被害児童をして撮影して送信させた者の罪責
脅迫の程度によっては「被害児童を道具とする間接正犯」もあると思いますが、脅迫も程度問題で、極々緩い脅迫では、道具になっていないから、間接正犯とは言えない(児童が正犯で、男は教唆)こともあるでしょう。
他方、被害児童は正犯たりえるかという疑問もありますよね。金沢支部なんかは被害児童が共犯になる可能性を認めていますが。
この辺も立法者が議論していないのでわかりませんね。裁判所も分からないけど、弁護人も被告人もわからないので、とりあえず有罪にしている感じです。
大阪高裁が近々判断するそうです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071030-00000064-kyt-l26
女子中学生脅し裸写真送らせる 京都府警、容疑で男再逮捕
10月30日22時49分配信 京都新聞
女子中学生を脅して裸の写真などを撮らせたとして、京都府警少年課と七条署は30日、児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、容疑者(30)を再逮捕した。
調べでは、容疑者は4月上旬から7月中旬の間、大阪市北区の中学3年の女子生徒(15)が18歳未満と知りながら、携帯電話のカメラで、生徒自身に裸の写真や動画を計8回撮らせて保存させた疑い。
府警によると、容疑者は生徒にメールを送って「やくざに狙われている。助けてほしかったら裸の写真を送れ」と脅し、生徒が撮った写真や動画を携帯電話で送らせていた、という。
容疑者の携帯電話には、多数の女性の裸の写真が保存されていた。調べに対し、同容疑者は「若い子の裸が好きだった。20数人に同じ手口で写真を送らせた」と供述している、という。
容疑者は出会い系サイトで知った京都市の高校1年の女子生徒(15)の携帯電話に「(この生徒の)写真を関西中のやくざに配るからな」などのメールを送ったとして、19日に脅迫の疑いで逮捕された。この生徒にも裸の写真を送らせていた、という。
メール送信させる場合の製造罪については、客体ごとに、製造罪の要件を検討してください。
姿態とらせて実行行為説が高裁の判例であって、最高裁の姿勢は不明です。
量刑としては、性行為がないのが救いですが、結構きついです。
一つの判決で同時に 2個の懲役刑を言い渡す場合に、一つの刑を実刑とし、他の刑に執行猶予を付することの可否(東京高裁H19.6.25)
児童福祉法違反の家裁専属管轄があるので、こういうことをよく見聞きしていますが、次にそんな事件にあたったら、本件の検察官の主張をそのまま主張しましょう。
東京高裁H19.6.25(東京高裁刑事判決速報 速報番号3347)
刑法の法文上、一つの判決で同時に 2個の懲役刑を言い渡す場合に、一つの刑を実刑とし、他の刑に執行猶予を付することを禁止する明示の規定はなく、このことが同法 25条の要件にも直接抵触するものではないことは明らかである。
ところで、検察官の所論の骨子は、(丑刑法 25条 1項 1号、 26条 1号、2号、 26条の 3の規定に照らすと、刑法は、実刑判決と執行猶予付きの判決の併存を認めないか、あるいは、実刑に統一すべく規定しており、実刑判決と執行猶予付きの判決の併存、同時宣告を許容しないところである、②刑の執行猶予の制度が、執行猶予取消しの可能性という心理的強制の下、一定の善行保持を条件に犯罪者の社会内における自立的改善更生を期するものである以上、その同一の犯罪者をかかる改善更生の適性がないとして実刑に処しつつ、同時に、かかる改善更生の適性があるとして執行猶予に処するのは背理であり、また 、刑の執行の点からも、実刑判決と執行猶予付きの判決が併存して確定した場合、実刑となった刑の執行中に他方の執行猶予期間の全部又は一部が経過するものと解さざるを得ないが、本来善行保持が強制されるべき社会から隔離された刑事施設内において刑の執行を受ける者に、執行猶予制度の予定する社会内における自立的改善更生を期待することは到底不可能であるから、実刑判決と執行猶予付きの判決の併存は、執行猶予制度の本質と相容れない、③原判決のように、実刑と執行猶予の同時宣告が適法であるとすると、控訴申立て等により確定の時期がずれた場合、結局実刑に統一されるものと解され、また、実刑判決と執行猶予付きの判決が同時に確定すれば、刑法 26条 2号により執行猶予が取り消されると解されるから、同時宣告された執行猶予は、宣告当初から将来的に必要的取消しの対象となることが必然というべきものであり、執行猶予を付したこと自体が無意味というほかなく、このような執行猶予付きの判決は、判決の明確性を著しく害し、被告人ら判決に接する者の刑の執行・不執行に対する予測や期待を裏切り、法的安定性を害すること甚だしく、違法というべきである、という。
しかしながら、以下のようにいずれの所論も採用できない。
①について、所論指摘の刑の執行猶予及びその取消しに関する刑法の条項を考察しても、同法が実刑判決と執行猶予付きの判決の併存や同時宣告を許容しない趣旨とは解されない
②について、刑の執行猶予制度の行刑的意義が所論のいうようなものであるとしても、一つの判決で同時に 2個の懲役刑を言い渡す事案には、それぞれの刑の確定時期や最終結果が異なる場合も考えられるのであって、所論のような行刑の本質論を論拠として、実刑判決と執行猶予付きの判決の併存が許されないと解することは相当とは言い難い。
③について、所論指摘のように、実刑判決と執行猶予付きの判決が同時に確定した場合には刑法 26条 2号が適用されて執行猶予が取り消されると解するとしても、刑の執行を猶予するかどうかの判断は、一つの主文に包摂される事案の諸情状を勘案して行う裁判所 (育)の量刑判断であり、これに対して、刑の執行猶予取消制度は、判決により宣告された自由刑が確定したことを受けて、確定した実刑判決を取消原因として執行猶予の言渡しを取り消し、執行の統一を図るものであり、刑の執行段階で自由刑を整理するものとして存在する別個の制度であると解されるから、執行猶予を付すること自体が無意味ということはできないし、このような執行猶予付きの判決が判決の明確性を著しく害するとか、法的安定性を害すること甚だしく違法であるなどとはいえない。
結局、検察官の所論は、判決による刑の宣告及びその際の量刑判断と宣告された自由刑の執行 (行刑)の状態を一致させることを求めるものと考えられるが、上記のように、判決宣告手続と刑の執行猶予取消制度とは別個の制度と解されるから、判決宣告の段階から刑の執行の状況を考慮に入れて量刑することを求めることになる検察官の所論を是認することはできない。
以上のとおりであり、主文で 2個の懲役刑を言い渡すとき、刑法が一つの判決で同時に実刑判決と執行猶予付き判決を言い渡すことを許容しておらず、その一方のみについて執行猶予を付すことが違法であるとは解されないから、検察官の法令の解釈適用の誤りをいう論旨は採用できない。
追記
研修に紹介されました。検察官の主張も掲載されています。
立石英生「主文で2個の懲役刑を言い渡すとき、刑法が一つの判決で同時に実刑判決と起訴猶予付判決を言い渡すことを許容しておらず、その一方のみについて執行猶予を付すことが違法であるとは解されないとした事例」研修 第712号
裁判例コンメンタール刑法1P111 大島判事
(3) 2個以上の懲役刑又は禁固刑を言い渡す場合に、-部に執行猶予を付し、他方を実刑とすることの可否
しかしながら、懲役又は禁錮に限って考えると、異なる時点で猶予刑と実刑を言い渡すとなると、執行猶予を言い渡すこと自体が違法になるか後に執行猶予が取り消されるかのいずれかになるのであるから、同時であれば許されるとする根拠は乏しいものと考えられる。消極説が正当であろう。
判例違反を主張している控訴事件で、結審後に「同種事件の裁判例を持ってるんなら持ってこい」と言われたこと
前にも名古屋で結審後に廊下で呼び止められたことがあります。
前提性犯罪(青少年条例違反)と3項製造罪(姿態とらせて製造)の罪数の問題。
一応、持ってる判決は裁判所に見せようと思って証拠請求するんですが、検察官は「固有名詞が出ている。むにゃむにゃ・・・」とか言って不同意。
弁護人は伝聞例外の323条を考えるんですけど、控訴趣意書の注釈で裁判例の全文を引用したから職権で調べてくれるはずだし、知らないままよそと違う判断して恥をかくのは高裁だからというので、撤回して持って帰ってきた。
第392条〔調査の範囲〕
控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。
②控訴裁判所は、控訴趣意書に包含されない事項であつても、第三百七十七条乃至第三百八十二条及び第三百八十三条に規定する事由に関しては、職権で調査をすることができる。
帰ったところで「事実上みるから、判決書を持ってこい」という電話。やっぱりよその判決が気になるのか?
実は、東京高裁が児童買春と5項製造罪(不特定多数)の罪数について判断する予定なんだが、それは併合罪だったら黙っておいて、観念的競合だったら大阪高裁にも教える。
まあ、大阪高裁は大阪高裁であって、東京高裁でも札幌高裁でもない独自路線だし、理屈っぽくないそれなりの見識があると思うので、それも聞きたいところ。
ノートPC起動せず↑→
期日決めるのに、いちいち事務所に電話してました。
まだ立ち上がりません。
20:00ころ復旧しました。
懲戒請求の報道
「懲戒請求」の時には取材に来なかった社からも、今頃になっていろいろ取材がありました。
http://nsearch.yahoo.co.jp/bin/search?p=%C4%A8%B2%FC+%CA%DB%B8%EE%BB%CE&ei=UTF-8&fr=top_v2&x=wrt
ひまわりサーチでは大阪に奥村という弁護士が1人もいない。
6人くらいいるはずなのに。
発想が相変わらず都道府県単位(幕藩体制!)なので、京都の事件で、大阪・兵庫まで広げて弁護士を探すという使い方はできません。
http://www.bengoshikai.jp/search/form.php
http://www.bengoshikai.jp/search_area.html
※「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」は共通のシステムを利用して各地の弁護士会によって運営されております。
※「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」を利用していない弁護士会や独自に開発したシステムによりサービスを提供している弁護士会もあります。地図では以下のとおり色分けをしていますのでご利用の前にご確認下さい。
1 オレンジ:「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」による情報提供を行っています。
2 グレー:「弁護士情報提供サービス ひまわりサーチ」による情報提供は行っておりません。ただし、取扱業務から検索可能な独自のシステムによる運用をしています。地域名をクリックすると各地の弁護士会のホームページにリンクします。
ヒットしないと幽霊弁護士みたいだというので、先日、大阪弁護士会の会員検索サービスに登録しました。
http://www.osakaben.or.jp/web/lawyersearch/result.php?id=026229
一般の検索サイトで検索されるんでしょうね。
有害サイト接続制限機能 生徒らに浸透せず
フィルタリングでも被害は無くならないと思いますが、無いよりあった方がまし。
最初から付ければそういうものだと思うんでしょうが、付けないで与えると、そういうものだと思ってフルに活用するので、被害に遭います。
学校は「生活指導」と称して髪型とか服装とかをチェックするくせに、どうしてフィルタリング無しの携帯電話をチェックすることすらできないのかが不思議です。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20071030/CK2007103002060411.html
有害サイト接続制限機能 生徒らに浸透せず
2007年10月30日
県警が、県教委の協力を得て県内の児童生徒らを対象に行った携帯電話に関するアンケートで、出会い系サイトなど有害サイトへの接続を制限するために、携帯電話各社が提供している「フィルタリングサービス」を利用している高校生は7・9%、中学生17・7%、小学生23・4%にとどまっていることが分かった。結果を踏まえて県警で開かれた会議で、県警や学校関係者は、連携して有害サイトの危険性の周知やフィルタリングの利用浸透を図ることで一致した。 (松尾博史)
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アンケート結果を踏まえて、学校側からは「保護者の意識喚起が必要ではないか」「携帯電話会社は販売時に、携帯電話の危険な面を、親にも子どもにも教えてほしい」などの声もあった。一方、携帯電話会社側からは「学校から要請があれば、いつでもフィルタリングについて説明する」といった意見が出て、携帯電話を介して、子どもたちが事件の被害に遭わないよう、防止を徹底することを確認した。