願書を情状酌量の根拠にせず、実刑判決を言い渡しました。
虐待問題に詳しい弁護士は、「娘は、虐待だと認識できないまま嘆願書を書いた可能性が高く、裁判所の判断は適切だ」としています。
関係者によりますと、この父親は、ことし8月、10代の実の娘に性的虐待をしたとして、児童福祉法違反の罪に問われ、大阪地方裁判所で審理が行われていました。
弁護側は、「娘は、父親の刑が軽くなることを望んでいる」として、娘が書いたとする嘆願書を裁判所に提出し、情状酌量を求めました。
しかし、大阪地方裁判所は、11月29日、嘆願書を情状酌量の根拠にせず、父親に懲役4年の実刑判決を言い渡しました。
今回の嘆願書と裁判所の対応について、子どもへの虐待や性犯罪を防ごうと活動しているNPOの代表の後藤啓二弁護士は、「子どもが、親から性的虐待を受けて育つと、被害を受けたという認識を持つことができないことがあり、今回の娘も、虐待だと認識できないまま、嘆願書を書いた可能性が高い。そのような嘆願書を裁判所に提出するのは、子どもの心理を正しく理解していない行為で、情状酌量を認めなかった裁判所の判断は適切だ」と話しています。