児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事準拠法の問題

(1)はじめに
 本件著作権は本国法に基づくものであるから犯罪の客体の権利関係は、本国法で決まる。
 これはわが国の法例や裁判例にも合致する。

(2)法例
 法例によれば、著作者は通常自国法で成立すると考えているから、法例7条1項により、本国地法で成立する。効力も本国地法である。
 また、著作権については有体物ではないし、無方式主義であるから、法例10条は適用されない。
法例
第7条 法律行為ノ成立及ヒ効力ニ付テハ当事者ノ意思ニ従ヒ其何レノ国ノ法律ニ依ルヘキカヲ定ム
2 当事者ノ意思カ分明ナラサルトキハ行為地法ニ依ル第8条 法律行為ノ方式ハ其行為ノ効力ヲ定ムル法律ニ依ル
2 行為地法ニ依リタル方式ハ前項ノ規定ニ拘ハラス之ヲ有効トス 但物権其他登記スヘキ権利ヲ設定シ又ハ処分スル法律行為ニ付テハ此限ニ在ラス 
第9条 法律ヲ異ニスル地ニ在ル者ニ対シテ為シタル意思表示ニ付テハ其通知ヲ発シタル地ヲ行為地ト看做ス
2 契約ノ成立及ヒ効力ニ付テハ申込ノ通知ヲ発シタル地ヲ行為地ト看做ス 若シ其申込ヲ受ケタル者カ承諾ヲ為シタル当時申込ノ発信地ヲ知ラサリシトキハ申込者ノ住所地ヲ行為地ト看做ス 
第10条 動産及ヒ不動産ニ関スル物権其他登記スヘキ権利ハ其目的物ノ所在地法ニ依ル
2 前項ニ掲ケタル権利ノ得喪ハ其原因タル事実ノ完成シタル当時ニ於ケル目的物ノ所在地法ニ依ル

 著作権の民事関係(特に準拠法の問題)では法例は重要な法源である。著作権だから法例は排除されるという理屈はない。「全法秩序」を考慮する必要がある。

(3)刑事裁判例
 刑罰法規の前提となる法律関係については、法例や国際私法で解決するのが判例である。
【事件番号】神戸地方裁判所判決/昭和55年(わ)第808号,昭和55年(わ)第828号
【判決日付】昭和57年3月29日
【判示事項】売主を内国法人、買主を外国法人とする売買契約が締結された船舶を公海上で沈没させた事案につき、右船舶はいまだその所有権が売主に留保されているから刑法一条二項の「日本船舶」に当たるとして、艦船覆没罪が成立するとされた事例
【参照条文】刑法1−2
 刑法126−2
 船舶法1
 法例(明治31年法律第10号)10
 民法176
【参考文献】最高裁判所刑事判例集37巻8号1243頁
 刑事裁判月報14巻3〜4合併号282頁
 判例タイムズ476号233頁
 判例時報1060号155頁
【評釈論文】ジュリスト801号111頁
3 そこで、右売買契約による第三伸栄丸の所有権移転の有無について考えるに、本件は国際間の売買であるから、準拠法、すなわち、どの国の法律によるべきかが問題となるが法例第一〇条によれば、動産及び不動産に関する物権その他登記すべき権利は、その目的物の所在地法による旨規定されているところ、船舶については、現実的所在地の法をもつて準拠法とすれば、常に変動して安定を欠くため、船舶の登記地法をもつてこれに代えるべきものと解するのが相当である。
従つて、第三伸栄丸の場合、船舶登記のなされている日本法が準拠法であるが、わが国では船舶所有権の譲渡は当事者間の無方式な合意によつてなしうると解されており(石井照久・海商法一二八頁等)、所有権移転の時期は民法第一七六条により律せられることとなる。
そこで売主の所有である特定物の売買においてはその所有権の移転が将来になさるべき特約がないかぎり、買主への所有権移転の効力は、直ちに生ずると解すべきが原則ではあるが、民法第一七六条を更に検討するならば、同条は当事者の意思表示、すなわち売買契約の内容次第で所有権移転の効力発生時期も決まることを意味するから、本件においても当該法律行為全体を解釈することによつて所有権移転時期を決すべきものと思料する。


事件番号】大阪高等裁判所判決/昭和28年(う)第855号
【判決日付】昭和29年5月4日
【判示事項】南鮮人間における母方の再従兄弟と親族相盗例適用の有無
【参照条文】刑法244
【参考文献】高等裁判所刑事判決特報28号125頁

検察官の控訴趣意について。
 按ずるに、原判決は、「被告人が昭和二十七年八月十六日頃当時同居先の大阪市生野区大瀬町一丁目六十番地平山善啓こと申仁善方で、またいとこ(六親等の血族)に当る同人所有の自転車一台を窃取したものである」との事実を認定し、これに対し、刑法第二百四十四条第一項前段、第二百三十五条を適用して、被告人に対し刑を免除する旨の判決を言渡した。しかし、記録によると、被告人及び被害者申仁善は互に母方の再従兄弟の間柄にあるのであるが、共に韓国(南鮮)人であるから、その親族の範囲その他の親族関係は、その本国法である韓国の法令により定めらるべきものであることは、法例(明治三十一年勅令第百二十三号)第二十二条の明定するところである。ところで、終戦後の韓国(南鮮)では、その親族関係等を規律する法令としては、終戦前に存した朝鮮民事令第十一条の如き成文の法令が未だ施行せられており、同条によると韓国人の親族関係等は同国の慣習によるのであつて、その慣習によると、母方の再従兄弟は親族の範囲から除外されているところである(法務省刑事局刑事第九三九一号、昭和二九、四、九附法務省刑事局長回答参照)。すると、被告人は、本件被害者申仁善とは、同居する母方の再従兄弟であり、従って慣習上その六親等の血族には相違ないが、その同居の親族には当らないものといわなければならないから、本件につき刑法第二百四十四条第一項前段、第二百三十五条を適用し、被告人に対し刑の免除を言渡した原判決には、法令の適用を誤つた違法があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由がある。原判決は破棄を免れない。