児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

娘に売春強要の母に有罪(静岡地裁H21.7.9)

 家庭内の児童淫行罪の量刑は重いです。
 被害児童は元通りになるのかというと、難しいですよね。

2009.07.09  静岡新聞
 実の娘に売春させていたとして、児童福祉法違反などの罪に問われた県西部のスーパー従業員の母親(56)の初公判が9日、静岡地裁(本間敏広裁判官)で開かれた。母親は起訴内容を認めた。公判は即日結審し、検察側は懲役3年を求刑。本間裁判官は懲役3年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 判決理由で本間裁判官は「犯行は悪質で刑事責任を軽くみることはできない」としながらも、「公判で反省の弁を述べている。今回に限って自立の機会を与える」と述べた。

児童ポルノ画像所持、原則禁止で合意

 もともと実質的な差はありませんでしたが。
 意外とあっさり。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn/20090710/20090710-00000011-jnn-pol.html
9日夜の協議では、自民党公明党が求めていた児童ポルノ画像などの所持を原則禁止することで大筋合意しました。
 民主党は意図せずに所持していた場合にも罪になる恐れがあるなどと主張していましたが、こうした懸念を踏まえ、捜査機関に対して禁止行為についての立証努力を尽くすよう求める条文を盛り込みました。


 なんか報道=広報になっているようですね。

児童ポルノ禁止法の「修正協議」は継続中
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/8fe6ba919f8078904b3931b63d6b9b54
またもや「児童ポルノ禁止法」の「与野党合意」が成立したという情報が流れた。具体的にはTBSのニュースが報道したものだが、実際はどうだったのかと民主党の担当者に聞いてみると、「持ち越しになった。まだすべて合意したという段階ではない」とのことだった。ならば、なぜ「与野党合意」のニュースが流れたのかと聞くと、与党側が記者レク(ブリーフィング)をしたからではないかとのことだ。

立法目的に徴すれば,同項3号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは,その撮影目的や撮影された内容等に照らし,一般人を基準として,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるものと解すべきである(仙台高裁H21.3.3)

 これは公刊物に掲載されていないので、国会議員にも届いていない判例です。
 強制わいせつの犯人というのは、自分の性的嗜好で撮ってるわけですが、性的虐待の記録が残ってしまうわけですが、法律上の児童ポルノになってるかどうかというと一般人基準で考えるから必ずしもそうとは言えないということで、仙台高裁はそれでいいというのです。

仙台高裁H21.3.3
児童ポルノの定義規定である児童ポルノ法2条3項において,同項3号が「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激させるもの」と規定し,「性欲を興奮させ又は刺激一部をするもの」という要件を付加しているのは,衣服の全部又は着けない姿態を撮影したものの中には,家庭等における児童の日常生活の一場面を撮影したものや学術研究目的で撮影されたものも含まれるところ,これらについては社会的に是認されるものであることにかんがみ,これらを除外するためである。
 このような立法目的に徴すれば,同項3号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは,その撮影目的や撮影された内容等に照らし,一般人を基準として,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるものと解すべきである。
 そうすると,本件起訴にかかる画像は,いずれも被告人が自己の性的し好を満足させる目的で,被害児童の陰部を撮影したものであり,しかもそれは性器を接写するなどして,殊更これを強調する内容となっているから,一般人を基準として判断して,見る者の性的興味に訴えようとするものと認められるのであって,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に当たるものということができる。
 所論は,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件は,客体の要件であって,撮影目的を考慮するのは不当であるなどと主張するが,客体を定める要件であっても,考慮する要素を内容等の客観的要素に限定しなければならないわけではなく,撮影目的といつた主観的要素を考慮することもできるというべきである。

 これだと、同じ構図でも、児童ポルノであったり、なかったりしますよ。

芸術的価値のあるものであっても,これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えない(京都地裁H14.4.24)

 京都地裁にこんな判決もありますよ。未公開裁判例
 伝統的な考え方です。

京都地裁H14.4.24
6 弁護人は,前記「A」,「B!」,「C」の各作品は芸術作品であるから児童ポルノに該当しないと主張する。
 しかしながら,芸術的価値のあるものであっても,これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えないから,弁護人の主張は,その余について判断するまでもなく理由がない。

 古川判事の単独事件でした。
 いま、大阪高裁に持ち込んでこう判示するかは疑問です。

脅してメールで送らせる強要+3項製造罪×数罪の量刑

 件数でみれば、実刑55%くらいでしょうか。
 でも、実刑判決にそれなりに実刑相当の事情があるわけで、そういう事情を比べないと、次の事件の量刑は計れないのです。
 この罪名の裁判例は全部で20件くらいなんですが、それを重い順に並べておいて、次にきた事件について、これより重い、これより軽いというふうに情状を比べて、適当なところに置くと、適正な量刑になります。

 小島先生の論文に量刑分布がありますが、こういう感じで裁判例を並べておく。

量刑判断における法定刑の役割 : 量刑スケールとしての法定刑の可能性 / 小島透 P36〜37
http://www.lib.kagawa-u.ac.jp/metadb/up/AN00064452/KJ00004726061.pdf

 同種事案が20件しかないときは、裁判官や検察官の手元に科刑状況の資料がないかもしれませんよね。
 児童ポルノ・児童買春なんてマイナーな罪の場合、そういうときに備えて、裁判例を集めているのです。そしたら、重くも軽くもないところを示せるから、被告人も納得できるでしょ。

COPINEスケール↑→

 Ethel Quayle ; Lars Loof ; Tink Palmer 他「子どもと若者の性搾取に反対する第三回世界会議」より 児童ポルノと虐待的画像で紹介されていました。
 これ弁論要旨に使えるなぁ


http://www.sentencing-guidelines.gov.uk/docs/advice_child_porn.pdf
THE PANEL’S ADVICE TO THE COURT OF APPEAL ON OFFENCES
INVOLVING CHILD PORNOGRAPHY

サンタフェ買ってきましたが・・・

 やっぱり、裸の写真がたくさんありますよね。
 理屈はともかく、これは現行法上児童ポルノにあたらないと国会議員とか法制局が言っているとすると、これはセーフなのか(確認中)。
 しかし、裁判所はサンタフェを事件として扱ってなくて、これまで有罪になった写真集の事件で、似たようなのは結構ありましたけど、それはしょうがないよなあ。起訴されたら有罪になってるので。

不祥事根絶対策専門家会議

 広島では「根絶、根絶」と看板は勇ましいのですが、効果は見えません。
 性犯罪・福祉犯については、加害者と被害者の聴き取りをやって欲しいですね。原因がわからないと、教委ができることがわからないと思うんですが。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090710-00000206-mailo-l34
教職員不祥事:根絶へ 外部専門家会議が初会合 委員から意見や提言 /広島
7月10日16時1分配信 毎日新聞
 ◇現状、今後の取り組みは……
 県内で相次ぐ教職員による不祥事根絶のために設置された外部専門家会議(座長・高橋超比治山大学長)の初会合が9日、県庁であった。会議は大半が非公開だった。専門家からは現状や今後の取り組みについて意見や提言があったという。【加藤小夜】
 会議の委員は6人で、座長以外のメンバーは、精神科医▽検察官▽警察官▽民間企業の人事責任者▽保護者。
 会議では、県教委が教員に対する懲戒処分状況やこれまでの不祥事防止策について説明。全国と比べて在職者に占める懲戒処分の発生率が2倍以上になっていることを報告した。また、委員による質疑や意見交換では「教員採用の段階で、ストレス耐性などを見抜く必要があるのではないか」「早期発見できる枠組みが必要」などの意見が出されたという。

http://news.rcc.jp/?i=OTEwMA==&
 参加するのは心理学者、精神科医、検察官、警察官、もみじ銀行の人事責任者、保護者の代表の6人です。
 会議は4回開催する予定で、県教育委員会は年内に提言を受け、対応策を学校や市町の教育委員会に通知するということです。(7/6 18:13)

http://www.pref.hiroshima.lg.jp/kyouiku/hotline/04file/fukumukiritu/fukumukenshu.html
教職員による不祥事の根絶
−県民からの信頼を失わないために−
 私たち地方公務員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき義務を負っています。したがって,勤務時間の内外を問わず,私たちの行為が,職員全体の信用を傷つけ,又は職全体の不名誉となるような場合は,本県の行政に対する県民の信託,信頼を裏切ることとなります。