LEX/DB
【文献番号】25483215
損害賠償等請求事件
千葉地方裁判所平成23年(ワ)第1802号
平成24年10月4日民事第5部判決
口頭弁論終結日 平成24年7月26日
第2 事案の概要
本件は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)違反等により逮捕され,千葉県警察鎌ケ谷警察署(以下「本件警察署」という。)留置施設に収容されていた原告が,〔1〕同署から千葉地方検察庁松戸支部に身柄を送致されるに当たり,同署の警察官から,手錠をきつく右手首にはめられる,空いている逆側の手錠の輪を引っ張られる,柔道の技をかけて倒されるなどの暴行を受け,右手首に全治1週間を要する傷害を負ったこと,〔2〕違法に拘束衣と手錠を同時使用され,さらに,これらを併用した状態のまま護送されたこと,〔3〕その際に原告による同署の警察官に対する暴行があったとして同署の警察官により公務執行妨害及び傷害の罪で立件され,千葉地方検察庁松戸支部検察官から同罪で不当に起訴され,公判に1年間以上が費やされたことなどにより,肉体的及び精神的苦痛を被ったなどと主張して,被告千葉県に対し,国家賠償法1条1項に基づき,300万円の慰謝料及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年8月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である
主 文
1 被告は,原告に対し,10万円及びこれに対する平成23年8月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを30分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
ただし,被告が7万円の担保を供したときは,上記仮執行を免れることができる。
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5 損害
前記3で判示したとおり,A3警部補らが原告に対して拘束衣と手錠を同時に使用して本件護送を行ったことは違法な公務の執行であるところ,その違法性は刑事収容施設法に明白に違反するものであること,原告に対してこれらが併用された時間も約1時間10分に及んでいることなどに照らせば,拘束衣の使用に至ったのが原告の抵抗に起因していることなどを考慮しても,原告が上記違法行為により受けた肉体的,精神的苦痛に対する慰謝料の額は10万円と認めるのが相当である。
第4 結論
よって,原告の請求は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,10万円及びこれに対する平成23年8月3日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余の請求については理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
千葉地方裁判所民事第5部
裁判長裁判官 松並重雄 裁判官 清野正彦 裁判官 川嶋彩子