韓国には「反意思不罰罪」というのがあるそうです。
http://www.npa.go.jp/keidai/keidai.files/seihanzaiforum.pdf
平成20 年9 月10 日開催 警察政策フォーラム
「これからの性犯罪対策」
パネルディスカッション
[反意思不罰罪と親告罪]
田中 望月先生に伺いたい。裁判員裁判の対象となるような性犯罪もこれからあるわけだが、被害者に対して何か影響はあるか。
望月 影響は確実にあると思う。私たち支援をする者は、「性犯罪は犯罪であって、被害者は悪くない」という視点に立って様々な対応を進めていくことができます。しかし当事者は、どうしても自責感が強かったり、羞恥心があったり、あるいは自分が社会に出て行って不都合が生じることに非常に恐怖を感じる方が多いので、裁判に取組むかどうかは大きな決断になる。
裁判員制度が導入された場合、例えば証人に立たなければいけないというような場面では、より多くの人たちに自分の被害や自分自身をさらすことになる。そういうことをしっかり理解した上で、支援の中で説明し、後悔のない選択をしてもらえるようにすることが支援者としての課題であると思う。被害者にどう理解してもらうかということが、まず大きな課題としてある。
田中 その点に関連して、李先生から「反意思不罰罪」の話があったが、この導入による効果はあるのか、あるいは子ども対象の性犯罪以外にも拡大する予定はあるのか。
李 日本の場合は、反意思不罰罪はなく、親告罪があるが、韓国には親告罪も、反意思不罰罪もある。
両者の差は、親告罪の場合、被害者からの告訴がなければ公訴できない。もし告訴がない場合、検察官が公訴しても公訴棄却になる。韓国でも同様である。
反意思不罰罪は、言葉からも分かるように、被害者から処罰しないような意思表明や不処罰の意思表明があった場合に、公訴できないというものである。要件が足りないことになる。しかし、そのような意思表明がなければ、例えば告訴がなくても公訴は可能である。公訴提起のためには、親告罪なら必ず告訴が必要だが、反意思不罰罪では、告訴はなくとも捜査は可能である。
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もともと親告罪とは何かという根本的な議論がある。器物損壊だとか、犯罪の軽微性で親告罪になっているもののあるし、被害者の名誉を守るための名誉棄損などもあるが、性犯罪の場合、被害者の意思に反して訴追した場合には、公判でかえって被害者が傷つくことを予防するための制度になっている。これも、将来、被害者の刑事手続上での保護、2次被害の保護が徹底されるようになった場合に、親告罪を残していくのかどうかという議論は出てくると思う。既に議論は行なわれているし、いろいろな主張も出ているが、少なくとも現時点ではまだ被害者支援の保護が徹底されていない。
ビデオリンクや付き添いなど様々あるが、そういったものがきちんと整って、被害者が告訴をしても2 次被害が起きることなく、安心できるようになれば、その段階で、果たして名誉保護を目的として性犯罪が親告罪になっている理由が残るのであろうかという意識も、私にはある。このあたりについては、親告罪の制度を持っている韓国や台湾の動きも見ながら共に議論していくと有効な議論ができるのではないかと思っている。
田中 韓国は日本の法制度と非常によく似たというか、同一の法制度から出発したが、最近は日本の法制度を改善したというか、英米系の法制度の導入に積極的であるということで、むしろ日本が学ぶべき点が非常に多いのではないかと思う。