児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「検査を口実にして,その背後から同人の着衣をまくり上げ,その胸を直接手で触り,同人を振り向かせた上,その口を開けさせて,自己の顔を近づけて唾液をその口の中に垂らして飲み込ませるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。」という強制わいせつ罪(176条後段)の事例(さいたま地裁h30.2.13)


 あまり見かけない類型です。こういうのは「わいせつの定義」「わいせつに該当するか」を争って下さい

裁判年月日 平成30年 2月13日 裁判所名 さいたま地裁 裁判区分 判決
事件名 住居侵入、強制わいせつ被告事件
文献番号 2018WLJPCA02136004
理由
 以下,〔 〕のアルファベットの記載は,被害者の氏名等の略称であり,対応する氏名等は,別紙「略称目録」記載のとおりである。
 【罪となるべき事実】
第1(平成29年8月18日付追起訴分)
 被告人は,帰宅途中の〔A〕(当時20歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年5月20日午前零時45分頃,埼玉県〈以下省略〉の同人方に,被告人の言動を不審に思って中に逃げ込むために同人が開けた玄関扉から同人に追随して侵入し,その頃から同日午前1時頃までの間,同人方玄関内において,同人に対し,いきなり背後から抱き付き,その頬に接吻した上,首筋をなめ,さらに,同人のブラジャーの中に手を差し入れてその胸を直接触り,同人のパンツの中に手を差し入れてそのでん部を直接触り,もって強いてわいせつな行為をした。
第2(平成29年6月30日付追起訴分)
 被告人は,帰宅途中の〔B〕(当時15歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年1月8日午前11時35分頃,埼玉県〈以下省略〉所在の〔C〕方に,前記目的を秘し訪問客を装い〔B〕に開けさせた玄関扉から,〔B〕に「検査をする。」と言って侵入し,その頃,同所の玄関内において,〔B〕に対し,背後からいきなりその両胸を着衣の上から両手で触り,同人が「やめてください。」と言って抵抗するや,その首元を指先で押し,「死にたくなければ声を出さないで。」などと言う暴行脅迫を加え,これに畏怖していったん抵抗をやめた同人に対し,背後からその両胸を着衣の上から両手で触り,もって強いてわいせつな行為をした。
第3(平成29年6月2日付追起訴分)
 被告人は,帰宅途中の〔D〕(当時11歳)を見かけ,同人が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,平成28年6月29日午後5時33分頃,埼玉県〈以下省略〉所在の周囲をブロック塀等で囲まれた〔E〕方敷地内に,前記目的を秘し〔D〕に「土地に入る許可をもらっている。」と嘘を言って南西側片開き戸を開けて侵入し,その頃,同敷地内において,「ここに何かあるよ。見てみ。」と言って〔D〕を道路から見えない位置に呼び寄せた上,同人の着衣をまくり上げ,その右胸を手で触り,同人のズボン及び下着を引っ張ってその股間をのぞき込み,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第4(平成29年4月28日付起訴分)
 被告人は,帰宅途中の〔F〕(当時11歳)を見かけ,同人が13歳未満であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,同人にわいせつな行為をする目的で,平成28年7月20日午後零時10分頃,埼玉県〈以下省略〉の〔G〕方に,前記目的を秘して〔F〕に「ひみつの話だから,おうちの中でしようね。」と言って開いていた玄関扉から侵入し,その頃から同日午後零時20分頃までの間,同所の玄関内において,検査を口実にして,〔F〕に対し,その背後から同人の着衣をまくり上げ,その胸を直接手で触り,同人を振り向かせた上,その口を開けさせて,自己の顔を近づけて唾液をその口の中に垂らして飲み込ませるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
 【法令の適用】
 罰条
 判示第1,第2の各事実
 各住居侵入の点 いずれも刑法130条前段
 各強制わいせつの点 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項,同法による改正前の刑法176条前段
 判示第3,第4の各事実
 各住居侵入の点 いずれも刑法130条前段
 各強制わいせつの点 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項,同法による改正前の刑法176条後段
 科刑上一罪の処理
 判示第1ないし第4につき,刑法54条1項後段,10条(各住居侵入と各強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,いずれも1罪(牽連犯)として重い各強制わいせつ罪の刑で処断)
 併合罪の処理
 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
 【量刑の理由】
 本件は,住居侵入・強制わいせつ4件の事案である。各犯行のわいせつ行為の程度は,強度のものでも,直接胸やでん部を触る,顔を近づけて口の中に唾液を垂らすなどというものであるから,特に悪質な部類とまではいえない。もっとも,決して軽視はできないものであって,各被害者も当然に大きな精神的衝撃を受けているし,その深刻さは,特に年少の被害者らについては,現時点の状況では図り切れないところがある。そして,各犯行の手口についてみると,13歳未満の者に対する犯行2件は,各被害者の未成熟さにつけこみ,年長の者であれば侵入をして近付いてくるのを阻止できたような不審な言動によって言いくるめたり困惑させたりして住居侵入及びわいせつ行為に成功している。また,15歳の者に対する犯行1件は,同様に被害者の未成熟さにつけこんで玄関に入り込んで近付いた上,いきなり胸に触られたため抵抗を始めた被害者を「死にたくなければ」などという強い表現を用いるなどして脅迫して抵抗を抑えてさらにわいせつ行為を続けている。さらに,20歳の者に対する犯行1件は,不審に感じて自宅に逃げ込もうとした被害者に追随して入り込んで背後から抱き付きわいせつ行為をしている。家屋内に侵入した3件でも玄関ドアを通って玄関まで入ったにとどまり,玄関扉を開けたのも被告人ではないことからすれば住居侵入の手口は悪いとまではいえないこと,被害者から玄関外に押し出されるなどすれば犯行をやめていることを考慮しても,犯行の手口は,わいせつ行為が同程度の住居侵入・強制わいせつのうちでも,良いとは評価できない。そして,被告人は,約1年2か月間の間に各犯行を敢行したところ,このような犯行を日常生活の中で帰宅途中や休日などに時間を見つけては行っていたというのであるから,相当常習性が高いといわざるを得ず,その分,非難は大きい。
 以上によれば,本件は,住居侵入・強制わいせつ4件の事案として比較的悪く,前科がないとしても,相応の実刑を科すことをまず検討すべきである。
 ここで,その他の情状についても検討すると,被告人は,起訴事実だけでなく余罪についても素直に認め,被害者らに対し,被害弁償はできていないながらも謝罪し又は謝罪を試みるとともに,原因はストレスに加えて自身の性癖にあるとして社会復帰後専門の病院を受診する旨述べるなど,反省している。両親も被告人を同居させて通院を援助するなど,被告人の更生に協力的である。これらは被告人のために考慮できるが,他に被告人を見捨てておらず,支えとなると考えられる者がいること,被告人が妻子を失うなど本件犯行の発覚により相応の不利益を被ったことなどその余の弁護人主張の事情を踏まえても,被告人には,3年以下の懲役刑を科すのが相当とはいえない(したがって,弁護人の求める一部執行猶予は検討する前提を欠く。)。他方で,本件はあくまで住居侵入・強制わいせつ4件の事案であり,犯情の程度は,先に検討したとおりであることからすれば,検察官の主張を踏まえても,主文の刑を科すのが相当であると判断した。
 (求刑:懲役6年,弁護人の科刑意見:一部執行猶予)
 さいたま地方裁判所第5刑事部
 (裁判官 石川慧子)

westlaw 調書判決の起訴状が省略されているので、どんな事件か判らない事例(さいたま地裁h30.2.9)

  強制わいせつ罪(176条後段)が2件あるようです

裁判年月日 平成30年 2月 9日 裁判所名 さいたま地裁 裁判区分 調書判決
事件番号 平29(わ)1340号 ・ 平29(わ)1565号
事件名 強制わいせつ
文献番号 2018WLJPCA02096002
主文
 判決主文
 被告人を懲役2年6月に処する。
 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
 罪となるべき事実の要旨
 起訴状及び追起訴状記載の各公訴事実と同一であるから,これらを引用する。
 適用した罰条
 平成29年法律第72号(刑法の一部を改正する法律)附則2条1項,同法による改正前の刑法176条前段,刑法176条前段,45条前段,47条本文,10条,25条1項
 量刑理由
 別紙記載のとおり
 (求刑 懲役2年6月)
 平成30年2月26日
 さいたま地方裁判所第2刑事部
 裁判所書記官 A
 (裁判官 新井紅亜礼)
 
 
 〈以下省略〉

自画撮り・自撮り・sexting要求行為の検挙事例(警視庁)

 第1号は都民対都民で、送っちゃっている事案(姿態をとらせて製造罪)に伴う、送ってない対償供与型の要求事案でした。「10回送らされちゃってて、11回目は未遂で止めました」という感じです。
 事前に止めるも何も、いかに安易に送ってしまうので、予想通り、姿態をとらせて製造罪が伴います。

東京都青少年の健全な育成に関する条例H29改正
http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html
(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第18条の7 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。
一青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰拉びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)第2条第3項に規定する児童ポルノ(以下単に「児童ポルノ」という。)又は同法第7条第2項に規定する電磁的記録その他の記録をいう。次号において同じ。)の提供を行うように求めること。
二青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。

第26条
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する
七第18条の7の規定に違反した者

第28条
第9条第1項、第10条第1項、第11条、第13条第1項、第13条の2第1項、第15条第1項若しくは第2項、第15条の2第1項若しくは第2項、第15条の3、第15条の4第2項又は第16条第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理山として、第24条の4、第25条又は第26条第1号、第2号若しくは第4号から第6号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

第30条
この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない。

「お金あげる」下着姿の画像要求容疑 都条例で初摘発
2018年5月28日11時43分
https://digital.asahi.com/articles/ASL5X3CQNL5XUTIL008.html
 17歳の少女に自らの下着姿の画像を送ることを要求したとして、警視庁は28日、東京都世田谷区の会社員の男(33)を都青少年健全育成条例違反の疑いで書類送検し、発表した。18歳未満の青少年が自らの裸などを撮影して他人に送る「自画撮り」の被害を防ぐため、同条例が改正され、要求行為が取り締まり対象となった。今年2月の施行後、今回が初適用という。
 少年育成課によると、男は2月22~25日、ツイッターで知り合った少女(17)に「お金いっぱいあげるよ」などとメッセージを送って、下着姿などの写真を撮影して送信するよう求めた疑いがある。「大人としてやってはいけないこととわかっていたが、欲望に負けてしまった」と容疑を認めているという。同月25日、大塚署が少女を補導したことがきっかけで発覚した。少女は「お金がもらえると思って送ってしまった」と話しているという。
 男は他にも女性の顔写真などの画像を保有しており、「ツイッターで手当たり次第メッセージを送り、自分の要求に応じてくれる人を探した」と話しているという。
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https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31035630Y8A520C1CC0000/
「自画撮り」要求で初摘発 改正都条例 会社員男を書類送検
社会
2018/5/28 11:22
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 交流サイト(SNS)で知り合った18歳未満の少女(17)に自分のわいせつな画像などを送るよう要求したとして、警視庁少年育成課は28日、会社員の男(33)=東京都世田谷区=を都青少年健全育成条例違反容疑で書類送検した。
 子どもへのわいせつ画像の要求行為を摘発するのは全国初という。
 送検容疑は2月22日~25日、都内でSNSを通じて「お金をあげる」などと少女を勧誘し、わいせつな画像を提供するよう要求した疑い。同課によると、男は容疑を認めている。実際に写真は送られたが、児童ポルノに該当するような内容ではなかったという。

 子どもがインターネット上で知り合った相手に自分の裸の画像などを送る「自画撮り」の被害を未然に防ごうと、都は改正青少年健全育成条例を2月1日に施行。18歳未満の子どもをだますなどして、裸の画像などの提供を求める行為を禁じ、実際に画像が送られなくても違反となる。
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自画撮り要求疑いで初摘発 改正都条例適用、警視庁
5/28(月) 11:59配信 産経新聞
 18歳未満の少女に下着姿などを撮影した「自画撮り」の画像を送るよう要求したとして、警視庁少年育成課などは28日、東京都青少年健全育成条例違反(要求する行為の禁止)の疑いで、東京都世田谷区の会社員の男(33)を書類送検した。画像の要求行為を禁止した改正条例施行後、摘発は初めて。男は調べに対し、「理性と欲望に負けてしまった」などと容疑を認めているという。

 同課によると、男は2月、ツイッター上で出会いを求める書き込みをしていた少女=当時(17)=と知り合い、メッセージアプリ「カカオトーク」でやりとりを開始。「お金をいっぱいあげるから送って」などのメッセージを送り、下着姿などの自画撮り画像を送るよう要求し、少女は複数枚の画像を送った。

 警視庁がインターネット上の違法な書き込みなどを調べるサイバーパトロールで少女のツイッター上の書き込みを見つけ、少女から事情を聴いて発覚した。

 送検容疑は2月22~25日、少女が18歳未満であることを知りながら、カカオトークを利用して金銭の支払いを約束した上で、自画撮り画像を送るよう要求したとしている。

 自画撮りの要求を禁止した改正条例が東京都で2月から施行され、兵庫県でも4月から施行されている。京都や大阪なども条例の改正を検討している。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000525-san-soci
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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000028-jij-soci
「自画撮り」要求容疑で初摘発=33歳男を書類送検―警視庁
5/28(月) 11:52配信 時事通信
 17歳の少女に下着姿の「自画撮り」写真を要求したとして、警視庁少年育成課などは28日、会社員の男(33)=東京都世田谷区=を都青少年健全育成条例違反容疑で書類送検した。

 警視庁によると、要求段階での摘発は全国初。「やってはいけないことだと分かっていたが、欲求に負けた」と容疑を認めているという。

 都は2月、インターネット上に児童ポルノが拡散するのを防ぐため、18歳未満の子どもに裸や下着姿の写真を要求した段階で罰則の対象とする改正条例を全国に先駆けて施行した。4月には兵庫県も同様の条例を施行している。

 送検容疑は2月22~25日、スマートフォンの通信アプリを使用し、下着姿のポーズを指定した上で「お金いっぱいあげるから送ってよ」などと写真の送信を要求した疑い。

 警視庁によると、男は昨年からツイッターで、約300人に対して写真を送るよう要求していたという。同庁は「自画撮り写真を要求すること自体が悪いことなので、見掛けたらすぐに相談してほしい」としている。 
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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000023-mai-soci 
<警視庁>自画撮り要求初摘発 17歳少女被害、男書類送検
5/28(月) 11:20配信 毎日新聞
<警視庁>自画撮り要求初摘発 17歳少女被害、男書類送検
警視庁
 少女(17)に下着姿の画像を要求したとして、警視庁少年育成課は28日、東京都世田谷区の会社員の男(33)を都青少年健全育成条例児童ポルノ要求禁止)違反容疑で書類送検した。画像を要求しただけで罰せられる条例は全国で導入され始めているが、立件されるのは初めて。

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及で、少女に裸などの画像を送信させる「自画撮り被害」が相次いでいることから、東京都は同条例を改正。画像の要求を禁止する罰則規定(30万円以下の罰金)を設け、2月に施行した。同様の罰則は兵庫県で導入されている。
 送検容疑は2月22~25日、少女が18歳未満と知りながら「お金をあげるから、下着姿の写真を送って」などとSNSで要求したとしている。容疑を認めているという。

 同課によると、少女は要求に応じ、複数回下着姿などの画像を送信。少女は「お金がもらえると思って送信してしまった」と話しているという。男はツイッターで昨年から300人の女性に顔写真を送るよう要求しており、「手当たり次第にメッセージを送り、自分の要求に応じる女性を探していた」と供述しているという。【安藤いく子】

追記 2018/06/16
 下着姿を送らせるのは3号ポルノの製造になりますが、それは見逃して、青少年条例違反だけの送致になっているようです。

http://www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150003-n1.html
自画撮りわいせつ画像、要求するだけで犯罪に 2月施行の都改正条例で初摘発者 取り締まり強化する警察
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(1/3ページ)【衝撃事件の核心】
改正条例でどう変わったか

 自らのわいせつな姿を撮影した「自画撮り」画像を18歳未満の子供に出させる行為を罰する条例を全国の自治体に先駆けて施行させた東京都。この条例が適用された初の摘発者が5月下旬に出た。被害にあった少女は軽い気持ちで下着姿などの画像を送信していたが、インターネット上への画像拡散などのリスクがあることを警視庁の捜査員に諭され、後悔の気持ちを強めたという。未成年者が言葉巧みに大人にだまされて自画撮り被害にさらされるケースが多く、警視庁は条例を活用して取り締まりを強化する。(社会部 三宅真太郎)

 「会えませんか?」。今年2月、警視庁の捜査員は少女が使っているとみられるツイッターのアカウントにメッセージを送った。

 警視庁は、インターネットを通じた出会いなどで未成年者が犯罪被害にあうことを防ぐため、「援助交際」「JK(女子高校生を意味する隠語)」などのキーワード検索をしながらネット上の書き込みを調べていた。その過程で、男性との出会いを求めるアカウントを見つけ、捜査員が接触するサイバー補導に踏み切った。

 待ち合わせ場所に現れたのは17歳の少女。「携帯の中身、見てもいいかな?」。少女に心を開いてもらうため、女性の捜査員が中心となって会話を続け、少女のスマートフォンを調べた。無料通信アプリ「カカオトーク」で面識のない男から「お金いっぱいあげるから送ってよ」と自画撮り画像を求められ、2月下旬に下着姿などの画像を送ったことが判明した。

(2/3ページ)【衝撃事件の核心】
改正条例でどう変わったか
 「お金が欲しかったのでやりました」。少女はそう説明したが、捜査員から「画像がネットに拡散されたら取り返しがつかなくなるんだよ」と諭され、「大変なことをしてしまった」と後悔したという。

■  ■  ■

 この少女が送った画像は裸などの児童ポルノに該当するような内容ではなく、従来は画像を要求した男の立件は困難だった。しかし、2月1日、都の改正青少年健全育成条例が施行され、18歳未満の者に金銭の提供を約束するなどしてわいせつ画像を求めることが禁止されたため、この少女のケースでは同条例違反で立件できた。

 5月28日に書類送検されたのは、東京都世田谷区の会社員の男(33)。男は「欲望に負けた。何かしらの法律違反になるだろうとは認識していた」などと話しているという。

 捜査関係者によると、男はツイッターで約300人の女性とみられるユーザーに対し、同様の手口で画像を要求。このうち1割にあたる約30人から顔写真などを受信した形跡があった。捜査関係者は「インターネットの怖さを知らない人が多過ぎる」と嘆く。

 警察庁のまとめでは、平成29年に摘発された事件で、自画撮りの児童ポルノを他人に送信した未成年者は515人にのぼり、24年の207人から約2・5倍に増加した。515人中の7割がツイッターや無料通信アプリ「ライン」などを使って知り合った相手に送信していた。
画像がネット上に拡散したり、「写真をばらまかれたくないなら言うことを聞け」などと脅されたりするケースもあったため、都は未成年者保護の観点から改正条例の施行に踏み切った。全国では兵庫県が同様の条例を4月に施行し、京都や大阪でも導入が検討されているという。

 警視庁幹部は「要求するだけでも犯罪が成立するということを、大人にも子供にも知ってもらい自制してほしい。少しでも嫌な思いをしたら警察に相談して」と呼びかけている。

撮影型強制わいせつ罪(176条後段) 岡崎支部h30.4.12

 撮影型強制わいせつ罪(176条後段) 岡崎支部h30.4.12
 姿態をとらせて製造罪は罪数がややこしいし起訴しても重くならないので起訴しません。
 強制わいせつ罪(176条後段)5罪で求刑7年、宣告4年。
 こういうのも「わいせつ」の定義を聞くんですよ。争わなくてもよくて聞くだけでいいんです
 

【文献番号】25560152
強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所岡崎支部
平成30年4月12日刑事部判決
       判   決
       主   文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
       理   由

(犯罪事実)
 被告人は,
第1 別紙記載のB(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,平成28年11月下旬頃から同年12月頃までの間に,別紙記載の愛知県知立市内のC小学校南校舎×階コンピュータ準備室において,同人に対し,「服脱いで。」などと言って,同人の着衣を全て脱がさせた上,同人を机の上に寝かせて,その陰部付近に手に持ったティッシュペーパーを押し当てるなどし,さらに,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第2 別紙記載のD(当時8歳)が13歳未満であることを知りながら,平成29年3月17日頃,同所において,同人に対し,「けがをしているところがあるから,服脱いで。」などと言って,同人の着衣を全て脱がさせて,その陰茎を露出させた上,同人を机の上に仰向けに寝かせて,その腹部,太もも等を手で触り,さらに,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をした。
第3 別紙記載のE(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同年5月上旬頃,別紙記載の同市内のF小学校南校舎△階多目的便所において,同人に対し,同人が着用していたズボン及びパンツを脱がせた上,その両脇に両手を差し込んで同人を抱き上げて机の上に座らせるなどしてその陰部を露出させ,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第4 別紙記載のG(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同月中旬頃,同所において,同人に対し,同人が着用していた半ズボン及びパンツを引き下げてその陰部を露出させた上,その陰部に起動させたローターを直接押し当てるなどし,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をした。
第5 別紙記載のH(当時6歳)が13歳未満であることを知りながら,同月下旬頃,同所において,同人に対し,「ちょっと怪我してるんじゃない?見てあげる。ここに座って。」などと言い,その両脇に両手を差し込んで同人を抱き上げて机の上に座らせ,「下脱いで。」などと言って同人に半ズボン及びパンツを下ろさせ,その陰茎を露出させた上,同人を抱き上げて同机の上に仰向けに寝かせ,同人が着用していたTシャツをめくりあげて,その姿態をカメラ機能付き携帯電話機で撮影し,さらに,その腹部や太もも等を手で触り,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をした。
(証拠の標目)《略》
(補足説明)
1 被告人は,公判廷において,判示第2の態様につき,手で直接触ったのではなく,ティッシュペーパーを用いてDの腹部,太もも等を触った旨弁解している。
2 この点,被告人は,検察官に対し,丸めたティッシュペーパーを用いてDの腹部や太もも等に触れた後に,タオルでDの顔全体を覆わせた上で,Dの腹部や太もも等に直接触れたなどと供述している(乙11)ところ,このような事実経過についてDの供述とも矛盾せず,内容が具体的である上,Dに見られないようにその顔をタオルで隠し,行為がややエスカレートしていくなど,特徴的なエピソードを含むものとなっている。
 これに対し,被告人は,検察官に対する前記のような供述は,Hに対する事件と混同して行ったなどと弁解する。しかし,被告人において,HとDに対する各事件について,在校する小学校,学年,担任か否か,犯行場所,そこに誘い込む手口等犯行に至る経緯,犯行状況等について明確に分けて供述していること,取調べの段階では記憶になかったが,後に拘置所に移って一人で考える時間ができるようになってから直接触っていないことを思い出したという供述経過が不自然であること等からすると,弁護人が主張するように,被害者がどちらも男児であることや犯行態様に共通する部分も存すること等を踏まえても,被告人が述べるような混同があったとは認められない。
3 したがって,前記検察官に対する被告人の供述は信用できるから,被告人は,Dの腹部,太もも等を直接手で触ったと認められる。
(法令の適用)
罰条
判示各行為 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により,同法による改正前の刑法176条後段
併合罪の処理 同法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の本刑算入 同法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 約半年間のうちに連続して敢行された本件各犯行には相当の常習性が認められる。当時の勤務先の小学校内において,その勤務時間中に,教員という立場を悪用して,担任を務めていたクラスの被害児童2名や,通りがかりの被害児童3名を,治療等を装い言葉巧みに密室に連れ込んだ上で,判示の各わいせつ行為に及んだものであり狡猾というほかなく,各わいせつ行為それ自体が強度とまではいえないことを措いても,被害児童らの裸の状態等を撮影したり,性玩具を使用したりするなど,卑劣であって、実に悪質である。被告人は,平成25年7月に児童ポルノを提供した罪で罰金刑に処せられた中で本件に及んでおり,児童の教育をつかさどる教員としての立場を顧みず,性欲の赴くままに,被害児童らの人格を顧みない行動に出たことは,強い非難に値する。被害児童らの性的自由の侵害の程度は低くはない上に,心身の発達過程にある年頃で本件被害に遭い,しかも通学先の教員が加害者であったことによる被害児童やその痛みを分かつ親らの衝撃や苦痛は大きく,異口同音に怒りや悲痛な心情を吐露していることは十分理解できる。以上によれば,本件は,強制わいせつ事案の中では,比較的重い部類に属すると評価できる。
 このような点に,被告人において,被害児童1名(H)との間において示談が成立し,Hは被告人の処罰を求めない旨の意思を表示していること,被害児童2名(D,B)に対して賠償金等としてそれぞれ51万円強を供託していること,事実関係についてはほぼ認め,反省と謝罪の意思を示し,再犯防止のため,専門家の力も借りて自らの病的な性癖(DSM-5における小児性愛障害)と今後対峙していく旨の決意を示していること,前記罰金前科以外に前科がないこと,父親が出廷し今後の指導監督を誓約していること等の事情を考慮し,被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。 
(検察官西川和志,弁護人宮本大祐各出席)
(求刑 懲役7年)
平成30年4月12日
名古屋地方裁判所岡崎支部刑事部
裁判官 野村充

児童ポルノDVD単純所持で罰金30万円→久慈市主事は減給1ヶ月、有田市主幹は停職3ヶ月

児童ポルノDVD単純所持で罰金30万円→久慈市主事は減給1ヶ月、有田市主幹は停職3ヶ月

 懲戒処分の評価が決まらないようです。
 ちなみに奥村が相談受けて破棄した事案は捜索とか罰金とか懲戒にはなっていません。

久慈市職員を減給 /岩手県
2018.05.26 朝日新聞
 久慈市は25日、20歳代の主事級の男性職員が児童ポルノのDVDを所持し、罰金30万円の略式命令を受けていたとして、1カ月間、10分の1の減給とする懲戒処分を発表した。

児童のわいせつ動画所持、有田市職員を停職処分 /和歌山県
2018.05.26 朝日新聞
 有田市は25日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で罰金30万円の略式命令を受けた市水道事務所主幹の男性(50)を停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。主幹は「自分の好奇心を満たすためだった。申し訳ない」と話しているという。同市総務課によると、主幹は昨年12月、児童のわいせつな動画ファイルを自宅のパソコン内に持っていたという。今年4月、湯浅区検書類送検された。5月に同法違反の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。

東京都が「国が実施している自画撮りに関する調査について、被害に遭った児童の行動パターンなどを都道府県に情報提供するよう求めた。」とか言って法律上の義務である調査研究してないことを自白している話。

 条例作ってから「国が実施している自画撮りに関する調査について、被害に遭った児童の行動パターンなどを都道府県に情報提供するよう求めた。」というのはおかしいですよね。この辺の地方公共団体の義務を果たして調査とか保護とかやってれば被害実態は把握している筈ですから。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第一四条(教育、啓発及び調査研究)
 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることに鑑み、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。


第三章 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置

第一五条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
 厚生労働省法務省都道府県警察、児童相談所、福祉事務所その他の国、都道府県又は市町村の関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。
2前項の関係行政機関は、同項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。


第一六条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。


第一六条の二(心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等)
 社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は、相互に連携して、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとする。
2社会保障審議会又は犯罪被害者等施策推進会議は、前項の検証及び評価の結果を勘案し、必要があると認めるときは、当該児童の保護に関する施策の在り方について、それぞれ厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べるものとする。
3厚生労働大臣又は関係行政機関は、前項の意見があった場合において必要があると認めるときは、当該児童の保護を図るために必要な施策を講ずるものとする。

 児童が安易に送っちゃうので、要求段階での検挙は難しいです。要求された時点で親とかに相談しないんですよ。送っちゃうんですよ。犯人側もそういう弱いとこを突いている。
 検挙したとしても、何回か送らせた後の、最後の要求行為になると思います。
 

東京都青少年の健全な育成に関する条例
(青少年に児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止)
第十八条の七 
何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。
一 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。
二 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること。


第二十六条 
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
七 第十八条の七の規定に違反した者

子供の自画撮り被害防止へ 小池知事、国に規制検討を提案
2018.05.24 産経新聞
 小池百合子知事は23日、都内で開かれた関東地方知事会議に出席し、だまされたり脅されたりした子供が、自分の裸の写真をメールなどで送らされる「自画撮り」被害を防ぐため、不当な要求を抑止する規制のあり方などを検討するよう国に要望することを提案した。

 会議で小池氏は、今年2月に施行された、自画撮りの要求に罰金を設けた都条例を具体例に挙げ、「インターネット上に流出したデータの回収、削除は簡単ではなく、本人の一生に傷をつける。被害の未然防止が喫緊の課題だ」などと述べた。

 その上で、国に対して児童買春・ポルノ禁止法の改正検討や、国が実施している自画撮りに関する調査について、被害に遭った児童の行動パターンなどを都道府県に情報提供するよう求めた。

16歳の被害者に対し、事実上の養父が自己の立場を利用して性交した事案について、監護者性交等罪に児童福祉法違反が吸収され法条競合となるとした事例(札幌地裁小樽支判平成29年12月13日(判例集未登載)). 北海学園大学法学研究 53巻(4号) 107頁-116頁 2018年3月.

16歳の被害者に対し、事実上の養父が自己の立場を利用して性交した事案について、監護者性交等罪に児童福祉法違反が吸収され法条競合となるとした事例(札幌地裁小樽支判平成29年12月13日(判例集未登載)). 北海学園大学法学研究 53巻(4号) 107頁-116頁 2018年3月.
 控訴してない

【事実の概要】
被告人は、平成二一年頃から、内縁の妻(以下「被害者の母親」)及びその娘(当時小学二年生、以下「被害者」)らの居宅に同居し、被害者らの生活費を相当程度負担し、被害者の身の回りの世話をし、被害者の母親に代わって被害者の話を聞くなどして被害者を精神的に支え、時には被害者に対して生活上の指導をするなどして、事実上の養父として被害者を現に監護していたところ、平成二六年頃から被害者に対し性的虐待を繰り返した末、平成二九年七月一七日午後九時頃、上記居宅において、被害者(当時一六歳)を現に看護する者であることによる影響力があることに乗じて被害者と性交等をし(以下「第一行為」)、同月二〇日午前五時頃にも同様に性交等をした(以下「第二行為」) 。
以上の事案につき、検察官は、第一行為及び第二行為それぞれについて監護者性交等罪及び児童福祉法第三四条第一項六号違反(以下「児童福祉法違反」)が成立し、両罪は観念的競合となるが、第一行為による罪と第二行為による罪はかすがい現象が発生せず併合罪となると主張し、懲役一〇年を求刑した。これに対し、弁護人は、被告人自身が淫行の相手方であること、本件各性交について被害者の暗黙の同意があり、被告人は被害者との結婚を考えていたことから、第一行為及び第二行為いずれについても児童福祉法違反は成立せず、二個の監護者性交等罪は包括一罪となると主張した。

「(強制わいせつ罪に性的意図は不要だが)「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいう。」大谷各論第5版

 最判h29.11.29の後もこの定義維持できるか?


大谷各論第5版
「わいせつな行為」とは, いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ,普通人の正常な性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為をいう。
わいせつの意義は,性的風俗を保護法益とする公然わいせつ罪(174条)およびわいせつ物頒布等罪(175条)における「わいせつ」と基本的には同じであるが(今334頁, 336頁),本罪は個人の性的自由・感情を保護法益とする罪であるから, その重点を異にし,原則としてそれらの犯罪よりも広い概念となる。例えば,接吻や陰部に手を触れる行為など,単に人の正常な差恥心を害するにすぎない行為であっても, わいせつな行為となる(新潟地判昭和63.8.26判時1299・152)。
(2) わいせつの傾向本罪は,暴行・脅迫を用いてわいせつな行為を行えば完成する挙動犯である。通説は,本罪をもって,行為者自身の性的意図ないしわいせつな内心の傾向を必要とする傾向犯であるとし,性欲を興奮・刺激させるという性的意図ないし傾向がなければ本罪は成立しないと主張してきた(最判昭45. l ・29刑集24. l ・l)。
しかし,第1に,性的意図ないし傾向は,法文上構成要件の主観的要素とされていない。第2に,行為者の意図または傾向によって被害者の性的自由ないし差恥感情が左右されるとは限らない。第3に,行為者の内心の傾向は漠然としたものであり,明確性が要求される構成要件に導入するのは適当でない。かくして,最高裁判例を変更して,本罪が傾向犯であることを否定した(最判平29・11 .29裁判所ウェブサイト)。

田村真・岐阜地裁所長「語弊を恐れずあえて言うと、性犯罪の量刑は裁判員裁判になって重い方にシフトしたのではないか。昨年、性犯罪に関す法改正があり、強制性交等罪などの法定刑の下限が引き上げられたのは、裁判員裁判が影響を与えたと感じている。」

 起訴率が大幅に下がって、集団強姦致死傷なんて起訴されなくなったんですが、判決だけ見ているとやや重くなったんです。

裁判員制度導入から9年 地裁・田村所長に聞く ノウハウ徐々に定着 まだ発展途上 性犯罪の量刑 重い方にシフトし

2018.05.21 朝刊 14頁 中日新聞
 【岐阜県裁判員制度が導入されて、二十一日でちょうど九年。刑事裁判に市民感覚を反映させることが期待され、大々的に始まった新しい司法制度は定着が進む一方、課題も浮かぶ。制度開始前の準備段階から携わり、裁判長として七十件近い裁判員裁判を指揮した田村真・岐阜地裁所長(63)に、制度の意義や課題を聞いた。(井上仁)
 -あらためて制度の意義は。
 市民が国の統治作用に直接参加することになる。自分たちのことは自分たちで決めるという、草の根民主主義が定着する契機になれば望ましい。制度が始まると聞いた時は興奮したし、ぜひ担当したいと思った。

 -制度は定着してきたか。
 裁判員裁判では、法廷で裁判官と裁判員が目で見て、耳で聞いただけで判断しなければならない。(導入される前まで)多くの法律家は裁判官が資料を読み込んで判断する「精密司法」に慣れていて、意識改革が大変だった。準備段階から試行錯誤を積み重ね、ノウハウは徐々に定着してきた。ただ、まだ発展途上。法律家が「もうこれで十分だ」と改善の意欲を失ってしまうことを心配している。

 -課題の一つに、初公判の前に事件の争点や証拠を整理する「公判前整理手続き」の長期化がある。
 刑事裁判では誤判ほど恐ろしいものはない。弁護人にきちんとした準備をさせずに、誤って有罪になることは絶対に避けなければいけない。それに配慮しつつも、時間短縮の意識は必要だ。公判前整理手続きが長くなると、証人の記憶が薄れるし、処遇が決まらないまま被告人の勾留期間が長引くのは好ましくない。
 事件にもよるが、検察官や弁護人の活動が不十分だったり、裁判官が適切に指揮できないなど、スキル不足で長引くこともある。これは経験を積むしかない。

 -法廷での審理は十分にできているか。
 不十分な点はある。事前の争点整理が適切でなく、法廷で検察官と弁護人の立証がピンぼけになることがある。証拠を絞りすぎたり、逆に多すぎたりしても、裁判員には分かりづらい。尋問技術の拙さも感じる。特に弁護人は向上の余地がある。検察官と比べて裁判員裁判を経験する機会が少ないからかもしれない。
 -裁判員の負担軽減も課題だ。
 裁判官は十分な審理や評議をしたい気持ちが強く、ゆとりのある日程を組みたいと考える。そのため、裁判員の拘束期間が長くなる。それでは仕事や生活への負担が増す。多くの人が参加できる、負担の少ない日程のバランスが重要だ。

 刺激の強い証拠を見ることも負担になるので、裁判員を選任する手続きの中で、不安がある人には申し出てもらうこともある。そうした証拠を調べる必要性も吟味していい。裁判が終わった後も、メンタル面で不調を感じた人には電話や対面で相談に応じるし、専門家のカウンセリングを受けられる態勢も整えている。

 -制度が判決に与える影響をどう感じるか。
 被告に対する公平性の問題もあり、判決が激変するのは好ましくない。影響は長いスパンで見るべきだ。ただ、間違いなくボディーブローのように効いてくるだろう。二十年後、三十年後に「ああ、変わったな」と思うのではないか。

 語弊を恐れずあえて言うと、性犯罪の量刑は裁判員裁判になって重い方にシフトしたのではないか。昨年、性犯罪に関す法改正があり、強制性交等罪などの法定刑の下限が引き上げられたのは、裁判員裁判が影響を与えたと感じている。

強制わいせつ致死傷罪 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 267 250 166 51 76.5%
h19 279 157 68 69.8%
h20 284 137 83 62.3%
h21 257 117 95 55.2%
h22 273 106 125 45.9%
h23 266 109 119 47.8%
h24 271 115 118 49.4%
h25 295 136 120 53.1%
h26 287 134 121 52.5%
h27 228 113 84 57.4%
h28 246 117 82 58.8%
強姦致死傷罪 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 420 390 253 110 69.7%
h19 436 239 156 60.5%
h20 367 198 137 59.1%
h21 308 139 137 50.4%
h22 295 110 148 42.6%
h23 317 128 162 44.1%
h24 286 129 135 48.9%
h25 323 123 173 41.6%
h26 281 85 165 34.0%
h27 217 104 87 54.5%
h28 166 74 73 50.3%
集団強姦致死傷 受理件数 総数 起訴件数 不起訴件数 起訴率
h18 24 31 19 8 70.4%
h19 46 23 6 79.3%
h20 29 18 4 81.8%
h21 35 21 11 65.6%
h22 16 2 11 15.4%
h23 26 17 7 70.8%
h24 22 6 8 42.9%
h25 22 9 10 47.4%
h26 29 17 8 68.0%
h27 21 8 10 44.4%
h28 15 0 12 0.0%

「自画撮り」要求に罰則検討 子ども被害防止 県条例改正目指す=熊本

「自画撮り」要求に罰則検討 子ども被害防止 県条例改正目指す=熊本
 東京・兵庫で条例作ったんだけど、まだ誰も検挙されていません。
 送ってしまってから発覚するからかな。
 規範を児童に向けないと止まらないでしょう。国法の製造罪は児童も行為主体にしているのを、運用でごまかしていて、それを改めることですよ。

「自画撮り」要求に罰則検討 子ども被害防止 県条例改正目指す=熊本
2018.05.19 読売新聞
 18歳未満の子どもがスマートフォンなどで撮影した自分の裸の画像を送らされる「自画撮り」の被害を防ごうと、県は18日、画像を要求する行為への罰則を盛り込むため、県少年保護育成条例改正の検討を始めた。年度内の改正を目指す。

 児童買春・児童ポルノ禁止法では、子どものわいせつな画像や動画を性的な目的で所持することが処罰対象となる一方で、画像や動画などを要求する行為は罰せられない。条例改正で画像や動画の要求を禁止し、子どもたちが犯罪に巻き込まれるのを防ぐ。

 18日に県庁で開かれた検討部会には、弁護士や警察関係者ら13人が出席。県警が県内の被害状況などを説明した後、委員からは「世界中に拡散される恐怖を啓発しなければならない」「被害を受けた子どもたちが相談できる環境づくりも必要だ」などの意見が出た。今後、同様の条例改正をした東京都や兵庫県の事例を参考に、具体的な罰則内容などを検討する。

 県警少年課などによると、昨年摘発された児童買春・児童ポルノ禁止法事件の被害者は13人で、そのうち、7人が自分の裸の画像などを送信させられていた。

被害者方を立ち去るまでの間に,被害者を下着まで脱がせて全裸にし,被害者の左乳房をなめるという客観的にみてわいせつに当たる行為に及んでいる。これらの事情からすれば,被告人がわいせつ以外の目的で被害者方に侵入したとは考えられず,被告人にはわいせつ目的があり・・・(東京地裁h30.3.7)

 公訴事実に「被害者を下着まで脱がせて全裸にし,被害者の左乳房をなめるという客観的にみてわいせつに当たる行為」はないのに、わいせつの故意が認定されています。
 性的意図は不要というのが判例最高裁H29.11.29)なのに、性的意図が争われています・強制わいせつ致死傷罪でわいせつ行為は未遂の場合だと、暴行段階でわいせつの故意が必要になりますよね。

東京地方裁判所平成30年3月7日刑事第11部判決
       判   決
 上記の者に対する住居侵入,殺人(変更後の訴因 住居侵入,強制わいせつ致死,殺人)被告事件について,当裁判所は,検察官堀越健二,同山田祐大,同早川史人及び同平良優実並びに国選弁護人関聡介(主任)及び同本多貞雅各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文

被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中440日をその刑に算入する。


       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,帰宅途中のP2(当時25歳)を見かけ,強いてわいせつな行為をしようと考え,平成27年8月25日午前0時50分頃,東京都中野区α×丁目××番××号a××の同人方に玄関ドアから侵入した上,同所において,同人に対し,その口を手で塞ぎ,床に押し倒すなどの暴行を加えたが,同人から抵抗を受けたことから,殺意をもって,その頸部を扇風機のコードで絞めるなどし,よって,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させた。
(証拠の標目)《略》
(事実認定の補足説明)
第1 争点
 被告人が被害者方へ侵入し,暴行を加え,殺意をもって頸部を絞めるなどして同人を死亡させたことに争いはなく,証拠上も明らかである。本件の争点は,被告人に強制わいせつの故意があったかどうかである。
第2 前提となる事実
 以下の事実については,関係各証拠によって明らかに認められ,当事者間にも概ね争いがない。
1 被害者は,平成27年8月25日(以下,時刻のみを表記する場合には同日の時刻である。),駅から帰宅する途中,コンビニエンスストアに立ち寄り,午前0時29分に同店を出た。同店出入口前から被害者方玄関前までの距離(280m)と防犯カメラ映像から算出した被害者の歩行速度から計算すると,被害者の帰宅時間は午前0時33分過ぎとなる。
2 被告人は,帰宅途中の被害者を見かけて後をつけていき,被害者方へ侵入し,扇風機のコードで同人の頸部を絞めて殺害した(なお,侵入の経緯等については後記のとおり争いがある。)。
3 本件当時,被害者方の階下に住んでいた■(以下「A」という。)は,スマートフォンでインターネット検索をしており,午前0時33分以降は,午前0時35分24秒から午前0時45分37秒までの約10分間検索を中断し(以下「1回目の中断」という。),その後検索を再開し,午前0時51分03秒から午前1時04分59秒までの約14分間検索を中断し(以下「2回目の中断」という。),同時刻と午前1時05分02秒に検索をした後は1時間以上にわたり検索を中断していた。
4 被害者の交際相手であったP3は,午前0時41分に被害者に対しLINEメッセージを送信した。このメッセージには「既読」の表示がついている。
5 被告人は,被害者を殺害後,犯行の発覚を免れるために,2回にわたり,扇風機や被害者の着衣など自分が触った可能性があるものを被害者方から持ち出している。被告人は,被害者方を立ち去るまでの間に,下着を含め被害者の着衣を全て脱がせており,また,被害者の左乳房をなめた上で,ボディソープで拭き取った。
6 被害者の遺体は,平成27年8月26日,被害者方居室の床面に仰向けで全裸の状態で発見された。遺体発見時,被害者が同月25日の帰宅時に履いていたサンダル(アンクルストラップ付きハイヒール)は,被害者方の三和土の一か所に左右両方がまとまった状態で残っていた。
第3 被害者方への侵入の経緯等について
1 前提となる事実のとおり,被告人が,若い女性である被害者の後をつけ,被害者方に侵入後,被害者を全裸にして,その左乳房をなめているという客観的な状況からすれば,被告人にわいせつ目的があったと通常考えられる。
 もっとも,本件では,被害者方への侵入の経緯等に関し,被告人は,被害者が玄関ドアを開けた際に声をかけ,同人の口を手で押さえたが,同人が尻餅をついて後ずさりしたのに引き続いて侵入してしまったと供述しており,この点がわいせつ目的についての判断に関わることから,まず検討することとする。
2 サンダルの遺留状況について
(1)前記のとおり,被害者が帰宅時に履いていたサンダルは,アンクルストラップ付きのハイヒールで,足首のベルトを外してから脱ぐタイプのものであり,遺体発見時,被害者方の三和土の一か所に左右両方がまとまった状態で残されていた。このようなサンダルの形状と遺留状況からは,犯行中に脱げたとは考え難く,被告人が持ち去っていないことをも踏まえると,被害者は,帰宅した後に自らサンダルを脱いだものと推認される。
(2)弁護人は,玄関前までに被害者が足首のベルトホックを外しており後ずさりや抵抗により脱げた,被告人が脱がせたが持ち去り忘れた可能性があると主張する。しかし,このような可能性はサンダルの遺留状況に整合しないし,広範囲に物を持ち去っている被告人が,その際に2回も通ったはずの三和土に自ら置くなどしたサンダルを持ち去り忘れるというのもおよそ考え難い。
3 Aの聞いた物音の内容について
(1)Aは,〔1〕スマートフォンでインターネット検索をしていたところ,カツカツという足音がして被害者方である××号室の前で止まった,〔2〕足音が止まってから,荷物を置くようなコトンという音や,断言はできないがジャボジャボという水音が聞こえてきたと思う,〔3〕足音が聞こえてから10分くらいした後,××号室から大きな物音が聞こえてきた,〔4〕1分くらいしてもまだ大きな物音が続いていたので,インターネット検索をやめて自室を出て様子をうかがいに行った,〔5〕階段の途中まで行くと,女性のうめくような声や「な,ん,で」という声が聞こえてきて,物音も続いていたが,男性の声はしてこなかったので自室に戻った,〔6〕大きな物音が続いていた時間は,全体で10分強くらいだった旨証言している。
(2)Aの上記証言内容は,前述のサンダルの遺留状況等から認められる被害者の帰宅時の状況や,遺体発見時被害者方のユニットバスの浴槽内に水が約19cm溜まっていたことと整合している。しかも,Aは,大きな物音を不審に思っただけではなく,わざわざ自室を出て被害者方の様子をうかがいに行き,そこで「な,ん,で」という被害者の声を聞いたというのであるから,内容的に印象的な事柄である上,カツカツという足音を聞いてからの一連の流れとしても具体的である。また,A方にいて×階の物音が聞こえることについては,検証等を実施したP4警察官の証言によっても裏付けられているし,Aには虚偽供述をするおそれも認められない。したがって,Aの証言は基本的に信用できる。
 ただ,被害者方前で足音が止まってから「10分くらい」という時間の幅の点については,あくまで感覚的なものであることは否定できず,そのまま信用することはできない。しかし,Aが,被害者の帰宅後に複数の音を聞いていることや,「1分とかではなく,20分とか長いわけでもない」とも供述していることからすると,カツカツという足音が被害者方前で止まってから,ある程度の長さの時間が経過した後に,被害者方から大きな物音が聞こえてきたという限度では,信用性を認めることができる。
4 LINEメッセージについて
(1)P3証言によれば,同人が被害者に対して午前0時41分に送信したLINEメッセージは,その送信直後に「既読」はつかず,その後に「既読」がついたことが認められるから,上記送信時刻である午前0時41分以降に被害者のスマートフォンのLINEのトーク画面が立ち上げられたことになる。一方,被害者のスマートフォンは被告人によって持ち去られておらず,被告人自身も被害者のスマートフォンを触ったことはないとしていることからすると,被害者は,午前0時41分以降にLINEメッセージを確認できる状況にあったものと推認できる。
(2)弁護人は,被告人から襲われた被害者がスマートフォンを握りしめたり,犯行の過程でスマートフォンに衝撃が加わるなどしたことで,LINEのトーク画面が立ち上がるなど,被害者の意図に反して「既読」になった可能性があると主張する。
 しかし,被害者のスマートフォンの具体的な設定は定かではないが,LINEのトーク画面が立ち上がるには少なくとも1回以上の操作が必要であることを踏まえると,被害者が意図せずに同画面が立ち上がるなどしたというのは具体的な可能性としては考えられない。
5 以上を踏まえ,侵入の経緯等について検討する。
 Aの証言からすると,Aが大きな物音を聞き1分くらいして自室を出たのは,午前0時35分からの1回目の中断の際か,午前0時51分からの2回目の中断の際のどちらかであり,そうすると,大きな物音が初めて聞こえた時刻は,午前0時34分頃か午前0時50分頃ということになる。そして,被害者の帰宅時間が午前0時33分頃であることを前提に,前記3のとおり,被害者の帰宅する足音が被害者方前で止まってから,ある程度の長さの時間が経過してから,被害者方から大きな物音が聞こえてきたことや,前記4のとおり,被害者が午前0時41分以降にLINEメッセージを確認できる状況にあったことからすると,Aが被害者方の様子をうかがうため自室を出たのは2回目の中断の際であったと認められる。
 このことに,前記2のとおり,被害者は帰宅して自らサンダルを脱いだと認められることを併せ考慮すれば,被告人は,被害者が帰宅して居室内にいたところへ午前0時50分頃侵入したものと推認できる。
 したがって,これらと矛盾する被害者方への侵入の経緯等に関する被告人の前記供述を信用することはできない。
第4 わいせつ目的の有無について
1 以上検討してきたとおり,被告人は,若い女性である被害者の後をつけていき,被害者が帰宅してある程度の長さの時間が経過し,被害者が居室内にいたところへ侵入したのであるから,それだけでもわいせつ目的がうかがわれる上,被害者の死亡との前後関係は不明であるが,被害者方を立ち去るまでの間に,被害者を下着まで脱がせて全裸にし,被害者の左乳房をなめるという客観的にみてわいせつに当たる行為に及んでいる。
 これらの事情からすれば,被告人がわいせつ以外の目的で被害者方に侵入したとは考えられず,被告人にはわいせつ目的があり,遅くとも被害者方への侵入時には同目的を有していたと推認される。
2 被告人の供述について
(1)これに対し,被告人はわいせつ目的があったことを否定しており,その供述の概要は次のとおりである。
 たばこを吸いながら外を歩いていたときに,被害者を見かけ,LINEのIDを交換したいと思い,後をつけていったが,被害者がマンションに入っていくあたりで,「悪魔がうつる。早く倒さないと。危ない,危ない」という声が聞こえ,声に従って悪魔を倒さないといけないと思った。被害者方玄関前で「すみません」と声をかけると,被害者が「わっ」と声を上げたのでとっさに口を塞いだ。被害者は,尻餅をついて後ずさりして部屋の中に入っていき,引き続き自分も部屋の中に入った。被害者が後ずさっていたとき,「首だよ,首」という声が聞こえたので,被害者の股の間に入るような感じでひざまずいて,右手で被害者の首を絞めた。右手の力が入らなくなったとき,手の先のほうが半透明になり,「コードを使えば」という声が聞こえ,声に従い扇風機のコードで被害者の首を絞めると,被害者は動かなくなった。
 その後,自分の指紋がついているかもしれないので,証拠隠滅のために被害者の服を脱がせた。下着についても,服を脱がせている間に触ってしまったかもしれないと思ったので,脱がせて全裸にした。すると被害者の背中から尻尾のようなものが出ているのが見えた。さらに自分が触った可能性があるものを回収する作業をしていたところ,被害者が動いたような気がしたので,生死の確認をしようと思って被害者の左胸を舌先で触れた。その部分はボディソープを使って拭き取った。一貫してわいせつな気持ちはなかった。
 声については,首を絞め終わった後「片付けろ片付けろ,早く」という声が聞こえたのと,荷物をまとめ終わって2回目に被害者の部屋から出るときに「逃げろ」という声が聞こえたが,その後は聞こえていない。
(2)被告人の上記供述の信用性について検討する。
 前記第3で検討したとおり,被害者方への侵入の経緯等については,信用できない。また,「悪魔がうつる。早く倒さないと。危ない,危ない」という声が聞こえてきたので被害者を倒さないといけないと思ったという点についても,捜査段階で被告人の鑑定をしたP5医師は,被告人は統合失調症ではない上,全く関係性のない相手を攻撃するという違和感のある内容であり,回避性人格障害としても説明がつかないことからして,犯行当時,そのような幻聴はなかったと考えられる旨証言している。専門的知見に基づくものとして信用できる同証言に照らすと,上記幻聴は存在しなかったと認められ,ひいては,被害者方へ侵入した動機に関する被告人の供述も信用することはできない。
 そして,被害者を全裸にし,その胸をなめたことに関する被告人の供述自体,不自然不合理というほかない。すなわち,証拠隠滅のためであれば,犯行時に直接触れていない下着まで脱がせる必要はないはずである。また,生死確認のためであれば採り得る手段はいくらでもあるにもかかわらず,あえてだ液等の痕跡が残る可能性が高い手段を選択したというのは,被告人が2回にわたり被害者方から物品を持ち出して証拠を隠滅しようとしている行動と相容れず,不合理である。
 以上からすれば,わいせつ目的を否定する被告人の上記供述は,到底信用することができない。
3 したがって,前記1のとおり,被告人にはわいせつ目的があり,遅くとも被害者方への侵入時には同目的を有していたものと認められる。
第5 結論
 よって,被告人は,わいせつ目的をもって,被害者方に侵入し,被害者に暴行を加えて被害者を死亡させたものであるから,強制わいせつの故意もあり,住居侵入罪,殺人罪に加えて,強制わいせつ致死罪も成立する。
 なお,被告人が加えた暴行の内容に関しては,被害者の口を手で塞いだことは,被告人自身も認めており,Aが被害者の叫び声を聞いていないことや,被害者の口唇周囲から被告人のDNA型が検出されていることによって裏付けられている。また,被告人は被害者を床に押し倒したことは認めていないが,被害者のベッドの支柱部分に被害者の血痕が付いていたことや,被害者の後頭部や腕,足に皮下出血が認められたことからすると,被害者は床の上で抵抗していたと推認でき,被害者が自ら倒れるとは考えられないことからして,被告人が被害者を床に押し倒したものと推認できる。
(法令の適用)
罰条
 住居侵入の点 刑法130条前段
 強制わいせつ致死の点 平成29年法律第72号による改正前の刑法181条1項(176条前段)
 殺人の点 刑法199条
科刑上一罪の処理 刑法54条1項前段,後段,10条(強制わいせつ致死と殺人は,1個の行為が2個の罪名に触れる場合であり,住居侵入と強制わいせつ致死及び殺人との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重い殺人罪の刑で処断)
刑種の選択 無期懲役刑を選択
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
(検察官の求刑:無期懲役 弁護人の科刑意見:懲役17年)
平成30年3月7日
東京地方裁判所刑事第11部
裁判長裁判官 任介辰哉 裁判官 薄井真由子 裁判官 山井翔平

男性被疑者が3歳男児に強制性交等の疑い トイレに連れ込んだ男児の尿飲む、強制性交の疑いで男逮捕 

 男児に強制性交というと違和感がありますが、改正前は強制わいせつ罪(176条後段)で、改正後は強制口腔性交・肛門性交罪(177条後段)になるので、法定刑も5年以上になります。



第一七六条(強制わいせつ)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第一七七条(強制性交等)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
〔平一六法一五六・平二九法七二本条改正〕

児童ポルノCD1枚所持→H29.10.10捜索→罰金30万円(盛岡簡裁H30.5.1)→減給1/60 6ヶ月

児童ポルノCD1枚所持→H29.10.10捜索→罰金30万円(盛岡簡裁H30.5.1)→減給1/60 6ヶ月
 単純所持の罰金だとこれくらいの懲戒のようです。
 所持だけでは児童虐待性も弱いという評価でしょうか。
 奥村が担当した削除後に捜索受けちゃった人は、所属長から口頭注意でした

https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/5/15/14248
児童ポルノ所持、職員を減給処分 盛岡市
2018.05.15
 盛岡市は14日、児童買春・ポルノ禁止法違反罪(単純所持)で盛岡簡裁から罰金30万円の略式命令を受けた水道維持課の係長級の男性(50)を減給6カ月(60分の1)の懲戒処分とした。
 市によると、男性は2016年10月ごろ、児童ポルノのCD—R1枚をインターネットで購入して所持。昨年10月10日に警視庁の家宅捜索を受けた。男性は書類送検され、盛岡簡裁から1日に略式命令を受けた。男性は10日に罰金を納付した。
 市によると、男性は「性的好奇心を満たす目的で所持した。順法意識を欠く行いだった。二度とこのような行為はしない」と話している。男性は業務を続けている。

「児童に胸などを露出した写真4枚を送信させ、その後もわいせつな画像の送信を要求し、少女が断ると、「ここで返信途切れたら(写真を)さらすから」などとメッセージを送信していた。」という場合の罪名(強制sextting)

 画像を撮影送信させたのは、児童ポルノ製造罪になるとして、
 脅迫の部分をどう評価するかが分かれていて、
 従前は強要(未遂)罪とするのが主流でしたが、
 最近は強制わいせつ(未遂)罪とするものが出てきています。強制わいせつ罪と製造罪の罪数には混乱があります。
大分地裁h23.5.11 (併合罪
札幌地裁H29.8.15(併合罪
高松地裁丸亀H29.5.2(併合罪
高松地裁H28.6.2(観念的競合)
 奥村が強制わいせつ罪説を唱えた事件では、東京高裁等で強要罪とされています。

中3に自画撮り強要 防衛医科大生を逮捕 未遂容疑で警視庁
2018.05.11 読売新聞
 女子中学生に裸の自画撮り写真を送らせたなどとして、警視庁赤羽署は11日、埼玉県所沢市の防衛医科大1年の少年 (19)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純製造)と強要未遂の疑いで逮捕したと発表した。
 発表によると、少年は1月、スマートフォンの出会い系アプリで知り合った当時中学3年の女子生徒(15)に裸の写真を送信させた上、別の写真を要求し、拒まれると「裸をさらす」と迫った疑い。容疑を認めている。
 少年は当時、予備校生だったが、「テレビ関係の仕事をしている。芸能人に会いたければ、写真を送ってほしい」とうそをついていたという。

https://www.sankei.com/affairs/news/180511/afr1805110010-n1.html
中3少女に裸の画像送らせる 容疑で防衛医科大生を逮捕 
 スマートフォンの出会い系アプリで知り合った当時中学3年の少女(15)に裸の画像を送らせるなどしたとして、警視庁赤羽署は児童買春・ポルノ禁止法違反などの容疑で、埼玉県所沢市の防衛医科大1年の少年(19)を逮捕した。「悪いことだと分かっていたが、性欲に負けてしまった」などと話し、容疑を認めている。
 逮捕容疑は今年1月21日、アプリで知り合った少女に「自分はテレビ関係の仕事をしている。芸能人と会えるから写真を送って」などという誘い文句で胸などを露出した写真4枚を送信させ、自分のスマホに保存したとしている。
 少年はその後もわいせつな画像の送信を要求し、少女が断ると、「ここで返信途切れたら(写真を)さらすから」などとメッセージを送信していた。少女が母親に相談して被害が発覚した。

青少年わいせつ罪(神奈川県青少年保護育成条例31条1項)のわいせつ行為も最判H29.11.29の影響で定義できない

 青少年わいせつ罪(神奈川県青少年保護育成条例31条1項)のわいせつ行為も最判H29.11.29の影響で定義できないと思われます。性的意図を要求する根拠がないです。
 東京高裁s39の定義が今でも残っていますが、真剣交際の大法廷s60.10.23はわいせつ行為にも適用されるのを見過ごして、そのままになっています。

東京高裁s39.4.22
当裁判所は、右「みだらな性行為」とは、健全な常識がある一般社会人からみて、結婚を前提としない欲望を満たすことのためにのみ行なう不純とされる性行為をいい、また、右「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいうものと解する。したがって、本条例第一〇条第一項は、所論刑法第一七四条、第一七六条ないし第一七九条の各罪と、その犯罪の構成要件を、まったく異にしている。

神奈川県青少年保護育成条例
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/t7e/cnt/f4151/p385175.html
みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

神奈川県青少年保護育成条例の解説S50
(淫行,わいせつ行為の禁止)
第 9条
1何人も青少年に対し淫行,わいせつ行為をしてはならない。
2 何人も青少年に対し前項の行為を教え,またはとれを見せてはならない。
〔要旨〕
本条は,青少年に対してみだらな行為やわいせつ行為をする者,あるいはそれらの行為を故意に教えたり,見せたり する者を対象として,これらの背徳行為を禁止したものである。
〔解説〕
1「何人」とは,第 4条解説の説明のとおりである。
2 「淫行」とは,健全な常識ある一般人から見て,結婚を前提としない不純在性行為をいうもので,単なる欲望を満たすための性交だけを指す「わいせつ行為」
よりも範囲が狭いものである。
3 「わいせつ行為」とは,いたづらに性欲を興奮または刺激して,常識ある一般社会人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反する行為をいうものである。

神奈川県青少年保護育成条例の解説S54
カ 社会情勢は著しく変化し,近年,少女売春等青少年の性に関する非行が氾濫し,大きな社会問題となってきた。このような問題は一部の好ましくない大人の身勝手な行為により,青少年の健全育成を阻害するものであり,青少年の福祉を守るうえから十分配慮しなければならない。
「青少年に対するみだらな性行為・わいせつな行為」は,
刑法売春防止法児童福祉法などいずれの法令によっても取締ることができず,条例でも訓示規定となっていることから.処罰することができ辛かったため.昭和53年10月に条例の一部改正を行い 「みだらな性行為・わいせつな行為の禁止(第 9条)については罰則規定を設け,なお,同条について「みだらな性行為・わいせつな行為」の構成要件を明確にし た。

・・・
(みだらな性行為,わいせつな行為の禁止)
第 9条
1 何人も.青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も青少年に対し前項の行為を教え.又はこれを見せては辛らない。
3 第 1項に規定する「みだらな性行為」とは,健全な常識を有する一般社会人からみて.結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいう。前項に規定する「わいせつな行為」とは,いたずらに性欲を刺激し.又は興奮させ,かっ,健全な常識を有する一般社会人に対し性的し ゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
一部改正昭和53年条例38号
〔要旨]
本条は.青少年に対してみだらな性行為若しくは,わいせつな行為をすること又はこれらの行為を教えたり.見せたりすることを禁止したものである。
〔解説〕
1 「何人」とは,第 4条の解説のと#りである。
2 本条の違反行為は,青少年の健全な肉体的.心理的.精神的ないしは,社会的苦成長のすべて若しくはその一部の成長が阻害されると認められる場合をその対象とするものであり,その認定にあたっては.行為の動機,手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等諸般の事情を十分に考慮して.客観的,総合的に判断されるべきものである。従って,青少年に対する行為でも,例えば結婚を前提とした真に双方の合意ある男女間の性行為等は本条に該当しない。

神奈川県青少年保護育成条例の解説h10
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第 19条
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せではならない。
3 第 1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、文は興奮させ、かつ、健全な常識を有する 般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
一部改正(昭和 53年条例 38号)、一部改正(平成 8年条例 31号)

〔要旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為若しくは、わいせつな行為をすること又はこれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
解説
本条は、青少年を対象とした性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様並びに当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
第 1項関係
(1) 「何人も」 とは、条例第 5条の解説のとおりである。
(2) 「みだらな性行為」については、条文の中でも規定されているが、 「結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交」の解釈としては、 「人格的交流のない性交」 を象徴するものであり、これをさらに詳しくいうと次の場合を指すものである。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺商し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為
( 3 )本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交じた場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女間の性行為は、該当しないものである。