児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「金は最後に払う」という対償供与の約束の事例

 解決すべき問題。

  1. 対償供与約束が実行の着手で、同じ対償供与約束に包まれた数回の性交等は包括一罪
  2. 製造罪の保護法益は個人的法益ではない(大阪地裁)から、数人が撮影されても包括一罪
  3. 製造罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は観念的競合
  4. 払うつもりがない児童買春は、準強姦ではないか?

長野・山梨の児童買春:容疑で40歳男を追送検−−南アルプス署 /山梨
2007.08.29 毎日新聞社
 調べでは、容疑者は06年12月中旬から07年2月末にかけて、携帯電話の出会い系サイトで知り合った長野県内に住む当時中学3年の女子生徒(当時15歳)と、山梨県内に住む当時高校1年と2年の女子生徒(同16歳、同17歳)の計3人に、18歳未満と知りながら、それぞれ現金数十万円を支払うともちかけてみだらな行為をした疑い。容疑者は最後に金を払うとして女子生徒らと数回会っていたが、結局払わなかった。

強制わいせつ・否認→一審懲役2年4月実刑→控訴審無罪(名古屋高裁h19.8.24)

 報道によれば、7歳に「下腹部を見せる」というわいせつ行為のようですが、「求刑4年」「実刑2年4月」っていうんですから、報道されていない部分があるようです。

強制わいせつ:男性に逆転無罪 供述の信用性否定−−名古屋高裁
 三重県四日市市で女児にわいせつ行為をしたとして強制わいせつ罪に問われ、1審の実刑判決を不服として控訴していた同市内の男性被告(40)に対し、名古屋高裁田中亮一裁判長)が逆転無罪判決を言い渡していたことが28日分かった。
 男性被告は06年4月13日午後4時ごろ、同市内の路上で、女児が13歳未満と知りながら自分の下腹部を見せるなどしたとして同年5月、起訴された。1審の津地裁四日市支部は07年1月に懲役2年4月(求刑・懲役4年)の実刑を言い渡し、男性側が控訴していた。
[毎日新聞 ]

強制わいせつ事件 無職男性に逆転無罪 自白信用性に疑問 名古屋高裁=中部
 三重県四日市市で女児にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた同市の無職男性(40)の控訴審判決で、名古屋高裁は、懲役2年4月の実刑を言い渡した1審・津地裁四日市支部判決を破棄し、無罪を言い渡した。判決は24日付。
 男性は、2006年4月、同市内の路上で当時7歳の女児に対し、下腹部を見せたなどとして起訴された。
[読売新聞 ]

市職員 無断欠勤続きネットで発覚

 取調にも嘘ついていたことになります。
 最近はこうやって人捜しするんですね。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/e20070830005.html
副工場長は取り調べに「無職」と答え、警視庁は「自称無職」と発表していた。
 逮捕で無断欠勤が続いたため、環境局が「事件に巻き込まれた可能性がある」とインターネットで検索。同姓同名の男性の逮捕が判明したことから、発覚した。
 副工場長は市の調べに「酒に酔った勢いでやった。不祥事が続く大阪市の職員と分かれば、迷惑が掛かると思い、無職と言った」と話しているという。

警察官による児童淫行罪(和歌山家裁)

 お巡りさんが、あまり知られていない児童淫行罪の量刑を身をもって体験することになりました。実刑率は25%+上昇傾向。
 なお、「淫行させる」とは「淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要である」とされていて、程度問題なので、その辺の立証がちゃんとされているかどうかをチェックする必要があります。被害児童の感じ方一つなので、案外もろいものです。
 この程度を越えていないときは、青少年条例違反なので、管轄違。

http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20070830055.html
 起訴状などによると、被告は職務質問で知り合った女子高生を電話で呼び出し、今月9日正午ごろ、和歌山市のホテルに連れ込んで、わいせつな行為をした。

東京高等裁判所平成8年10月30日
3 淫行を「させる行為」について(所論(3))
 児童福祉法三四条一項六号にいう淫行を「させる行為」とは、児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される(なお、最高裁判所昭和三〇年一二月二六日第三小法廷判決刑集九巻一四号三〇一八頁、最高裁判所昭和四〇年四月三〇日第一小法廷決定裁判集一五五号五九五頁参照。)。そして、前記2でみたとおり、同号には、行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為を含むと解すべきところ、同号が、いわゆる青少年保護育成条例等にみられる淫行処罰規定(条例により、何人も青少年に対し淫行をしてはならない旨を規定し、その違反に地方自治法一四条五項の範囲内で刑事罰を科するもの)とは異なり、児童に淫行を「させる」という形態の行為を処罰の対象とし、法定刑も最高で懲役一〇年と重く定められていること等にかんがみれば、行為者自身が淫行の相手方となる場合について同号違反の罪が成立するためには、淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。

「18歳以上だと思っていた」という主張

 逮捕される前なら、主張・立証を尽くせるのですが、逮捕されてからだと、事実上、難しいですね。
 改正で過失処罰規定を入れてくる可能性があります。児童っぽい人と性交等するときは年齢確認義務を負わすのです。

http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070830/jkn070830019.htm
「18歳以上だと思っていた」と容疑を一部否認しているという。
 調べでは、容疑者は4月1日、宮城県大崎市のホテルで、ツーショットダイヤルで知り合った同県登米市の公立高校3年の女子生徒に1万5000円を渡し、わいせつな行為をした疑い。別の日にも2万円でこの女子高生と同様の行為をし、「これまで数人と援助交際をしている」と話しているという。

 なお、対償供与(約束)がない場合には、年齢を知らなくても、青少年条例違反で処罰されます。宮城県民には年齢確認義務があるのです。

宮城県青少年健全育成条例
http://www.pref.miyagi.jp/seisyo/jorei/jorei.pdf
第40 条
1 第30条第1項の規定に違反して、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をした者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
6 第30条又は第31条に掲げる行為をした者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項から第3項までの規定による処罰を免れることはできない。ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。