http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081113112013.pdf
事件番号 平成19(あ)1961
事件名 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件
裁判年月日 平成20年11月10日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁原審裁判所名 札幌高等裁判所
原審事件番号 平成19(う)73
原審裁判年月日 平成19年09月25日判示事項
裁判要旨 ショッピングセンターにおいて女性客の後ろを付けねらい,デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を撮影した行為が,被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるような卑わいな言動に当たるとされた事例
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20070310#1173500238
で検討した事件です。札幌高裁判決は、判決速報に出てましたよね。あっさりした理由で破棄有罪。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081113-00000533-san-soci
同小法廷は条例の中にある「卑猥な言動」という言葉を「社会通念上、性的道義的観念に反する下品でみだらな言語または動作」と初めて定義。その上で「ズボンの上からの撮影も、下品でみだらな動作であることは明らか。撮影されたことを知った被害者を羞恥(しゆうち)させ、不安を覚えさせる」と指摘した。5人の裁判官のうち、田原睦夫裁判官は反対意見を述べた。田原裁判官は、ズボンをはいた臀部はだれでも見られるとの前提で、臀部を見る行為について、(1)性的興味から見る(2)ラインの美しさを愛でる(3)スポーツ選手の鍛えられた筋肉に見とれる−などと分類。その動機は客観的には認定できないなどとして、見る行為自体に卑猥性はないとした。
撮影についても「一眼レフカメラで近接して撮影するような場合は『卑猥性』が肯定されることもある」としたが、カメラ付き携帯電話の場合は、撮影していることが分かりにくく、撮影行為自体に卑猥性は認められないとした。
社会的法益っぽい定義ですね。
追記
無罪という解釈もできるんですが、田原裁判官の理由付けは、は要するに、「初めからみえているものを視るのも撮るのも一緒じゃん」というのですが、公然わいせつ罪とわいせつ物販売頒布罪の法定刑の差でわかるように、物に化体すると、永遠の流通するので、被害が継続するのです。特にネット時代は。軽い被害でも長く続くと、延べの被害(被害の強弱×被害の期間)は大きくなります。そこまで考えてないようです。
裁判官田原睦夫の反対意見は,次のとおりである。
4「写真を撮る」行為と「視る」行為との関係について
人が対象物を「視る」場合,その対象物の残像は記憶として刻まれ,記憶の中で復元することができる。他方,写真に撮影した場合には,その画像を繰り返し見ることができる。しかし,対象物を「視る」行為それ自体に「卑わい」性が認められないときに,それを「写真に撮影」する行為が「卑わい」性を帯びるとは考えられない。その行為の「卑わい」性の有無という視点からは,その間に質的な差は認められないものというべきである。
本条1項2号は,上記のとおり「のぞき見」する行為と撮影することを同列に評価して規定するのであって,本件条例の規定振りからも,本条1項は「視る」行為と「撮影」する行為の間に質的な差異を認めていないことが窺えるのである。なお,本条1項3号は,本来目視することができないものを特殊な撮影方法をもって撮影することを規制するものであって,本件行為の評価において参照すべきものではない。もっとも,写真の撮影行為であっても,一眼レフカメラでもって,「臀部」に近接して撮影するような場合には,「卑わい」性が肯定されることもあり得るといえるが,それは,撮影行為それ自体が「卑わい」なのではなく,撮影行為の態様が「卑わい」性を帯びると評価されるにすぎない。