児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

出会い系サイト禁止法 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律

まだ、検挙されているんですか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040705-00001033-mai-soci
 規制される側が学習すれば、各都道府県警察に1件ずつ行き渡ることはないのではないかと予測しています。
 構成要件はサイトの性格(異性紹介事業性)と、書き込みの字面(誘引性)ですから、容易に潜脱されると思うんですが。 
 「こういうところで、こういうことを書いたらアカン」というだけなので。
 法律施行後も、出会い系サイトに起因する犯罪は減ってないんじゃないか?

 誘引性については微妙な表現について限界事例が摸索されるでしょうが、表現の自由も関係する問題ですが、罰金刑ですから、争われないでしょう。(買春罪が実刑で、誘引罪の罰金がついている方もいますが、争っても、罰金が無罪になるだけですから実益ない。)

http://www.okumura-tanaka-law.com/www/okumura/child/deai030904.html
第六条 何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為をしてはならない。
 一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
 二 人(児童を除く。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
 三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
 四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。

プロバイダーの刑事責任

 こんなところでどうでしょう?

5 私見
(1)刑法的評価の対象とされるべき行為
 源発信者が違法な情報を掲載した時点で自ら正犯となるのは疑いないところであって、プロバイダーからすれば、他人に適法行為こそ期待していても、実際にこのような犯罪行為に及ぶことは通常予想できないから、違法情報の発信以前のプロバイダーの維持管理行為だけでは、違法行為を招く現実的な危険性(実行行為性)は認められない。
 また、犯罪を構成するような情報が掲載されない段階での情報伝達作用は、表現の自由・通信の秘密で保障されるまさに合法な行為であるから、判例のようにその点まで含めて作為の実行行為と評価することは許されない。
 したがって、プロバイダーが責任を問われるとしても、あくまでも違法情報の存在を認識・認容した時点よりも後の行為についてである。

(2)作為犯か不作為犯か?
 源発信者から発信された違法情報が維持・拡散されるのは、プロバイダーが提供する情報伝達作用によるのであり、プロバイダーは情報伝達作用を維持するために積極的に活動しているのであるから、その刑事責任を問うとすれば基本的には「作為犯」を論じるべきである。
 もっとも、その犯罪性は、違法情報を認識しながら故意に削除せず、さらに拡散した点に求められるから、その意味では、不作為犯的な要素も考慮され、作為義務の議論が必要となる。

(3)正犯か従犯か?
 通常の中立的プロバイダーの場合、発信された違法情報が維持・拡散されるのは、プロバイダーが提供する情報伝達作用によるのであるから、源発信者は、あたかも情を知らない郵便配達人を介して、違法な情報を流布しているのと同様の構造であって、プロバイダーは、間接正犯における被利用者である。プロバイダーが情を知った場合に考えられる責任は、「故意ある幇助的道具」としての従犯責任である。
 実質的に考えても、通信の秘密の要請や物理的限界により内容を常時監視し、発見即時に削除することは不可能であるという意味で、流通する情報については第一次的責任を負うのは源発信者であって、プロバイダーの責任は副次的である。
 正犯の既遂時期の関係でも、源発信者における名誉毀損罪等は、情報の発信時点で既遂となっており、仮にプロバイダーが故意に違法情報を放置したとしても、それは正犯者である源発信者の発信行為による結果に他ならないから、もはや正犯とはなり得ない*15。

(4)従犯となる要件
 問題は、プロバイダーが違法情報の存在を認識したら、即、従犯になるのかであるが、第1種電気通信業者のようにプロバイダーは、通信の秘密・検閲禁止等の義務を負っている場合もあり、通信内容について常時監視義務を負うわけではないから、この視点から、知情すれば即、従犯というのも極論であろう。
 さらには、民事責任については、プロバイダー責任制限法によって責任範囲が限定されており、刑罰法規の補充性・謙抑性も考慮しなければならない。
 これは、刑法学上「中立的行為による幇助」*16として刑事責任を限定する方向で議論されているところである。
 そこで、私見としては、基本的にプロバイダーが負うべき刑事責任は作為・従犯としての責任であって、通常のプロバイダーの場合はその責任が限定されると考える*17。

 具体的には、
 情報の違法性が客観的に明白であること。
 約款・契約・プロバイダー責任制限上の削除権を適切に行使していないこと
 情報の違法性を認識・認容し、源発信者の違法行為を幇助する意思があること
等が必要ではないだろうか?
 名誉毀損罪についていえば、わいせつ図画・児童ポルノに関して注意義務の根拠となる風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律31条の8第5項のような規定がないこと、親告罪(刑法232条1項)であって告訴があって初めて処罰されること、虚無人に対しては名誉毀損罪は成立しない点で情報自体から違法性を判断することが必ず容易ではないことから、情報の内容から被害者の存在・名誉毀損性が明かであって、捜査機関に対する告訴及びプロバイダーに対する告知がなされている場合で、プロバイダーにおいて源発信者の名誉毀損行為を幇助する意図をもって、違法情報を削除しなかった場合に初めて、これらの要件が備わった時点以降の行為について作為犯としての名誉毀損罪の幇助の責任を負うと考える。
 要するに、普通のプロバイダーが何の前触れもなく刑事責任を負うことはないといえるのではないだろうか。
以上

不正アクセス罪の弁護方針

 結局、文理解釈ではアクセス制御の概念が定まらないことがわかった。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040713#p5
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040713#p1
 これは1〜3号不正アクセス罪共通の欠陥である。

 不正アクセス罪の弁護人ではないが、こうなったら裁判所に決めて貰うしかない。

 ある事件で、弁護人がこれを指摘すると、
  弁護人は・・・と主張するが、
  不正アクセス禁止法の趣旨に鑑みると
  ・・・も保護する必要があるから、アクセス制御については
  ・・・と解すべきである。
  所論は弁護人独自の見解であって採用できない。
という判決をもって裁判所は必死で取り繕おうとするだろう。
 しかし、結局、弁護人の反対という結論が前にあって、裁判所が依拠する立場というものが存在しないから、理由付けにおいては、
   甲裁判所は○○という解釈
   乙裁判所は××という解釈
というマチマチな判断が予想される。
 
 ネットバンキングの不正アクセス事件では実刑判決もあるのだが、裁判所がこんな理解で、被告人は納得して受刑できるだろうか?
 これからは機会あるかぎり主張しておいてあげないとだめでしょうね。

山口雅高「わいせつ画像データを記憶,蔵置させたいわゆるパソコンネットのホストコンピュータのハードディスクと刑法175条のわいせつ物 等」法曹時報2004.2

 サイバー犯罪条約児童ポルノについてしか規定していないから、刑法175条の改正とは、関係ない。
 学者先生は、わいせつ図画の罪と児童ポルノ罪とを混同されてるんだろうな。
 改正児童ポルノ法は「提供罪」を導入して、わいせつ図画の罪との訣別を明らかにしている。

なお,我が国が「ヨーロッパ評議会サイバー犯罪に関する条約」に署名したことに伴って,国内法を整備する必要が生じ,法制審議会が平成15年9月10日に示したそのための要綱(骨子)によると,刑法175条は,次のとおり改正するものとされている(山口厚「サイバー犯罪の現状と課題」現代刑事法57号4頁)。
1わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し,又は公然と陳列した老は,2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し,又は懲役及び罰金を併科するものとすること。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同様とすること。
2 有償で頒布する目的で,1の物を所持し,又は1の電磁的記録を保管した者も,1と同様とすること。           (山口 雅高)

これは珍しい、児童ポルノ貸与罪

 営業でレンタルしているのも、同じ法定刑でした。
 貸してるくらいだから、貸与目的所持も可能です。

http://itp.ne.jp/topics/mainichi/12_07.html
【千葉県】 2004年7月17日(土) 調べでは、6人は今年4月10日から5月7日までの間に計6回、女児の裸などのポルノビデオテープ2巻を計4人に有料で貸し出した疑い。いずれも容疑を認めているという。【山縣章子】

旧法
児童ポルノ頒布等)
第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。


 岡山で前例があって、なぜか控訴されています。

貸与&所持 
岡山地裁H12.11.28H12わ559→高裁岡山支部H12う132号
主文
被告人を懲役一年に処する
この裁判確定の日から三年間刑の執行を猶予する。
罪となるべき事実
被告人 所在のレンタルビデオ店「」を経営しているものであるが、同店において、平成12年6月15日から同年7月日までの間、別表記載のとおり、3回にわたり、業として、同店従業員らをして不特定多数の顧客であるtほか二名に対し、衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの.を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノビデオテープ計五本を有償で貸与し、もって児童ポルノを業として貸与し、同年九月六日午前一〇時五七分ころ」業として有償で貸与する目的で、前同様の児童ポルノビデオテープ合計一三本( 題名「」ほか一二題) を所持したものである。

有償無償は構成要件ではないので、余事記載ですね。

訴因変更で余罪追加しているのも、おかしいというか、甘い処分ですね。

量刑不当で控訴しているんですが、
   貸与というのは「販売」「頒布」じゃないのか?
って争えば、「頒布」「貸与」の定義が判示されて、実務上参考になる判決になったと思います。

広島高裁岡山支部H13.3.14
18歳未満の児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童ポルノに係る行為等を処罰ずることにより、児童の心身に有害な影響を与えるこ与を防止し、もって、児童が健全に生育する権利を保護するため、児童ポルノビデオテープ等を業として貸与し、その目的のために所持する行為をした者を、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「新法」という。)が平成11年5月26日公布され、同年11月1日から施行された。このことは、新聞、雑誌で報道され、特に業者間では、会議を開いたり、文書を送付したりして周知、徹底され、従来仕入れた新法に抵触するビデオテープは店舗から撤去するよぅに指示されていたところ、被告人は、その法律が施行されたことを明確には知らず、従来仕入れた分とはいえ、業としてこのようなビデオテープを引き続き店舗に直いて顧客に貸与して営業利益を得、かつ貸し付け目的で所持していたものであるが、関係法令に対する関心の乏しさ、児童保護に対する配慮のなさは厳しく非難されてしかるべきものである。
その上、本件貸与行為等は、同法施行の日より半年以上経過した後の行為で被告人が同法の施行を知らなかったことは特に酌むべき事情とはいえない。
更に、被告人が所持し七いた児童ポルノビデオテープは、数量も少なくなく、そのタイトル自体、児童ポルノであることを強調しており、その内容も、児童の保護に全く反して、少女の胸部や陰部を露出した全裸の姿体を撮影した興味本位の商業的なものであり、テープを借りた顧客が店舗において貸し出しするにふさわしくないとして警察に申告したほどのものであって、被告人には営利目的優先の態度があると評価されてもやむを得ず、その犯情は芳しくなく、その刑責は軽視できない。
そうするとビデオーテープの仕入は、卸元の業者からのリストにより、店長等が選択するのに任せていたこと、被告人は、本件ポルノビデオを視聴していなかったと、法令に違反しても警告、指導等が先ずなされ、値ちに起訴されることはないと安易に考えて、仮に検挙されても罰金等により処罰され、懲役刑の求刑や判決の宣告が.なされることはないと考えていたことなどその違法性や罰則に関する認織の乏しさを考慮しても、被告人経営の店舗においてはアダルトビデオも取り扱うているから、営業行為が法令に違反しないように、常に注意を払っておくべき業者としてのあるべき態度からみると、これらの事情はことさら被告人に有利に酌むべき情状とまではいえない。

警察庁執務資料
エ 業としての貸与「業として貸与」するとは、反復継続の意思をもって貸与することであり、有償無償を問わない。反復継続の意思とは、不特定又は多数の人に対しする意思と同じ意味である。したがって、不特定又は多数の人に対する有償の譲渡は販売罪に、不特定又は多数の人に対する無償の譲渡は頒布罪に、不特定又は多数の人に対する有償又は無償の貸与は業としての貸与罪に当たることとなる。

再犯率

 被疑者被告人からの質問で、執行猶予の説明をすることがあるが、強調するのは、取消率が少なくないこと。
 犯罪白書では全事件平均で20%程度だったか。薬物関係の取消率が高いらしい。
 児童ポルノ・児童買春関係はどうなんだろうか?
 当職が弁護人を受任した事件(被告人数にして10人くらい)については、幸い執行猶予の取消は聞いていない。これは自慢できる。弁護人立証がくどいから一回で結審しないし、被害者に謝罪する場面もたびたびあるので、同じ量刑でも感銘力が強いのだろうと分析する。

 相談案件では執行猶予中の同種事案は2件あって、前刑の猶予は取消となり、結果は、実刑となった。
 いずれも、前刑は
   元検事の私選弁護
   検察官請求証拠が被告人は読まないまま全部同意。
   一回結審
   被害弁償無し
   着手金100〜200万円 報酬も同額程度(廃止された弁護士会の報酬規程の3〜7倍)
   奥村弁護士事件の量刑よりもやや重い(刑期も執行猶予期間も)
というのが共通点。

 同業者からすれば、仕事しないで高額もらえて羨ましいかぎりだが、被告人は「早期結審」という利益を得たものの、高い費用はまだしも、再犯防止を行わなかったため重い量刑が結局執行されることになったという取り返しのつかない不利益+高い費用を受けたことになる。
 
 どっちがいいんでしょうかね?被告人の選択です。

 弁護士としては、楽して稼げる方がいいわけですが、「着手金100〜200万円」はなかなか切りだせない。
 他方、被告人の身替わりで被害児童の保護者からボロクソになじられるのは、仕事だと割り切っても、お金貰っても気が進みませんね。
 結局、児童に対する性犯罪弁護は割に合わない仕事なので、研究・評論はしても、実際に受任するのは稀です。

Community sentence for former judge who downloaded child porn

http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,3604,1260562,00.html

イギリスのお話。児童ポルノダウンロード罪? 所持罪?。

Community sentence for former judge who downloaded child porn
A former crown court judge, found to have 75 pornographic images of boys on his laptop computer, was yesterday sentenced to a 12-month community rehabilitation order.