児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

警察庁「サイト管理者、開設者等には違法情報を削除するという義務が現在かかっておりませんので、削除しないというだけでは違法にはならない」

 これは嘘ですよね。
 削除しないと違法で、他に条件が整えば掲載した罪(公然陳列罪など)の正犯です。判例です。
 井澤君も片桐君も勉強不足。判例使って等しく取り締まってください。

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
http://blogsv.digital-r.com/izawakyoko/2007/12/post_345.html
青少年問題に関する特別委員会
第4号 平成19年12月11日(火曜日)
○井澤委員 ぜひ警察庁の方でも、迅速化、効率化、そして現場が今どうなっているかということを十分に把握していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 ここで、上川大臣にも、ぜひこのホットラインセンターの支援強化について、福田総理大臣そして額賀財務大臣等にも働きかけをしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、ホットラインセンターでの有害情報の処理について、続けて質問をしたいと思っております。
 実際、担当者の方に伺いましたところ、有害情報が削除されるまでの手続というのは、有害情報が記載されているサイトの管理者にまずは削除の依頼をする、そして、大体二週間ぐらいたってから、それが削除されているかどうか、そのサイトを見てから確認をする、まだ確認されていないようなところには、サイトを管理しているプロバイダーに依頼して、そしてまた確認をするというような、確認作業、確認作業というような繰り返しで、実際削除されるまで非常に時間がかかっているのが現状です。
 あくまでも、これはセンターの側には強制力がありませんので、依頼、削除をお願いするというようなことで、依頼されたプロバイダー等にも義務もありません。この時間がかかる間にもどれだけ多くの利用者がそのサイトに触れ続けているのかと思いますと、これは早急な、依頼というだけではなく、何か強制力のようなものが必要ではないかと考えるところでございます。

 そこで、効果的な違法・有害情報等の対策のために、現在のホットラインセンターの業務に、依頼ではなく、もっと強制力を与えることが必要ではないかと思っておりますが、まずは警察庁の御見解をお伺いします。

 とともに、削除に応じない場合に、特定のプロバイダー等が少数いると聞いております。少しアドレスを変えてまた同じようなサイトを運営する、そういう悪質なプロバイダーもいると聞いておりますので、何かそこに行政指導ができないものなのか、総務省にお伺いいたします。

○片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 違法・有害情報に迅速な処理が必要だという御指摘は、まさにおっしゃるとおりだと考えております。

 そこで、まず、現在、サイト開設者がインターネット・ホットラインセンターからの削除要請に応じない場合一体どういうふうな対応をしているかということから御説明申し上げますと、当該サイトに書き込まれた情報が違法情報である場合、これはセンターからまず警察に通報がございます。この場合、一般論で申し上げれば、それ自体が違法でございますから、その情報を書き込んだ者に対して捜査という形でもって取り締まることができるということでございまして、この場合はある程度迅速な対応が可能ではないかというふうに考えております。

 しかしながら、違法情報の情報量というものは相当膨大でございまして、すべて捜査では解決できないということから、一定のものについてはセンターの方から削除要請をするということになっているところでありますけれども、こうした要請にもかかわらずサイト管理者等が要請に応じなかった場合、じゃ、どうなるかということでございますけれども、サイト管理者、開設者等には違法情報を削除するという義務が現在かかっておりませんので、削除しないというだけでは違法にはならないということでございます。

 ただ、情報自体違法でございますから、書き込んだ者等に対して捜査という形でもってこれを検挙するということは可能でございますけれども、ただ、事案の数と捜査力の見合いの問題がここではあるということを申し上げておきたいと思います。

 次に、当該サイトに書き込まれた情報が有害情報であった場合にはどうなるのかということでございますが、これは、警察に通報されることはございませんで、センターから削除要請を行うということになっております。

 ただ、この場合にも、サイト開設者等には削除義務があるわけではございませんので、応じなかったとしても、サイト開設者に対して捜査を及ぼすということはできないということでございまして、あくまでも要請の範囲にとどまるということが現状でございます。

 御指摘は、サイトに書き込まれた違法情報、有害情報についてサイト開設者等に削除義務を課すべきだというような御意見だというふうに考えられますけれども、特に有害情報については、何をもって削除すべき情報とするかということについて極めて難しい問題があるというふうに考えております。

 いずれにしましても、違法情報、有害情報につきましては、警察だけでは解決することが大変困難でございまして、関係省庁とも連携をしながら、そのあり方について検討してまいりたいと考えております。

○井澤委員 今、違法情報、有害情報について、極めて難しい部分がある、まだまだこれから各省庁と連携をして検討しなければならないという御指摘もございました。ぜひ、ここにきょうお集まりの各関係省庁連携をしてこの問題に早急に取り組んでいただきたいことを提案させていただきます。ありがとうございました。

 この点については、学会誌用の論文を書いていて、判決の引用が長いとか言われているところです。
 猫の目の奥村説よりも未公開の判決の方が有用だと思って、正確に掲載しようと思っています。

プロバイダの刑事責任〜名古屋高裁H19.7.6と東京高裁H16.6.23
奥 村  徹*1
Toru Okumura
1. 問題点
 画像掲示板に他人が事前連絡なく違法画像(わいせつ、児童ポルノ)を掲載した場合、掲示板管理者の刑事責任は公然陳列罪(刑法175条、児童ポルノ法7条4項)の正犯か幇助か、作為犯か不作為犯か。
 大変難しい問題であるが、裁判例を紹介しつつ分析を試みたい。
2. 裁判例
 裁判例を見ると、正犯か幇助か、作為犯か不作為犯かが定まっていないことが明かである*2。
?横浜地裁H15.12.15*3(「インターネット上の誹謗中傷と責任」P149)(不作為犯・正犯)
?東京高裁H16.6.23*4(「インターネット上の誹謗中傷と責任」P151)(作為犯・正犯)→上告棄却(最高裁H19.3.28)
?名古屋地裁H18.1.16*5(公刊物未掲載)(不作為犯・幇助犯)
?名古屋地裁H19.1.10*6(公刊物未掲載)(作為犯・幇助犯)
?神戸簡裁H19.2.29(公刊物未掲載)(不作為犯・幇助犯)
?名古屋高裁H19.7.6*7(公刊物未掲載)(作為犯・幇助犯)→上告棄却(最高裁H19.11.9)
 この点について詳細に判示した二つの高裁判決を紹介する。
・・・・

警察庁も幇助だっていってたのに。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20070909/1189335657
警察学論集52巻4号
 掲示板開設・管理者と投稿者の関係は、映像送信型性風俗特殊営業における、自動公衆送信装置設置者と映像送信型性風俗特殊営業者の関係と同じである。
 映像送信型性風俗特殊営業においては、自動公衆送信装置設置者が児童ポルノ映像の存在を知ったときは当該映像の送信を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない(31条の8第5項)とされているが、違法画像の存在を認識しただけでは「知った」ことにはならず、明確な認識が必要である。(警察学論集52-4P106)
 しかも、必要な措置を講じる義務に罰則はなく、措置を講じなくても「同項の規定が遵守されることを確保するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。」だけである。
 しかも、義務違反の場合の刑事責任については、せいぜい公然陳列罪の幇助と説明されている。(警察学論集52-4P107〜8)