児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士と自首

 被疑者が自首のつもりで出頭しても法律上の「自首」にならなかったという判例はたくさんあります。自首減軽の趣旨に即した内容が伴わないから。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009072700819
27日午後0時50分ごろ、和歌山市栗栖の県警和歌山東署に、男が知人男性と弁護士に付き添われ「息子を殺した」と自首してきた

 これだけのことでも、公判で自首の成否が争われることは無くなるのです。




東京高等裁判所平成18年4月6日
2 以上の事実関係に照らすと,被告人は,当初は丙下の供述に基づき,夏野が逮捕されてからは同人の供述をも得て,被告人が本件けん銃等を隠匿所持しているとの嫌疑を深めた捜査官から,一度ならず追及され,同年4月4日に本件けん銃等の所持を自認する上申書を作成するに至ったことが認められるのであって,原判決(17頁)が説示するとおり,被告人が捜査機関に対して,原判示第7の本件けん銃及び実包所持の犯罪事実を自発的に申告したということはできない。所論は,組長である被告人には,自ら本件けん銃等を警察に提出して捜査に協力するとすれば上部組織から厳しい制裁を受けるなどの組織上の規律から生じる反対動機があったにもかかわらず,これを押し切って4月4日に捜査機関に対し本件けん銃等の所持の事実を申告したのであるから,犯罪事実の申告に強い自発性が看取される,というのであるが,上記1の(8)でみたとおり,被告人は,本件けん銃等を配下の夏野を通じて提出させる形をとって,所論がいう組織上の規律との抵触を避けようとしたのであるから,被告人が反対動機を押し切って自発的に犯罪事実を申告したといえないことは明らかである。 加えて,銃砲刀剣類所持等取締法31条の5及び10が規定する自首減軽は,けん銃や実包の提出を促してその早期回収を図り,当該けん銃等の使用による危険の発生を極力防止しようという政策的な考慮に基づくものであるところ,被告人は,当時,妻に指示を与えて本件けん銃等の保管場所を転々とさせながら,他方で,自ら本件けん銃等を捜査機関に対し提出することには躊躇があって,被告人が自己の責任において本件けん銃等を提出する旨の上申書を作成したものの,本件けん銃等の保管場所を変更するよう改めて指示したことや,この変更に当時の妻や系列の組の準構成員を関わらせたことなどを捜査官に明かすことはせず,身柄を拘束された配下の組員から保管場所を聞いて欲しい,と言ったにとどまっているのであって,その後,現に,被告人及び同組員各作成の上申書等の情報を基に実施された捜索でも本件けん銃等の発見には至らず,捜査官が改めて被告人の妻を呼びだして事情を聴取し,同女が捜査に協力したことから,被告人が上記上申書を作成してから1週間以上経ってやっと本件けん銃等が警察に提出されるに至った,という経過をたどったことにも照らすと,被告人がけん銃及び実包を提出して自首したということもできないというべきである。 3 原判示第7の1のけん銃の加重所持及び実包の所持の各犯行について銃砲刀剣類所持等取締法上の自首が成立しないと判示した原判決には事実の誤認も法令の解釈適用の誤りも認められない。

東京高等裁判所平成18年2月28日
 原判示第3の事実の当日である平成17年7月4日午前11時ころ,被害児童の母親が,前夜から宿泊した被告人が被害児童と性的交渉を持ったのではないかと不審を抱き,被告人を電話で問い詰めたが,被告人はこれを否定した。しかし,母親は被害児童の部屋に精液の臭いのするティッシュペーパーがあったので,同日午後4時ころ学校から帰った被害児童に聞き,同日のほか,小学5年生の夏ころ(原判示第1の事実)及び小学6年生の冬ころ(同第2の事実)の合計3回,被告人が被害児童と性的交渉を持った事実を把握した。そこで,母親は,すぐに被告人に電話を掛けて追求し,被告人は「何もしていない」と否定したものの,母親は,引き続き父親(夫)にも事実を告げて相談した上,被告人に電話で翌朝10時半に来るように伝えたところ,被告人はようやく犯行を認めた。翌5日午前10時30分ころ,被告人は被害児童宅を訪れ,被害児童の両親らの面前で,本件各犯行の概略を認め,謝罪の意を表し,刑事責任及び民事責任を認める趣旨を記載した上申書を作成し,これを両親に交付した。そして,同月7日午前10時20分ころ,被害児童とその両親が神奈川県大和警察署に赴いて本件各犯行の被害とその犯人が被告人であることを告げ,被告人は同日午前11時ころ,従姉妹に付き添われて同県戸部警察署に出頭して本件各犯行を自白した。 ところで,原判決も,上記のような本件各犯行の発覚経緯を被告人のために酌むべき事情として相応に考慮していることは,判文上も明白であって,親告罪である原判示第1及び同第2の各強姦罪についての首服の成否は,もっぱら法解釈の如何により決せられることになる。そして,上記各罪につき仮に首服が成立するとしても,被告人に対しては,本件各犯行の犯情にかんがみると,法律上の減軽をしない場合の処断刑の下限である懲役2年に満たない刑が相当とは到底考えられないので(後記第2参照),首服による減軽をすべきものとは認められない。してみると,所論のいう首服の点は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の問題とはいえない。 論旨は理由がない。 以下,念のため,原判決の法解釈の当否を検討すると,刑法42条2項の法文には記載されていないが,首服の成立のためには,同条1項の自首の場合と同様に,犯罪事実及びその犯人が「捜査機関に発覚する前に」なされる必要があることについては異論が存しない。これに加えて,犯罪事実及びその犯人が「告訴権者に発覚する前に」なされることをも必要とするか否かについては,見解が分かれている。思うに,親告罪ではない一般の犯罪(非親告罪)についても,犯人が被害者等の告訴権者に対し,自己の犯罪事実を告知し,その措置にゆだねることは,告訴権者から捜査機関に直ちにその事実が通報されるであろうから,捜査を容易ならしめるものといえるのであるが,首服は親告罪に限って認められていることにかんがみると,法が首服による裁量的減軽を認めた趣旨は,親告罪の捜査及び処罰において告訴は極めて重要な意義を有するから(親告罪については,告訴は訴訟条件である上,告訴がなくても捜査は可能であるとはいえ,その捜査は当該犯罪を親告罪とした趣旨を損なうようなものであってはならないという重大な制約を受ける。),告訴権者による告訴を容易ならしめ,親告罪の捜査及び処罰を容易ならしめることにあると解するのが相当である。そうすると,告訴権者にとっては,犯罪事実及びその犯人が発覚してさえいれば,犯人の処罰を求めるかどうかの態度を決することは十分可能になっているということができるから,首服が成立するためには,犯罪事実及びその犯人が告訴権者に発覚する前になされることが必要と解される。なお,告訴権者に犯罪事実及びその犯人が発覚した後であっても,犯人が告訴権者に犯罪事実の告知等をすることは,告訴するか否かの判断を一層容易ならしめるものといえなくはないが,捜査機関に犯罪事実及びその犯人が発覚した後であっても,犯人が自発的に警察署に出頭し,犯罪事実を自白することは,それ相応に捜査を容易ならしめるものといえるのに,自首は成立しないと解されているのであるから,これとパラレルに,やはり首服は成立しないと解するのが相当である(旧刑法87条についての大判明治38年6月13日法律新聞286号11頁参照)。したがって,原判決の法解釈に誤りはなく,原判示第1及び同第2の各強姦罪につき首服は成立しないとの原判断は正当である(なお,首服についても,自首の場合と同様に,犯罪事実の告知等に「自発性」も必要と解されるが,本件における前記のような事実関係からすると,被告人は告訴権者から重ねて厳しい追及を受けてようやく告知等をするに至っているので,自発性を欠くという点からも,首服が成立しないと解する余地もある。もっとも,首服の場合には,相手方になるのが,捜査官ではなく,一般私人であることをも,十分考慮すべきであろう。)。

東京高等裁判所平成17年3月31日
ところで、自首が成立するためには、自発的に犯罪事実を申告することが必要である。捜査機関の取調べに対し犯行を認める供述をするのは自首でないし、自己の刑責を軽減するために犯罪事実の重要な部分を殊更隠したり、虚偽の事実を申告するのを自首ということはできない。 原判決は、被告人の緊急逮捕手続書には、被疑事実として「金の無心に来たところ、これを断られたことから」暴行を加えて傷害を与えた旨が記載されており、その後の弁解録取の際には、前記緊急逮捕手続書の被疑事実を告げられて、「私は、自分の母親に対しその部屋内で顔面を殴り、ベッドに頭を押し付けるなどの行為をしたことは間違いない。」と答えており、前記の「金の無心に来たところ、これを断られたことから」暴行を加えたことについて、特にこれを否定していない、また、実母である被害者からたびたび金をむしり取っていた被告人にとっては、無理を言って母親から小遣いをもらうという意識が強く、それが強盗に当たるなどとはおよそ考えていなかったと思われ、自首調書において暴行の目的が明示されていなかったとしても、被告人が自己の刑責を軽減するために殊更に虚偽の事実を申告したとまでは認められないというべきである。被告人が富士見橋交番に赴いてから逮捕後自首調書が作成されるまでの一連の被告人の申述内容を実質的かつ全体的に見ると、暴行の目的が金員の入手にあったという強盗致死罪の犯行の重要部分についても申告があったと見るのが相当である、としている。 しかしながら、前記認定の事実関係を実質的かつ全体的に見てみても、被告人が、富士見橋交番に赴いてから自首調書が作成されるまでの間に、暴行の目的が金員の入手にあったという点で認める申告をしていないと判断することができる。そうであるからこそ、前日の夜中に被害者宅前で被告人と対応し、被告人が被害者に金をせびりに来ているなどそれまでの状況をある程度分かっていたG警察官においても、被告人を傷害罪の犯人として緊急逮捕し、続いてI警察官も傷害事件としての被告人の自首調書を作成していると認められるのである。そればかりか、前記認定の事実関係のうち、被告人が、J警察官から、自首調書作成の後取調べを受け追求された際にも、奪い取っていた現金約五万六〇〇〇円について、自分の物であると言い張っていたという事実を併せ考慮すれば、それまでの時点においては、本件が金員を奪うための犯行であるということを被告人が殊更隠そうとしていたことをも物語っているといえるのである(なお、原判決は、被告人がたびたび被害者から金をむしり取っていたので、無理を言って被害者から小遣いをもらうという意識が強く、本件が強盗に当たるなどとは考えていなかったと思われる、というが、被告人がいかなる罪名が成立すると考えたかはともかく、前記のとおり、金員を奪うために暴行を加えたことを明らかに隠していたと認められ、原判決の判断は誤りというほかない。)。また、被告人は、自首調書の作成を終えた段階までの時点においては、前記認定のとおり、帯を使って被害者の首を絞め、後ろ手に両手首を縛った事実についても、供述していなかったのである。これらの暴行、特に首を絞めたことは被害者の死因にも関係する重要な暴行であるが、これらについても、被告人が殊更に隠そうとしていたことも明らかである。金員強取の目的及び前記暴行について隠していたのは、被告人が自己の刑責を軽減させようと意図してしたものと考えざるを得ない。被告人は、J警察官から、傷害事件の取調べを受け、前記認定の矛盾点を突かれ、初めて金員強取の目的等、すべての事実を供述するに至ったのである。被告人が本件について自首をしたとは認められない。

名古屋高等裁判所平成17年2月3日
 そこでまず,自首減軽の当否を検討するに,刑法が自首を刑の減軽事由としているのは,犯人が自首することで犯罪の捜査及び犯人の処罰が容易となり,国の刑事訴訟手続に要する労力や費用が省かれるとともに,無実の者の処罰の危険を避け,ひいては市民に安心を与えるという刑事政策的要請に基づくものと解される。 ところで,関係証拠によれば,被告人は,平成4年9月14日に本件犯行に及び,それから10年8か月余り後の平成15年6月6日ころに自首したこと,本件犯行後から自首するまでの間,被告人は,平成9年には窃盗罪で,平成11年と平成13年には覚せい剤取締法違反罪で,平成15年5月には窃盗未遂罪で,それぞれ懲役刑を言い渡されているが,それら各事件の取調べ過程において,本件犯行に関して申告等した形跡は,全証拠を精査しても全くうかがえないこと,事件後,被害者の夫は,本件事件の犯人ではないかと疑われて取調べを受け,2度にわたリポリグラフ検査を受けたり,親類や近所の者らからも白い目で見られるなど,長期間にわたっていわれなき屈辱や苦痛を味わってきたことなどが認められる。これらの事情にかんがみると,犯行から10年8か月余りもの長期間を経た後にされた本件の自首は,自首を減軽事由のひとつとした刑事政策的要請の実現に資するところは極めて乏しいというほかはない。 そうすると,本件では,被告人の自首それ自体は認められるが,自首減軽すべき実質的な事由がなく,その自首に基づいて刑を減軽するのが相当であるとは到底認められない

東京高等裁判所平成12年2月24日
 そうすると なるほど、被告人が覚せい剤乙を所持していたことは、被告人が捜査官に自ら申し出たことによって明らかになったものではあるが、前記(一)のとおり、被告人は、本件麻雀店において、覚せい剤甲、乙を共に身辺に所持していたもので、右覚せい剤甲と乙については一個の所持があったと評価され、単純一罪を構成するから、被告人がその一部である覚せい剤乙について自ら犯罪を申告したからといって、自首が成立することにはならない。したがって、所論はその前提を欠く

東京高等裁判所平成7年2月22日
右の事実によれば,被告人が原判示第2の2のけん銃と実包を所持していることは,まだ捜査機関に発覚していなかったものの,捜索の実施によって,右けん銃が発見されることは必至の状況にあり,その状況下で,被告人は,被告人がけん銃を所持しているかも知れないと考えた捜査官から,けん銃を所持しているのであれば出すようにと促されるとともに,いずれ発見されることは間違いないと観念した結果,やむなく右けん銃を提出することを決意し,その所在を明らかにしたのであるから,被告人は,自ら進んでけん銃の所持という自己の犯罪事実を申告したものとは認められず,そうすると,被告人の行為は銃砲刀剣類所持等取締法31条の4ないし刑法42条1項の自首のいずれにも当たらないというべきである。所論指摘の最高裁判例は,事案を異にし,本件に適切でない。