過失処罰の条例52条は、36条には適用されていないので。
http://digital.asahi.com/articles/ASK9D622DK9DPTIL027.html
大阪・ミナミで深夜に少女(17)を連れ回したとして、大阪府警は13日、俳優のkさん(33)を府青少年健全育成条例違反の疑いで書類送検する。捜査関係者への取材でわかった。同条例は、深夜や未明に保護者の承諾なしで18歳未満を連れ回すことを禁じている。一方、kさんは府警の任意の事情聴取に「17歳だとは思わず、年齢は後になって知った」と話しているという。捜査関係者によると、kさんは5月8日深夜から翌9日未明、ミナミの2店で知人らと飲酒し、少女を同席させた疑いがもたれている。府警は同席者や少女らに話を聴いた結果、kさんが18歳未満の少女と知りながら一緒にいたと判断した。府警は少女の母親からも話を聴き、承諾なしの外出だったことを確認。少女は同席していた別の男性が呼び出し、kさんとは初対面だったという。
同条例では16歳以上18歳未満の男女について午後11時から午前4時の間、保護者の承諾なしに連れ出すことを禁じている。違反した場合、30万円以下の罰金が科せられる。
kさんはNHKのドラマの収録のために大阪に来ており、少女と一緒に酒を飲んだ後、宿泊先のホテルに連れて行って性的行為をしたとされる。写真週刊誌「フライデー」が問題を報じた6月、所属事務所は無期限の活動停止にした。その後、kさんは少女側と示談した。立場を利用して関係を強制したと認定できないなどとして、府警は児童福祉法違反(淫行させる行為)容疑には問えないと判断したという。
大阪府青少年健全育成条例
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html
(夜間の連れ出し等の禁止)
第三十六条 何人も、保護者の委託を受け、又は承諾を得た場合その他の正当な理由がある場合を除き、第二十五条各号に掲げる者の区分に応じ、当該各号に定める時間に当該青少年をその住所若しくは居所から連れ出し、又はその住所若しくは居所以外の場所に同伴し、若しくはとどめてはならない。
(平一七条例一一〇・追加、平二〇条例八五・旧第三十条繰下、平二三条例一〇・旧第三十七条繰上)
第四十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第一項、第十七条第一項、第二十条第一項若しくは第二項、第二十三条第一項若しくは第二項、第二十四条第一項、第三十五条から第三十七条まで又は第三十八条第二号の規定に違反した者
第五十二条 第三十四条、第三十七条第二号若しくは第三号又は第三十八条第一号、第三号若しくは第四号の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第四十七条、第四十八条又は第四十九条第一号の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
大阪府青少年健全育成条例の解説h26
【趣旨】
保護者以外の者が、保護者の委託又は承諾を得ずに、青少年を夜間に自宅から連れ出したり、外出したまま帰宅させずに自宅以外の場所に同伴したりとどめたりすることは、その行為そのものが
犯罪性を帯びる場合もあることから、すべての者に対して、青少年の夜間の連れ出し等を禁止するものである。
【解説】
本条は、すべての者に対し、保護者の委託又は承諾を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、夜間に青少年を、その住所若しくは居所から連れ出し、又は同伴し、若しくはとどめることを禁止する規定である。
この規定に違反すると、第49条第1号の規定により30万円以下の罰金に処せられる。
本条の適用に当たっては、青少年に対する加害等の具体的な危険性は要件としないが、青少年を健全な成長を阻害する行為から保護するという本条例の趣旨・目的を踏まえ、行き過ぎた規制とならないよう慎重に判断すべきである。
なお、制限時間前に行われた「連れ出し」、「同伴」、「とどめ」の行為が、継続した状況で制限時間に至って認知された場合も、本条違反としての要件を構成する。
ア 「何人も」とは、府民はもとより、旅行者や滞在者を含み、また成人であるか否かを問わず、現に大阪府内にいる全ての者をいう。業として行うか否か、あるいは個人として行うか組織的に行うかを問わない。
イ 「保護者」とは、第4条第2項に同じ。
ウ 「保護者の委託を受け、又は承諾を得た場合」について、委託や承諾の確認方法は条文上は明記していない。
保護者から承諾書をとるほか、青少年団体などが主催するキャンプ等の行事については、申込書に保護者の署名捺印を求めるなどが考えられる。また、それ以外の場合では、保護者に連絡をとって委託や承諾の有無を口頭で確認することが考えられる。
エ 「その他の正当な理由」としては、次に掲げる場合など、社会通念上正当な理由と認められるものが挙げられる。
・ 本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合
・ 災害や事件・事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等
オ 「第 25条各号の区分に応じ、当該各号に定める時間」とは、第25 条で区分された次に掲げる時間である。
・ 16歳未満の者:午後8時から翌日の午前4時まで
・ 16歳以上18歳未満の者:午後11時から翌日の午前4時まで
カ 「住所」とは、生活の本拠であって法律関係を処理する場合の基準となる場所をいい、「居所」とは、生活の本拠ではないが、人がある期間継続して居住する場所をいう。
「その住所若しくは居所以外の場所」については場所的限定はない。
キ 「連れ出し」とは、青少年をその住居、居所から離れさせることであり、その手段方法は問わない。したがって、携帯電話やメール等を利用して呼び出したり、若しくは第三者を介して行う行為も該当する。
ク 「同伴」とは、現に同行し又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であるか複数であるかは問わない。また、青少年が既に夜間に外出している状態を利用し、更にその状態を継続させる行為も含まれる。
ケ 「とどめ」とは、連れ出している、あるいは既に外出している青少年を、その住居、居所以外の場所に置くことであり、その手段は問わない。
コ 上記「連れ出し」「同伴」「とどめ」のいずれも、青少年の意思には関係がない。
青少年の意思に反し、あるいは意思の確認をしないで、これらの行為をすることはもとより、青少年が自らの意思で連れ出しに応じて外出し、同一の行動を取り、又はとどまっている場合も本条の連れ出し等に該当する。
【判例等】
■昭和49年11月20日釧路家裁決定(北海道青少年健全育成条例保護事件)
<争点>
19歳の少年が、保護者の依頼または承諾を得ず、17 歳の少女を自宅に宿泊させて肉体関係を結び、深夜同伴した行為は、北海道青少年健全育成条例第11条第2項にいう「青少年を同伴」する行為に該当するか。
<判決要旨>
「正当の理由のない」とは、青少年の福祉を害するおそれのあるような一定の反社会的、反倫理的な形態の深夜同伴を意味するものと解され、より具体的には、青少年を犯罪に誘う目的や、偽計・威迫を用いる等、その動機・目的・手段・態様等において反社会的と評価される深夜同伴をさすものというべきであるが、その判断にあたつて慎重になされるべきと考えられる。
本件記録によれば、少年の居室に宿泊した後少年は少女と同棲するに至り、双方の両親もこれを認め、現在は内縁に等しい間柄にあることが認められる。
以上の事実によれば、本件の肉体関係は交際を継続中の既に婚姻能力もある男女のありふれた性的関係で反社会性なく、深夜同伴もこれに付随したものに過ぎず、加えて少女が間もなく満18歳に達する者であることを考慮すれば、本件各事実が、同女の福祉に影響を与えたものとは到底認められない。
■昭和51年9月25日釧路家庭裁判所決定(北海道青少年健全育成条例保護事件)
<争点>
19歳の少年が、A運転の自動車に16歳の少女を乗車させて午後11時から翌日の午後0時25分頃まで路上を走行していた行為は、北海道青少年健全育成条例第11条第2項にいう「青少年を同伴」する行為に該当するか。
<判決要旨>
同条例の規定自体よりして処罰対象となる「青少年の深夜同伴」行為とは、「保護者の依頼を受け、またはその承認を得ない等正当な理由がない青少年の深夜同伴行為」であることは明らかであるが、それは一見すると極めて抽象的定義となつているものの、同条例の制定目的が「青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止し、その健全な保護育成を図る」(1条)ことにあるとされることをも考慮するときには、「青少年の福祉を阻害」するに至る危険性が認められ、かつその行為の態様等の諸般の事情が社会倫理的秩序において許容されないものと認められる場合を指称すると解するのが相当である。
よって本件記録を見るに、少女と少年は幼馴染の間柄であるが、同女が午後10時30分ころ歩行中、A運転の乗用車の助手席にいた少年より声をかけられたため、実家に帰ろうと考え、「乗せていって」と頼み、少年らもこれに応じたので乗車し、その後Aが少年に「親方のところに寄って行く」といい、少年より「いいべ」と尋ねられたが、そんなに時間がかからないと考え、「いいよ」と了承して走行中警察官に発見された旨の記載がある。
以上の事実によれば、深夜歩行中の少女を発見した少年が不審に思つて声をかけ、少女からその実家まで乗車させてほしいとの依頼に応じて乗車させ、少女の承諾のもとに途中寄道をしたというものであつて、かくの如き行為をもって到底「青少年の福祉を阻害」するに至る危険性があるとは認めがたく、またその行為の態様等諸般の事情からして社会倫理的秩序において許容されないものとなし難いことも明らかであるから、少年の本件所為は同条例第11条第2項に該当しない
52条
【趣旨】
本条は、いわゆる年齢知情特則である。
青少年に対する禁止規定をより実効的なものにするため、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、過失がない場合を除き、処罰をまぬがれない旨を平成20年の改正で新たに追加している。
年齢知情特則の対象を3つの行為に限定しているのは、これらの行為はいずれも青少年の身体、健康に直接危害あるいは悪影響を及ぼし、青少年の人権を不当に侵害するものであり、青少年の健全な成長を阻害する顕著なものであるという理由から、青少年を保護するという条例の実効性をより高めるために、過失犯処罰規定を設けることとした。
【解説】
本条は、次の3つの青少年への禁止行為に違反した者が、当該青少年が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
○青少年に対するみだらな性行為及びわいせつな行為の禁止(第34条)
○青少年への勧誘行為の禁止(第37条第2号及び第3号)
・性風俗営業の従業員等になるよう勧誘してはならない。
・ホストクラブ等の客になるように勧誘してはならない。
○場所の提供及び周旋の禁止(第38条第1号、第3号、第4号)
青少年に対して次の行為が行われることを知りながら、又は青少年が次の行為を行うことを知りながら、場所を提供したり周旋してはならない。
・みだらな性行為やわいせつ行為
・覚せい剤の使用
・シンナー等の使用
ア「過失のないとき」とは、例えば、青少年に対して年齢確認をした際に、当該青少年が年齢を詐称した身分証明書や他人の身分証明書を示した場合等で、社会通念上、違反者の側に過失がないと明らかに認められる場合が考えられる