管理者は、それ系の画像の投稿を呼びかけていてそれに応じた通りすがりの者が違法画像を投稿した場合に共謀共同正犯にした東京地裁の判決をもらいました。
名古屋も事案は同じなんですけど、弁護人は百聞は一見にしかずということで、法廷で「仮想違法画像を画像掲示板に投稿する模様」というビデオ(無音ですよね。)を再生して、「伝統的な共謀共同正犯概念に従えば共謀はない」という主張をしました。
東京地裁事件の弁護人立証は不明。
東京地裁H18
前記(1)認定の事実関係によれば,被告人は,本件掲示板を開設するに当たり,本件で問題になっているような「違法画像」が投稿されるであろうことを認識しながら,これを容認したものであることが明らかであり,その結果被告人の認識内容に照応する多数の「違法画像」が投稿されるに至ったものであるから,被告人につき,故意が成立するための認識に欠けるところはなかったものと認められる。
(3)また,前記(1)認定の事実関係を前提に判断すると,披告人は,自らの利益のために,未成年者には見せられないような「違法画像」の投稿を容認慫慂したものであり,しかも,被告人による本件掲示板の管理行為が本件各犯行の不可欠の前提をなすものであったことからすれば,被告人に正犯意思があったことは明らかである。そして,本件「違法画像」を投稿した者において,本件掲示板を開設・管理する者が「違法画像」の投稿を呼びかけていることを認識しつつ,これに呼応して本件各犯行を敢行したものであったことからすると,そこに共同正犯成立の前提となる意思の連絡ないし相互利用補充関係を肯定することも可能である。したがって,披告人は,本件「違法画像」を投稿した者とともに,共同正犯の責任を負うものといわなければならない。
4以上の次第で,被告人について,××罪の共同正犯が成立するものと判断した。
名古屋地裁H18
1検察官は,判示第2の所為について,被告人と一覧表2記載の各投稿者(以下「投稿者」という。)との間に,××罪についての共同正犯が成立すると主張した。
2しかしながら,判示第2の事実について取り調べた各証拠によれば,同事実において被告人の行った行為は,上記のとおり,を掲載した電子掲示板を開設していた被告人が,投稿者らがこの掲示板に「違法画像」を送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたというものである。そして,同証拠によれば,被告人と各投稿者らとの間には,上記の内容の電子掲示板が開設されていることの認識と,これに対して投稿者らが「違法画像」を送信して記憶蔵置させ,これがインターネットを通じて不特定の第三者に閲覧可能であることを相互に認識していたにとどまり,具体的に相手の行為を利用して各投稿者が送信蔵置させた「違法画像」を不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡があったとは言い難い。
3したがって,判示第2の各犯行について,被告人が共同してこれを実行したというためには,被告人の,上記投稿者らがこの掲示板に「違法画像」を送信して記憶蔵置させ,インターネットを通じて不特定の第三者が閲覧可能な状態にあることを知りながら,これを削除等しないまま蔵置を続けたという行為が,これを怠れば自ら積極的に××したと評価されるほどに,強度の削除すべき義務に違反する行為と言えることが必要と解される。
(1)この点について上記被告人の役割について検討すると,確かに被告人は,上記電子掲示板を開設し,インターネットを通じて不特定の第三者がこれに「違法画像」を送信して記憶蔵置することを可能にしたものであり,これを管理しうる立場にあったのであるから,不特定の第三者にこのような画像が閲覧されることを防止するために,これを削除する等して管理すべき義務があったというべきものである。
(2)そこで,更に進んで,これを怠ったことが,投稿者と共同して「違法画像」を××したと評価し得るほどに強度の違法性を有するといえるかについて検討を加える。あ上記のとおり,被告人と投稿者らとの間には,具体的画像を不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡がないことからすれば,投稿者と被告人との間で,相互に相手方の行為を利用して「違法画像」を××しようとの意思が形成されていたとは言い難い。
そうすると,被告人が,投稿者から上記掲示板に「違法画像」に該当する画像が投稿されたことを認識したのに,これを削除しなかったことをもって,自ら不特定多数の者に対し××したと同一に評価されるほどに強度の削除義務違反があったと合理的疑いを入れる余地なく認定することはできない。
いしかしながら,上記の被告人の電子掲示板開設に伴う管理義務を考慮すると,判示第2記載の行為は××行為を幇助したものと認めるのが相当である。
通りすがりに違法画像を投稿された場合、学説・裁判例としては
- 掲示板設置行為を単独正犯とする(横浜地裁→東京高裁→上告中)
- 違法画像を認めて削除しないのを単独正犯する(学説)
- 違法画像を認めて削除しないのを共同正犯する(東京地裁・名古屋地裁)
- 違法画像を認めて削除しないのを従犯する(名古屋地裁→控訴中)
4通りあるんですよ。
単独正犯と共同正犯は処断刑期は変わらないですが、正犯と従犯の差は大きいです。必要的減軽なのでエライ違う。
判例がぶれているときは上級審で決めてもらうしかないですが、上訴中の
違法画像を認めて削除しないのを従犯する(名古屋地裁→控訴中)
掲示板設置行為を単独正犯とする(横浜地裁→東京高裁→上告中)
に期待するしかないようです。
プロバイダ業界としては、判例を見極めてから対応考えるようで、奥村弁護士を応援するという動きはありません。