児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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少年法37条はS34ころにも問題視されていた。

 拡大するという方向もあったんですね。

全国少年係裁判官会同要録 最高裁S34
この要録は、昭和三十四年二月こ日および三日の両日にわたり、最高裁判所において開催された全国少年係裁判官会同の経過を明らかにしたものである。
会同員の発言内容は、速記録に基づき当局において整理したものである。
昭和三十四年五月
最高裁判所事務総局家庭局

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成人の刑事事件
少年法第三七条の成人事件の範囲を砿張する必要はないか。(秋田)
秋田
成人事件の範囲を拡げる問題は、しばしば会同等で問題になっているところですが、実際少年事件を扱っておりますと、少年から臓物故買をする成人が相当あり、また、少年の雇主で少年を通じてぬすみをやる事件をたびたびわれわれは経験しますが、差しあたりこのような成人の犯罪について家庭裁判所の管轄に入れる必要があるのではないかと考えております。なおこの点はいろいろ議論があると思いますが、成人事件と併合罪の関係にあるほかの罪についても家庭裁判所の管轄に取り入れてよいのではないかと考え問題を出したわけです。

静岡
提案のご趣旨に賛成であります。しかし、その範囲についてですが、現実に私どもは少年ばかりでなく刑事の単独事件もやっておりますが、先般、労働基準法違反で前借の相殺の禁止規定の違反、十八歳未満の婦女子を客席にはべらせる違反、この両方の事実を合せて地方裁判所に公訴してきましたが、これは、前借の相殺禁止は地方裁判所の管轄であり、十八歳未満の女子を客席にはべらせるという行為は、家庭裁判所の所管であります。従って、十八歳未満の婦女子を客席にはべらせるという行為は公訴棄却にして、改めて即時に家庭に起訴するということになったわけですが、二個の判決になるわけで、まことに同じような性質の事案を双方に分けてあるのは、法体系、裁判体系からきているとは思いますが実務上はなはだしく不都合を生じております。このような場合に、異なる裁判官がこの事案を審理することになりますと、お互に打ち合せるわけにもいきませんので、いかなる結果をまねくか法の運用上まことに遺憾な点があると思いますので、この点について三七条の規定は、この際深く考慮されて合理的な規定にしていただきたいと考えます。

東京高等
裁判所の性格が家庭裁判所地方裁判所と違いまずから、家庭裁判所の管轄を拡げるということは、われわれのほうとしては反対であります。
東京
成人事件は全く取ってつけたような規定でありまして、ほかのいままで規定されていたものをそのまま範囲の中に入れたというような感じがしますが、根本的に成人事件とは一体どういうものか、その内容性質から考えて組みなおしをする必要があると思います。全く、少年の福祉を害する成人を罰するというか、それに対する措置をする、ということになっていないのが現状であると思います。また手続についても現在の刑事手続をそのまま持って来たような手続では、どうもよくないと思いますので、いまのようなことであればむしろ家庭裁判所の管轄からはずした方がよいのではないかという議論さえ出ている状態ですから、本来のあるべきすがたに持っていく改正はぜひ必要であると思います。

佐賀
当庁では、全面的に秋田の必要性には賛成です。ただいかなる範囲をもって来るかについては、現在の成人の規定の在り方としては不備があると考えられますので、こういう規定の仕方ではなくて、た主えば少年との共犯事件あるいは売春防止法関係もつけ加えるという方向に持っていくことを希望するというのが、調査官もふくめた全員の意見であります。

家庭局森田課長
この問題につきましてはさきほどどなたからかご指摘がありましたように、昭和三一年一一月の全国少年裁判官会同において、とくにこれを一つの柱といたしましてあらゆる角度から論議があったところであります。その際家庭局といたしまして申し上げましたことと同様にそのまま今日も引き続いて考えているわけで、詳細はその時の会同要録に譲りたいと思います。ただ一、二の点について補足的に申し上げますと、制度改正の際アメリカの制度にならって、立案の当初は、少年の非行に原因を与えた成人の罪、いわゆる原因供与罪と呼ばれるものが討議されたわけであ-りますが、これはあまりに包括的に過ぎて罪刑法定主義という考えからも疑問であるということで見送りになりました。
それから少年の保護を全うするために、成人ことに親とか雇主という継続的親族的な関係にある者の責任を究明するため、プロべーションあるいは刑罰的な背景の下に何等かの処置のなし得るように立案がなされ、遺棄罪なども家裁の管轄とすべきであるというようなことも論議せられたのであります。当初は罰金刑のものだけに限るべきだというような線が引かれたために、遺棄罪等懲役刑のものは除かれました。その後量刑については家庭裁判所において実刑も科しうるようになりましたが、その際は根本について十分な検討がなされないまま今日になったわけであります。そういうような経路からみましでも、さきほどのご指摘のように、立法の本旨にふさわしいような手続になっていないということ、その他いろいろな事情から年々この種の事件は減少しているという結果も現われて来ていると思うのであります。従ってこの辺で各国の制度をもう一度検討して根本的に考え直してみるべきだろうと思います。どういう罪種のものをどういう範囲に取り入れるかということについては、原因供与罪といったような広い包括的な表現の仕方と、すでになんらかの刑罰法規に規定されているものを列挙する列挙主義という考えとがあるようであります。いずれを取るのが妥当であるか、相当根本的な問題であるかと思います。
さらには東京からすでにご指摘のあったところでありますが、本来これは少年保護のための刑事政策、あるいは少年裁判所が家庭裁判所へ移行して来た経路から生れたものでありま寸。そういう意味で家事事件との関連について、なにか取り上げるものはないであろうか。あるいはプロベ−シヨンの制度をここに導入して活用すべきではないかというような問題もあると思います。それらの点はやはりさきほど来申し上げております研究会において十分検討してみたいと考えております。