児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

出会い系売春:被告に懲役2年の実刑−−地裁 /香川

 前から疑問に思ってるんですが、高松では児童淫行罪が地裁にかかってる?
 デリヘルの事物管轄なんてどこでもいいですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070309-00000182-mailo-l37
携帯電話の出会い系サイトを利用して管理売春をしたとして、売春防止法違反と児童福祉法違反の罪に問われた被告(28)に対し、高松地裁は8日、懲役2年、罰金30万円(求刑・懲役3年、罰金30万円)の実刑を言い渡した。真鍋秀永裁判官は「積極的にかかわり、売り上げを増加させるため管理手法を徹底させた責任は重い」と述べた。

 デリヘル型児童淫行罪の実刑率は3割くらいですね。


追記
 読売も地裁だと報じています。

出会い系サイトで売春業 男に懲役2年判決 地裁で公判=香川
2007.03.09 読売新聞社
 派遣型の風俗店経営者らが携帯電話の出会い系サイトを利用して組織的に売春業を営んだとして、売春防止法違反(管理売春)と児童福祉法違反の罪に問われた被告(28)の判決公判が8日、地裁であり、真鍋秀永裁判官は「手法が悪質で、多額の利益を得ており、罪は重い」として懲役2年、罰金30万円(求刑・懲役3年、罰金30万円)を言い渡した。

 頭の体操みたいですが、児童福祉法が地裁に係ると違和感があるので、確認してみよう。
 売春防止法の罰則は、最高で「居住させ売春をさせる業」の10年。
 児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)は10年。少年法37条2項で科刑上一罪となって、売春させる罪の犯情が重い時に限り地裁。

売春防止法
第5条(勧誘等)
売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 公衆の目にふれるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
第6条(周旋等)
売春の周旋をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
2 売春の周旋をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者の処罰も、前項と同様とする。
一 人を売春の相手方となるように勧誘すること。
二 売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
三 広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
第7条(困惑等による売春)
人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた者は、三年以下の懲役又は三年以下の懲役及び十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第8条(対償の収受等)
前条第一項又は第二項の罪を犯した者が、その売春の対償の全部若しくは一部を収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、五年以下の懲役及び二十万円以下の罰金に処する。
2 売春をした者に対し、親族関係による影響力を利用して、売春の対償の全部又は一部の提供を要求した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第9条(前貸等)
売春をさせる目的で、前貸その他の方法により人に金品その他の財産上の利益を供与した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
第10条(売春をさせる契約)
人に売春をさせることを内容とする契約をした者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 前項の未遂罪は、罰する。
第11条(場所の提供)
情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 売春を行う場所を提供することを業とした者は、七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。
第12条(売春をさせる業)
人を自己の占有し、若しくは管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ、これに売春をさせることを業とした者は、十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。
第13条(資金等の提供)
情を知つて、第十一条第二項の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、五年以下の懲役及び二十万円以下の罰金に処する。
2 情を知つて、前条の業に要する資金、土地又は建物を提供した者は、七年以下の懲役及び三十万円以下の罰金に処する。

少年法
第37条(公訴の提起) 
次に掲げる成人の事件については、公訴は、家庭裁判所にこれを提起しなければならない。
一 未成年者喫煙禁止法(明治三十三年法律第三十三号)の罪
二 未成年者飲酒禁止法(大正十一年法律第二十号)の罪
三 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第五十六条又は第六十三条に関する第百十八条の罪、十八歳に満たない者についての第三十二条又は第六十一条、第六十二条若しくは第七十二条に関する第百十九条第一号の罪及び第五十七条から第五十九条まで又は第六十四条に関する第百二十条第一号の罪(これらの罪に関する第百二十一条の規定による事業主の罪を含む。)
四 児童福祉法第六十条及び第六十二条第六号の罪
五 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十条及び第九十一条の罪
2 前項に掲げる罪とその他の罪が刑法(明治四十年法律第四十五号)第五十四条第一項に規定する関係にある事件については、前項に掲げる罪の刑をもつて処断すべきときに限り、前項の規定を適用する。

そこで、売防12と児福との罪数については、観念的競合(最高裁S37.4.26)。

刑法第54条(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

で、どっちが重いのかを比較するのは刑法10条

第10条(刑の軽重)
主刑の軽重は、前条に規定する順序による。ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。
2 同種の刑は、長期の長いもの又は多額の多いものを重い刑とし、長期又は多額が同じであるときは、短期の長いもの又は寡額の多いものを重い刑とする。
3 二個以上の死刑又は長期若しくは多額及び短期若しくは寡額が同じである同種の刑は、犯情によってその軽重を定める

 売防12も児福も10年なので、10条3項で犯情で決まる。犯情で事物管轄が決まるということ。
 示談とかで途中で犯情の軽重が入れ替わると管轄が動く(管轄違)という怪しい規定。

「05年3月〜06年6月に同市内などの当時18〜24歳の女性7人を売春させた。また、18歳未満と知りながら05年7月〜06年2月、少女2人を売春させるなどした。」という事実を前提にすると、児福だけでもそれくらいの量刑があるし、最近福祉犯は厳しいわけだから、児福の犯情の方が重いとも言えそうだ。怪しい。
 ということで、児童福祉法違反事件については、常に事物管轄を疑えということです。