児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<児童ポルノ>DVDをタイから日本に輸出 30歳男逮捕

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050908-00000127-mai-soci
 そんなの、以前は販売罪で検挙してませんでした?
 適用法令に国外犯がなく、わいせつ図画販売も成立するとされているので、販売罪の実行行為の一部が国内にあると考えたものと解される。

神戸地裁H13.8.27

 販売罪と販売目的輸出罪の関係ですね。
 目的手段の関係だから、牽連犯でいいんじゃないですか(嘘)?

 無理に輸出罪にしなくても、販売罪・提供罪でもいいような気がします。国外犯捜査はいろいろ面倒じゃないですか。
 提供の実行行為の一部が国内にあるわけでしょ。

第7条(児童ポルノ提供等)
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

ちょっとわからないから、参考文献を挙げる。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」
「本邦に輸入」とは、我が国の領域内に搬入することをいいます。
「本邦から輸出」とは、我が国の領域外に搬目出することをいいます。
「外国に輸入」とは、外国の領域内に搬入することをいいます。
「外国から輸出」 とは、外国の価域外に搬出することをいいます。
第6項で、外国に輸入すること及び外国から輸出することを処罰しているのは、東南アジアで児童ポルノを製造しそれを欧米に輸出するといった実情に対処するためです。ただ、日本国外で行われる犯罪ですので、その処罰は、日本国民による犯罪のみを対象とすることとしています。外国に輸入すること及び外国から輸出することは、外国でしか実行行為ができませんが、このような犯罪については、「者」と規定すると外国人も対象とされると解釈されますので、「日本国民」と規定しました。


木村光江「児童買春等処罰法の運用と課題」(「犯罪と非行」124、P119〜)

安冨潔「特別刑法の諸問題」捜査研究No,609
「外国に輸入」とは、外国の領域内に「児童ポルノ」を搬入することをいい、
「外国から輸出」とは外国の領域外に「児童ポルノ」を搬出することをいう。
この罪は、国外で行われる犯罪であるので、その処罰は日本国民による犯罪のみを対象としている。
なお、第七条は、国民の国外犯( 一〇条) の適用を受ける。したがって、例えば、日本国民が、東南アジアで「児童ポルノ」を製造し、製造した国からヨーロッパのある国に送り、その国で販売すれば、児童ポルノ販売罪(七条一項) として、さらに頒布、販売、業としての貸与又は公然陳列の目的があれば児童ポルノ製造罪(七粂二項) の国外犯( 一〇条)、外国からの輸出入罪(七条三項) として処罰される。


関税法違反については輸入未遂罪(109条3項)

関税法
第2条  この法律又はこの法律に基づく命令において、次の各号に掲げる用語は、当該各号に掲げる定義に従うものとする。
一  「輸入」とは、外国から本邦に到着した貨物(外国の船舶により公海で採捕された水産物を含む。)又は輸出の許可を受けた貨物を本邦に(保税地域を経由するものについては、保税地域を経て本邦に)引き取ることをいう。
二  「輸出」とは、内国貨物を外国に向けて送り出すことをいう。

第109条  関税定率法第21条第1項第1号から第3号まで(輸入禁制品)に掲げる貨物を輸入した者は、五年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2  関税定率法第21条第1項第4号又は第5号に掲げる貨物を輸入した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3  前2項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者又はこれらの項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。

覚せい剤輸入罪の場合は陸揚説

最高裁判所第3小法廷決定平成13年11月14日
 所論にかんがみ、職権で判断すると、覚せい剤を船舶によって領海外から搬入する場合には、船舶から領土に陸揚げすることによっ
て、覚せい剤の濫用による保 衛生上の危害発生の危険性が著しく高まるものということができるから、覚せい剤取締法四一条一項の
覚せい剤輸入罪は、領土への陸揚げの時点で既遂に達するとするのが相当であり(前記第一小法廷判決参照)、これと同旨の原判断
は相当である。所論の指摘する近年における船舶を利用した覚せい剤の密輸入事犯の頻発や、小型船舶の普及と高速化に伴うその行動
範囲の拡大、GPS(衛星航法装置)等の機器の性能の向上と普及、薬物に対する国際的取組みの必要性等の事情を考慮に入れても、
被告人らが運行を支配している小型船舶を用いて、公海上で他の船舶から覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬人した場合に、
覚せい剤を領海内に搬入した時点で前記覚せい剤輸人罪の既遂を肯定すべきものとは認められない。

 児童ポルノ輸出罪の既遂時期については規定がない

追記
 輸出の定義からすると、外国からの輸出罪は実行行為が全て国外(国外犯)ですから、外国官憲からの捜査資料が届くのに、数ヶ月かかるはずですね。
 関税法の輸入未遂罪で逮捕してしまうと、待ってる間に、勾留切れてしまいます。しかも、提供罪(販売罪)とは一罪となる可能性もあるから、果たして、輸入罪で有罪とできるのかに注目しています。