児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

無資格で入れ墨の彫り師 医師法違反では不起訴=広島

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20100927/1285536967
の結末。。
 一事不再理
 青少年へのいれずみ罪が再逮捕になってるし。
 広島県警が罪数処理に無頓着だからこうなる。
 再逮捕時点で地元の弁護士が気づけばもっと早く釈放されたと思います。
 青少年条例の捜査で営業性に気づいた段階で、医師法違反に切り替えて公判請求して、余罪の無資格医業を訴因変更で追加すれば、全部処罰できた。

無資格で入れ墨の彫り師 医師法違反では不起訴=広島
2010.10.16 読売新聞
 医師免許を持たずに客に入れ墨をしたとして、医師法違反(無資格医業)容疑で再逮捕された広島市安佐南区の彫り師男性(51)について、地検は15日、不起訴にした。
 地検関係者によると、男性は広島市中区で経営する入れ墨施術店で、無職少女(15)に入れ墨をしたとして、9月2日に県青少年健全育成条例違反容疑で逮捕された。さらに男性は2007年3月以降、この少女を含む計4人に入れ墨を施し、広島南署が「無免許で医療行為を繰り返している」と判断。9月24日、男性を医師法違反容疑で再逮捕した。
 一方、男性は同条例違反で9月22日に略式起訴され、広島簡裁が罰金30万円の略式命令を出し、確定。地検は、再逮捕容疑の中に刑が確定した少女への入れ墨行為を含むため、不起訴にした。
 同署は「医師法違反で立件できるとして捜査していたが、残念」としている。

 「残念」じゃなくて、罪数処理に無知だったために有罪にできる事件を逃したことを恥じないと。
略式起訴した検察官も恥ずかしい。

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例と性犯罪

 刑法優先ですかね。
 行為者が県内にある場合に適用されるようで、被害青少年は県内県外でもいいようです。

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例の解説h1
〔要旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしたり、わいせつな行為をさせることを禁ずるものであるほか、これらの行為を教え、見せることを禁ずる旨を規定したものである。
〔解説〕
1 本条は、刑法の規定による「暴行」、「脅迫」、「心神喪失」、「抗拒不能」等を伴わない少年に対するみだらな性行為(いん行)又はわいせつ行為、すなわち刑法をはじめ関係実体法令だけでは規制できない部分を、青少年の保護という面からとりあげて規制したものである。
2 「何人」とは、県民はもとより旅行者、滞在者等現に本県内にいるすべての自然人を示し、性別、年令を問わない。もっとも、行為者が青少年である場合には、第29条の規定により免責されることになる。
3 「みだらな性行為」 とは、「いん行」と同義で、一般社会人からみて不純とされる性行為をいい、結婚を前提としない単なる欲望を満たすため、あるいは好奇心からのみ行う性行為がこれにあたる。いわゆる売春・買春行為も含まれる。又、不純であるかどうかは、あくまでも社会通念上判断されるべきものである。

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例の「当該青少年の年齢を知らないことを理由として第1項又は第2項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。」

秋田県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例の解説h1

第5項の規定は、本条例の規定に違反する行為を行った者は、青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れないことを規定したものであり、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をさせた者や、有害行為に対する場所提供又は周旋した者は、青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れないことを限定したもので、営業者等にその相手方が青少年であるか否かその年齢を確認することを義務づけたものである。
「当該青少年の年齢を知らないことに過失がない」とは、青少年に年齢、生年月日、えと等を尋ね又は身分証明書の提出を求める等客観的に妥当な確認措置をとったにもかかわらず、青少年自身が年齢を偽り、又は虚偽の証明書を提出する等、営業者及び成人の側に過失がないと認められる場合をいう。
なお、この項の規定により、違反者は自ら過失がないことを挙証する責任を有する。

広島県青少年健全育成条例の解説の「いれずみ」

 入れ墨 刺青 いれずみ の事件はどうなったんでしょう?

広島県青少年健全育成条例の解説
(いれずみを施す行為の禁止)
第三十条何人も、正当な理由がある場合を除き、青少年に対し、いれずみを施し、受けさせ、又は周旋してはならない。

〔要旨〕
身体から永久に消えず、将来に禍根を残すこととなるおそれのあるいれずみを青少年に施すことを禁止するものである
〔解説〕
一「いれずみ」とは、肌に針、小刀等で傷をつけ、そこに墨、朱等の色料を刺入して着色し、絵画、文字等を表わしたものをいい、単に皮膚の上に描く行為は含まない。
二「正当な理由がある場合」とは、医学、整形、美容等のために行う場合で、客観的に青少年の健全な育成を阻害しないと明白に判断することができる場合に限る.
三「施し」とは、いれずみを自ら施す行為であり、「受けさせ」とは第三者をしていれずみを施させる行為をいい青少年の意思の有無を問わない

最決H22.3.16の解説(判タ 1324号92頁)

 この事件の弁護人は、札幌高判の存在にはよく気づいたと思います
 最決H21.10.21が破棄せずに半端な結果になったので、こういう論点まで出てきたということです。

[解説]
 1 本件は,被告人が,被告人方に住まわせていた被害児童に対する傷害罪,被害児童に淫行をさせたという児童淫行罪,その姿態を撮影した画像により児童ポルノを製造した児童ポルノ製造罪という事案である。
 1審においては事実関係に争いがなく,1審判決は被告人を懲役3年6月に処した。被告人は,量刑不当を理由に控訴したが,控訴審判決はこれを排斥し,控訴を棄却した。これに対して,被告人が上告し,上告趣意において,本件の控訴審判決は,児童淫行罪と児童ポルノ製造罪とを併合罪の関係にあると判示しているところ,児童淫行罪と児童ポルノ製造罪との罪数関係については,控訴審判決時には,これが観念的競合の関係に立つとする札幌高判平19.3.8高刑速(平19)3頁があり,本件の控訴審判決が上記札幌高裁の判決と相反する判断をしたとする判例違反の主張をした。しかし,本件の控訴審判決後,上記札幌高裁判決の上告審である最一小決平21.10.21刑集63巻8号1070頁は,上記の罪数関係は併合罪である旨の職権判示をし,札幌高裁判決を破棄こそしなかったものの,その罪数判断を否定し,札幌高裁判決は判例性を失った。
 このように,本件の控訴審判決後ではあるが,引用された高裁判決の判示部分が自身の上告審で否定された場合,当該引用判例は刑訴法405条3号にいう「判例」に当たるのか否かが問題とされたものである。
 そして,本決定は,「上告趣意のうち,判例違反をいう点は,所論引用の札幌高等裁判所の判決は,当裁判所の決定(平成19年(あ)第619号同21年10月21日第一小法廷決定・刑集63巻8号1070頁)によりその罪数判断が否定されているから,刑訴法405条3号にいう判例に当たら」ない旨職権で判示し,上告を棄却した。
 2 まず,刑訴法405条の判例違反の基準時の考え方については,基本的には原判決時説と上告審裁判時説とが対立している。両説の違いをみると,本件のような場合,原判決時には,最高裁決定はなく札幌高裁判決が存在するわけであるから,原判決時説では,基本的に同判決は刑訴法405条3号の「判例」に該当することになる。これに対し,上告審裁判時説では,その後最高裁判例によって札幌高裁判決の判断が否定され上告審の裁判時には判例性を失っているから,刑訴法405条3号の「判例」には当たらないということになる。
 この点につき,最大判昭30.12.21刑集9巻14号2912頁,判タ57号40頁は,控訴審判決時に既に存在する高裁判例に違反すると主張したが控訴審判決後にされた別事件の最高裁判例により当該高裁判例が変更された場合に関し,原判決時説こそ明示しなかったものの,判決理由中において「刑訴410条2項の趣旨に従い,原判決を維持する」と判示しており,基本的に原判決時説を採用したものと解されている。そうすると,一見,札幌高裁判決は,刑訴法405条3号の「判例」に該当するようにも解されるが,上記最大判は,確定した高裁判例が,別事件の最高裁判例によって変更された場合についてのものであり,未確定の高裁判例が,その上告審において異なる法律判断が示され否定された場合とは場面を異にしていて,そのような場合まで射程とはしていない。
 むしろ,この点については,未確定の判例における判例性は不安定かつ脆弱なものであるから,確定した判例の場合と全く同様に扱う必要はなく,最高裁の法令解釈を統一するという目的からしても,刑訴法405条3号にいう「判例」といえるためには,原判決時に判例が存在することに加え,高裁判例の判断部分がその上告審において否定されていないことが必要であり,当該判断が否定された場合は,将来に向かって適法な上告理由は消滅したものとして,もはや刑訴法405条3号の「判例」に当たらないと考えることが相当なように思われる。実質的にみても,最高裁判例により,既に高裁判例の判示部分が明示的に否定されて判例性を失っているのに,わざわざそれを原判決時における有効な判例として取り扱うことに合理性があるとも思われない。なお,原判決時に存在する高裁判決に違反すると主張したが原判決後に当該高裁判決が上告審において破棄された場合は同判決は刑訴法405条3号の「判例」に当たらないと判示した最一小決昭51.9.14刑集30巻8号1611頁,判タ341号302頁があるが,その理由は,高裁判決自体が破棄されて判決そのものの言渡しがなかったことになることから,刑訴法405条3号の「判例」に当たらないとされたものと説明されている。
 本決定は,以上のような考えのもと,先にみたような判示をしたものと推察される。
 3 本決定は,刑訴法405条3号の「判例」の意義に関し,新たな判断を付け加えるものであり,上告趣意において判例違反の主張をするに際し参考となると思われるので紹介する。