児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

売春防止法で有罪(執行猶予)確定後に、脱税で告発された事案

 最初から売春防止法違反+税法違反が併合審理されたと仮定して執行猶予が付くかということだと思うんです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071102-00000404-yom-soci
元被告は04年4月ごろから、派遣型風俗店を装って、東京都渋谷区で複数の売春クラブを経営。インターネットのホームページで宣伝して客を集めていた。今年3月、店の女性従業員に売春行為をさせていたとして、警視庁に逮捕され、6月に東京地裁で懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受け、確定している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071102-00000050-jij-soci
東京都渋谷区で派遣型売春クラブ「青山宝石の扉」を営業し、「レースクイーン、グラビアアイドルなどハイレベルな女性を集めました」とホームページで宣伝。「150分、7万円」といった料金で客の待つホテルなどに女性を派遣していたが、稼いだ所得を意図的に申告しなかったという。
 隠した金は主に、現在も経営する美容関係会社の事業資金に充てていたという。
 元経営者は同クラブの営業で売春防止法違反などの罪に問われ、今年6月に懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受け、確定している。 

猶予の言渡し(確定)前に犯した他の罪だとすると、45条後段の併合罪

第45条(併合罪) 
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。
第50条(余罪の処理)
併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、確定裁判を経ていない罪について更に処断する。

 猶予の言渡し(確定)前に犯した他の罪だとすれば、26条2号で、執行猶予はつけられる。この場合の猶予の要件は25条1項であって、2項ではない。

第25条(執行猶予) 
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

第26条(執行猶予の必要的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
二 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

第26条の2(執行猶予の裁量的取消し)
次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消すことができる。
一 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
二 第二十五条の二第一項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
三 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき。

判例コンメンタール刑法1巻P107
(3) 執行猶予とその犯罪前の余罪との関係
ア執行猶予の言渡しを受けた罪の余罪の場合
ある罪について執行猶予の有罪判決が確定した後にその確定前に犯した罪の刑について刑を言い渡す場合、本条を形式的にみると、前に禁錮以上の刑に処せられているので1号に該当せず、再度の執行猶予の可否が問題となるようにもみえるが、実体法上併合罪の関係にありながら、別々に審理され確定が前後することにより執行猶予の余地が狭まるのは不合理である・・・