量刑を調べようにも事件特定で手こずっているわけですが、紳士的に、準抗告なんていわずに、丁重に問い合わせて見ましょう。
奥村弁護人事件は、判例評釈で散々ネタにされているのだから、その義理は判例で返してもらおう。
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥とか末代までの恥とかいうじゃないですか。
しかし、窓口がたくさんあるので、とりあえず、件数が多そうなところや事件や相談が来ているところ、件数が少なすぎるところから着手します。
一斉調査をかけると、役所の体質としては、各保管検察官が、おそらく対応を中央に相談するんじゃないかと思います。
別に、保管記録を盗みに入ることはないわけで、閲覧とか謄写するだけなので、すんなりお願いしますよ。≦(._.)≧
しかし、東京なんて200件くらいあるらしくて、謄写も大変です。
他の罪名についても、弁護士会の事務方で手分けしてやれば、量刑一覧ができそうなものですが。
平成 年 月 日
地方検察庁記録係保管検察官御中
弁護士 奥 村 徹
御依頼
拝啓
突然のお便りで失礼致します。
別紙記載の照会事項・照会理由によって、刑事確定訴訟記録法による記録閲覧の手掛かりを得たいので、御庁保管検察官が刑事確定訴訟記録法に基づき保管している刑事確定記録のうち、罪名に「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が含まれる事件で、公判請求された事件全部について、保管記録の特定に必要な事項を御回答下さいますようお願い致します。
なお、保管記録本体には被告人氏名・判決等の個人情報が記載されていますが、刑事確定訴訟記録法によれば原則公開とされているところであって、当職は必ずしも被告人の氏名は回答を求めていないので、特段の手続(弁護士法23条の2)によらなくても、保管記録の特定に最低限必要な事項については公開されるものと考えています。
最高裁の情報によれば該当事件は○○件とのことですが、それにかかわらず全件の閲覧を請求する予定です。御手数ですが、よろしくお取り計らい下さいますようお願いいたします。
敬具照会事項
御庁保管検察官が刑事確定訴訟記録法に基づき保管している刑事確定記録のうち、罪名に「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が含まれる事件で、公判請求された事件全部について、保管記録の特定に必要な事項(被告人氏名・検番・保管番号(記録事務規程2条)・判決確定日など)
但、平成11年11月1日から、回答日までのもの。(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は平成11年5月26日法律第52号として公布され、平成11年11月1日に施行された。)
申出の理由からすれば、当職と御庁との間において、保管記録の閲覧に必要な程度まで特定できるのであれば被告人氏名の回答は必ずしも必要ありません(適当な記号や番号で仮名処理して頂いて結構です)。
照会の理由1(弁護活動)
当職は、下記事件の弁護人です。
大阪地方裁判所
最高裁判所第三小法廷
福岡高等裁判所那覇支部
最高裁判所第一小法廷
上記事件を弁護するにあたり、量刑・法令適用・訴因特定について同種事案の判決書等を調査する必要が生じました。
そこで最高裁から「通常第一審における児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の終局判決」の一覧表を得ました。
次に、最高裁からの回答(裁判所事件番号)を基にして児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律違反事件の量刑を調べるため、幾つかの検察庁の記録係(保管検察官)に刑事確定訴訟記録法による保管記録の閲覧請求をしたところ、「罪名で検索すると最高裁の回答書よりも多くの記録がヒットする。被告人氏名又は検番が判らないと事件番号だけでは特定できない」と回答されました。
そこで刑事確定訴訟記録法による保管記録の閲覧請求のために、保管記録の特定事項を照会するものです。
お教え頂いた事項につきましては、保管記録の閲覧にしか使用致しませんし、閲覧して知り得た記録内容についても、この事件処理以外には使用致しませんので、ご回答頂けますようお願い申し上げます。なお、最高裁からは、下記の○○件と回答を受けている。○○件というのも信じがたいところである。
照会理由2(学術研究)
請求者は刑法学会会員であって、同法についての研究者であり、
商事法務 サイバー法判例解説
季刊刑事弁護№30 児童ポルノの罪の訴訟法的検討
季刊刑事弁護№35 児童買春弁護人FAQ
情報処理学会研究報告 インターネット上の児童ポルノの擬律
2003(17) 2003.2.22 p11〜18
という論文を発表しています。刑法学会でも発表している。上記最高裁(平成15年あ第1348号)事件の原判決における没収に関する判示を紹介したものです。
日本刑法学会関西部会平成16(2004)年度夏期例会
電子媒体上の「他人の」電磁的記録の没収について
奥村 徹氏(大阪弁護士会)保管検察官の身近にある雑誌としては、
研修634号
研修651号
研修676号
警察学論集56巻2号
などに紹介された事例の弁護人として、「実務上参考になる」判決例を提供しています。
最近では、捜査研究04.1月628号「第31回ハイテク犯罪の捜査」(大橋検事)において、上記最高裁(平成15年あ第1348号)事件の原判決(東京高裁事件)が紹介されています。
また上記研修676号の事案は、主に当職担当事件の事案を組み合せたものであって、紹介されている裁判例は専ら当職担当事件の判決です。これは、当職が保管検察官が確定判決を閲覧させ運用状況を知る→弁護人となれば主張・立証に用いる→判決を得る→「研修」「捜査研究」「警察学論集」に取り上げられる→第一線の検察官・警察官が学習する→申請者が確定記録の閲覧によって確認する、というフィードバックとなっており、これによって、理論も実務も前進していることはいうまでもありません。
当職は学術研究活動として確定記録の謄写を経て運用状況を知り、弁護人となればそれを実際の事件処理に活かして、「捜査研究」「研修」に裁判例という資料を提供しているのであって、確定記録の閲覧は正当な研究活動に他ならないと考えます。
特に、最高裁の回答によれば、同法の事件数には地域性(沖縄県に多い。鳥取・奈良は僅少)が見られるようである。
最高裁の情報の信用性も含めて、極めて興味深い研究対象となる。なお、当職の活動につき刑事確定訴訟記録閲覧不許可処分に対する準抗告が認められたことがあり、研究目的が認定されています。
刑事確定訴訟記録閲覧不許可処分に対する準抗告申立事件
【事件番号】横浜地方裁判所川崎支部決定/平成15年(む)第143号
【判決日付】平成15年8月14日
【判示事項】児童買春等処罰法被告事件の弁護人が刑事確定訴訟記録法に基づいて行った、同種事件の判決書に係る閲覧請求を不許可とした検察官の処分が取り消された事例
【参照条文】刑事確定訴訟記録法4−2 刑事訴訟法53−1
【参考文献】判例タイムズ1151号316頁参考
1 保管記録にかかる被告人のプライバシーについて
申出の理由からすれば、他の事項で保管記録の閲覧に必要な程度まで特定できるのであれば被告人氏名は必ずしも必要ない。
検番・保管番号・判決確定日であれば、一般には個人特定不可能であるから、プライバシー侵害はない。2 事件特定の程度について
刑事事件の確定記録は刑事確定訴訟記録法により第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(「保管検察官」)が保管しているところであるが、学術研究目的にも閲覧させることが予定されている。制定当時の国会答弁でもそのように説明されている。
108国会 - 衆議院法務委員会 - 5号 昭和62年05月26日
ところで、学術研究のためには、例えば、「××罪の判決書」「○○罪の実刑判決」という程度の限定で記録を閲覧して比較検討することも必要となるが、前提として、学術研究目的に利用できるように分類されていることが必要であって、そうなっているはずです。
押切謙徳ほか「注釈刑事確定訴訟記録法」に解説されているように、事件特定に御配慮頂けるものと期待しています。