児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

青少年条例違反のサッカー選手起訴猶予

 福祉犯の弁償については、弁償では被害が填補されないとか言われるんですけど、個人的法益の侵害だと理解して反省したというアピールはできますよね。
 弁護人がいい仕事をしたという感じですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000906-san-spo
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000514-yom-soci

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000133-jij-soci
選手は「本当に申し訳ないことをした」と話しているという。
 同支部は、選手が深く反省していることや、被害者側と示談が成立したことなどを考慮し、起訴猶予とした。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070622-00000081-mai-soci
 静岡地検浜松支部は22日、起訴猶予処分とした。選手が深く反省し、女子生徒も「これ以上大ごとにしたくない」と話しているためで、選手は同日、釈放された。
 被害者とは示談も成立しているという。

しかし、本当は、青少年が健全に成長する権利が害されるという、被害児童も気付かない被害なので、一時の被害感情で計ってはいけないんですけどね。

 浜松支部、奥村事件でも起訴猶予にしてくれたことがあって、印象いいなあ。

新司法試験、考査委員の慶大教授が類題演習…法務省が調査

 その程度の試験になりました。
 勉強する範囲を限定することができればだいぶ楽になります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070623-00000001-yom-soci
 教授(57)(行政法)が、今年2〜3月、同大学院の学生相手に答案作成の練習会を開いた上、実際の試験問題と類似した論点を説明していたことが22日、分かった。
 教授は読売新聞の取材に、「問題を漏えいする意図はなかったが、軽率だった」と事実関係を認めており、法務省も同教授から事情を聞くなど調査を始めた。

新司法試験の合格者目安、08年は2100〜2500人

http://www.asahi.com/job/news/TKY200706220370.html
法科大学院の修了者を対象にした「新司法試験」について、法務省司法試験委員会は22日、08年以降の合格者数の目安を発表した。08年は2100〜2500人程度▽09年は2500〜2900人程度▽10年は2900〜3000人程度。法曹人口の拡大計画に沿って10年をめどに合格者3000人の目標が実現する。

 増やして自然淘汰
 単位会の会派(自動的に形式上元ボスの会派になってる)から、「40期以降が過半数になって、執行部の構成と合わなくなった・・・若手の御意見をうかがいたい」という危機感のこもったFAXが来ていました。「若手会」というのは登録10年未満を言うそうですが。
 年齢構成が若くなって「危機感」というのは変な話。若手じゃない人が執行部で、若手の御意見をうかがうという構成・姿勢がおかしくて、若手が執行部で、若手じゃない人の御意見をうかがうという構成・姿勢になるのが自然です。まあ、それでも会派には出ませんけど。いま話題の「弁護士会会長」選挙のための組織です。

理不尽な要求、専門チームで対応 京都市教委が設置、学校へ助言

 医師は知りませんが、弁護士・警察OBとくれば、学校の用心棒ですよね。「第三者」じゃなくて、学校側。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007062200046&genre=F1&area=K10
学校に理不尽な要求を突きつけて学校運営に支障をもたらす保護者が全国的に増える中、京都市教委は21日までに、医師や弁護士、警察OBらでつくる「学校問題解決支援チーム」を、今夏にも創設する方針を決めた。教育再生会議が1日に公表した第2次報告で同チームの各教委への設置を提言したが、具体化するのは全国で初めて。

継続犯たる公然陳列罪の構造↑→

 高裁判例のいう、誰も閲覧していなくても既遂になるということ、継続犯とされることことを合理的に説明するとすれば、「閲覧」させることは、結果であって実行行為ではないことになって、ただ、サーバー上に記録蔵置しているという行為を継続反復している点で、実行行為が継続しているから、継続犯だということになりますね。
 その意味での実行行為に加わると、共犯になりうる。共犯は正犯者の実行行為に加わることですから。
 また、記録蔵置より後の行為(閲覧させる)に加わっても、共犯にはならないんですね。
 画期的な発見かと思いきや、永井「サイバーポルノの刑事規制」p177が同旨でした。

阪高裁h11.8.26
 しかし、わいせつ物を公然陳列したというためには、これを不特定又は多数の者が閲覧することができる状態に置くことをもって足りるところ、本件において、被告人は、わいせつ画像データをコンピューターのハードディスク内に記憶・蔵置させて、ホストコンピューターの管理機能に取り込み、会員が、電話回線を通じてパソコンにより被告人のホストコンピューターのハードディスクにアクセスしさえすれば、いつでも、容易に右ハードディスク内に記憶・蔵置されたわいせつ画像のデータをダウンロードすることなどにより、右データをわいせつ画像としてパソコンのディスプレイ上に顕現させ、閲覧することが可能な状態を作出し、もってわいせつ画像が社会内に広範に伝播することを可能にし、健全な性風俗が公然と侵害され得る状態を作出したものであるから、被告人が、本件ハードディスクを右のような状態に置き、ホストコンピューターにアクセスしてきた不特定多数の会員に、右データをダウンロードさせて再生閲覧させた所為が、わいせつ物の陳列に該当するとした原判決の認定・判断に誤りはない。なお、弁護人は、弁論で、本件においては、典型的なわいせつ物公然陳列罪の特徴として認められる陳列と観覧の「同地性」や情報伝達の「同時性」がみられないから、同罪は成立しないと主張するが、本件においては、被告人によって前記のとおり健全な性風俗が公然と侵害され得る状態が作出されている以上、陳列という要件は満たされているというべきであって、所論の「同地性」や「同時性」が、同罪成立のための必要不可欠な要件になるものと解することはできない。また、本件所為が陳列に該当するとして、わいせつ物公然陳列罪の成立を認めることが、弁護人が弁論で指摘するように事後法の禁止や法津主義の原則に反するなどといえないことは明らかである。

【事件番号】最高裁判所第3小法廷決定/平成11年(あ)第1221号
【判決日付】平成13年7月16日
同条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい,その物のわいせつな内容を特段の行為を要することなく直ちに認識できる状態にするまでのことは必ずしも要しないものと解される。被告人が開設し,運営していたパソコンネットにおいて,そのホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置させたわいせつな画像データを再生して現実に閲覧するためには,会員が,自己のパソコンを使用して,ホストコンピュータのハードディスクから画像データをダウンロードした上,画像表示ソフトを使用して,画像を再生閲覧する操作が必要であるが,そのような操作は,ホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置された画像データを再生閲覧するために通常必要とされる簡単な操作にすぎず,会員は,比較的容易にわいせつな画像を再生閲覧することが可能であった。そうすると,被告人の行為は,ホストコンピュータのハードディスクに記憶,蔵置された画像データを不特定多数の者が認識できる状態に置いたものというべきであり,わいせつ物を「公然と陳列した」ことに当たると解される

東京高裁H16.6.23
2当裁判所の基本的な判断
(1)本件で問題とされているのは,児童ポルノの陳列であるが,陳列行為の対象となるのは,前記のような児童ポルノ画像が記憶・蔵置された状態の本件ディスクアレイであると解される。
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。

・・・・
 しかし,本件ディスクアレイに児童ポルノ画像を記憶・蔵置させ,これをインターネットに接続したコンピュータを有する不特定又は多数の者に閲覧可能な状況を設定することが法7条1項所定の「陳列」に当たるとした原判決の判断は正当なものとして肯認できるし,児童ポルノが記憶・蔵置されている本件ディスクアレイを児童ポルノであると認定した原判決の判断も正当である。所論は,いずれも当裁判所とは異なる見解を前提とするものであるから,採用の限りではない。また,本件においては,本件ディスクアレイの没収は問題とされていないから,これを前提とする憲法違反の主張は,その前提を欠いていて失当である。

・・・・
(3)所論は,要するに,児童ポルノ公然陳列罪は,状態犯と解すべきであって,被告人が本件児童ポルノ画像を認識する以前に既遂に達しているから,被告人を事後従犯に問うこともできないし,仮に本罪が継続犯であるならば,被告人には幇助犯が成立するにすぎないのに,被告人に児童ポルノ公然陳列罪の正犯が成立するとした原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第14)。
 しかし,児童ポルノ公然陳列罪は,いったん陳列罪として既遂に達しても,その後も陳列がなされている限り法益侵害が続いており,また,陳列行為も続いているものと解することができるから,所論のように状態犯ではなく,継続犯と解するのが相当である。