児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

和田雅樹「第三者を搭乗させる意図を秘して国際航空運送に係る航空会祉関係係員から自己に対する搭乗券の交付を受ける行為が詐欺罪に当たるとされた事例(最高裁判所平成22年7月29日第1小法廷決定裁判所時報1513号)」研修752号

 もう財産犯じゃないみたいですね。

第1 はじめに
被告人は.中国人を外国に不法入国させようとする中国人ブローカーに声をかけられ、報酬目当てで.知人に指定された航空券を購入させた上で.その知人をして自らは搭乗せず中国人に渡すつもりであるのにこれを隠して.カウンターで航空券等を示して搭乗券の交付を受けさせ,これを中国人に渡させた。なお搭乗券を譲り受けた中国人はブローカーが用意した被告人の知人名義の偽造旅券を示して搭乗することとなっていた。
本決定は上記のような事案について,被告人に搭乗券を詐取した詐欺罪が認められるとしたものである。第三者に利用させる目的で預金通帳の交付を受ける行為について詐欺罪を認めた最高裁決定が既にあるが.搭乗券については本件が初めての事例であり.実務上参考になると思われるので,ここに紹介する次第である。なお,本文中の意見にわたる部分はもとより私見である。
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控訴審裁判所は「搭乗券は.航空券や乗客名簿に記載され,搭乗者として承認されている者との同一性を示し,それなくしては航空機に搭乗することができないもので,財産権による保護に値する十分な社会的.経済的価値があることは明らかである」とした上で.上記同一性のない者の搭乗の航空の安全に対する弊害とそれに伴う社会的信用の低下.自社の不備による搭乗券の発券によって不法入国させた場合に課せられ得るペナルティなども財産的侵害に当たると認定した。その上で.これらの諸点にもかんがみ.搭乗者の同一性は,「搭乗券を交付するかどうかの判断に際して極めて重要な考慮事項であって.この人的一致を偽って搭乗券の交付を求める行為は,重要事実について航空会社の担当者を錯誤に陥れ.搭乗券の交付をするかどうかの判断を誤らせる行為であって.詐欺罪における欺同行為に該当することに異論の余地がなく.この錯誤に基づいて搭乗券を交付することが会社財産に損害を与える処分行為に該当することも…明らかである。」とした。