児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

子どもの性被害に対する法規制のあり方及び加害者の再犯防止策の充実に関する要書望(長野県 H28.11)

 長野県の条例では手段が限定されているので大阪・山口同様に検挙実績はなかなか上がらないと思います。しかしそこを目指してそういう条例を作ったそばから「みだらな性行為」を処罰する国法を作ってくれというのでは、条例の趣旨を否定することになって条例に関与した人らにも失礼ですね。
 実際のところ、長野県が空白だったので、とりあえずの条項で空白を埋めていて、次は国法で規制しようという動きの一環だと思います。

 青少年条例違反(淫行)というのは、不完全ながらも青少年の同意がある性行為だし、保護法益も違うので、強姦罪と全く同視するのはおかしいですよね。

青少年の条例 法制化の要望は疑問だ
http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20161118/KT161117ETI090003000.php
 18歳未満との性行為などを処罰する規定がある県条例が今月、全面施行されたのを受け、阿部守一知事が全国一律の法規制を国に要望した。

 これまで住民運動などで青少年の健全育成を進めてきた長野県が条例を制定したことで、全都道府県に条例がそろった。

 だが、処罰対象や罰則の重さには違いがある。だから国が統一して法制化してほしい―。

 知事が内閣府を訪れて提出した要望書は、そんな趣旨だ。

 県条例の罰則規定は、恋愛の自由を制限し、冤罪(えんざい)を生む恐れがあるとの反対意見があった。これに対し知事は他県の規制に比べ「相当程度、対象行為が限定化、明確化されている」と、県条例の独自性を強調して理解を求めてきた。

 全国一律の法規制を求めることは、その主張と矛盾するのではないか。法制化は広範な規制につながりかねない。

 条例で処罰対象になる行為について40都道県が「淫行」または「淫(みだ)らな性行為」と表現している。長野県は、この表現は不明確だとして採用しなかった。代わりに「威迫、欺き、困惑」による性行為などとした。

 それでも県弁護士会などは「真摯(しんし)な恋愛でも見方によってはこれらの行為が伴いうる」と、処罰規定の削除を求めていた。

 この規定の罰則は「2年以下の懲役または100万円の罰金」だ。地方自治法が条例に許す罰則の上限を採用した。全国では9県がこれより軽い罰則にしている。

 条例制定過程で知事がほかに強調したのは、「有害図書」規制などを含めた「包括的、網羅的な規制条例ではない」という点だ。条例には深夜外出の制限が含まれるものの、「有害図書」の販売制限、罰則がある46都道府県の条例と一線を画している。

 国への要望書も「子どもに不当な手段を用いて行う性行為等を法制化して規制」することを求めてはいる。だが、仮に全国の条例を基に法制化するとなったら、そうは行かないのではないか。「淫行」や「包括的」が圧倒的な多数派の現状で、「限定的」な法ができるとは考えにくい。

 2000年以降、自民党などは包括的な「青少年有害社会環境対策基本法案」や「青少年健全育成基本法案」を作ったが、いずれも成立しなかった。「表現の自由を侵す」との強い反対があったからだ。多くの問題をはらむ法制化の動きに再び火を付けるようなことは控えるべきだ。

(11月18日)

内閣府特命担当大臣
少子化対策男女共同参画)宛て
子どもの性被害に対する法規制のあり方及び加害者の再犯防止策の充実に関する要書望(長野県 H28.11)

子どもの性被害に対する法規制のあり方及び加害者の再犯防止策の充実について本県は、これまで全国の都道府県の中で唯一、いわゆる青少年保護育成条例を持たず、住民運動、事業者の自主規制、行政の啓発により、地域ぐるみで青少年の健全育成に取り組んできました。
しかし、近年、大人のモラルの低下やインターネット、携帯電話等の発展・普及など、子どもを取り巻く社会環境の大きな変化などにより、子どもの性被害に対する県民の懸念の声が高まる中で、本県では平成 25年 5月から検討を開始し、教育、医療、法律の専門家や子どもの相談支援に関わる方のほか、若者や一般県民など幅広い県民の御意見を伺いながら、様々な取組を進めてきました。
そうした検討を経て、本県では人権教育、性教育、情報モラル教育などの性被害予防のための教育から、県民運動の推進、被害者支援などの様々な施策のほか、「威迫」、「欺き」、「困惑」による性行為等への規制を盛り込んだ、子どもを性被害から守るために目的を特化した全国初の条例である「長野県子どもを性被害から守るための条例」を本年 7月に制定しました。
多くの都道府県では、いわゆる青少年保護育成条例を定め、 18歳未満の者に対する「淫行」等を罰則をもって禁止していますが、本県をはじめとする一部の府県では「威迫、欺き、困惑」させて行う行為などに限定して規制を行っています。
なお、条例で科せる罰則は、地方自治法第 14条第 3項の規定で上限が定められていますが、子どもへの性行為等に対する罰則はこの上限としている都道府県が多いものの、一部の県では罰則を軽くしているところもあります。
子どもに不当な手段を用いで性行為等を行うことは、国内どこにおいても許されるものではなく、子どもを性被害から守ることは国民全てが願うものであり、また、こうした行為に罰則を科すにあたっては、本来、他の刑罰法令等の罰則との均衡も比較考慮されるべきものと考えます。
また、一般刑法犯の成人検挙人員の前科の有無別構成比をみると、有前科者に占める割合は、一般刑法犯全体に比べ強姦犯の割合が高く、性犯罪者の再犯傾向は高いと考えられ、性被害者を増やさないようにするためにも実効性ある再犯防止対策をとることが求められます。
性犯罪は、「魂の殺人」とも言われます。性被害にあった子どもは、心身ともに傷つくのみならず、長期間にわたり、時には大人になっても心的外傷後ストレス障害等に苦しめられることもあります。
つきましては、下記のとおり子どもの性被害に対する法規制及び加害者の再犯防止策について、所要の措置を講じられるよう要望します。

1 子どもに不当な手段を用いて行う性行為等を法制化して規制していただきたい。
2 再犯防止につながる矯正や更生保護のための教育や治療等を充実して,いただきたい。
平成 28年 11月
長野県知事