児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・強姦・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(強姦罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例違反)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

触法(強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反)保護事件について,初等少年院送致にした決定に対する抗告を棄却した事例(東京高裁h27.7.3)

       主   文
 本件抗告を棄却する。
       理   由
 本件抗告の趣意は,処分の著しい不当及び決定に影響を及ぼす法令違反の各主張である。
第1 処分の著しい不当の主張について
 1 論旨は,要するに,要保護性が高いとまではいえない14歳未満の少年を初等少年院送致とした原決定は,少年法24条1項ただし書に違反し,保護処分の種類の選択を誤った著しく不当な処分である,というのである。
 2 そこで,記録を調査して検討すると,少年の抱える問題が深刻であることを指摘し,少年法24条1項ただし書所定の「特に必要と認める場合」にあたるとして,少年を初等少年院送致とした原決定の判断に誤りはない。
 すなわち,本件は,平成○年○月に中学校に入学した少年が,同月○日,同級生である被害者A(当時12歳)に対し,学校の校舎内で,その乳房を着衣の上から触るなどし(原決定第1),その3日後,無理矢理着衣を脱がせて全裸にしてその乳房を触るなどし(同第2),同年○月○日,同級生である被害者B(当時13歳)に対し,公民館の女子便所内に連れ込み,その意に反して着衣を脱がせて下着姿にし,その上から性器を触るなどした上(同第3),露出させた同女の乳房を携帯ゲーム機のカメラ機能で撮影し,その画像データをマルチコピー機で印画した(同第4)という,強制わいせつ等3件及び児童ポルノ製造1件からなる事案である。少年は,女性の体に対する興味を募らせ,その体を触りたい,見てみたいといった欲求から,大人しく,従順そうな被害者Aを対象とし,人気の少ない時間帯と場所を選んで原決定第1及び第2の非行に及び,その後も,同被害者に対し,同様の行為を繰り返した。また,同じ気持ちから,嫌がる被害者Bを女子トイレの個室内に連れ込み,原決定第3の非行に及んだ上,あとで見て楽しもうなどと考えて同第4の非行に及び,その数日後にも,同被害者方で同第3の非行と同様の行為に及んだ。こうした一連の非行を繰り返すに際し,少年が躊躇していたような様子はうかがわれない。このように,嫌がる同級生を学校内等で全裸にするなどしてその身体を触ったり,その姿を撮影する,という非行態様の悪質さと,こうした行為を躊躇なく繰り返す常習性は,鑑別結果通知書等で指摘された少年の資質上の問題性(他者の気持ちを想像して共感的に理解することが苦手である,抑制力が乏しい,自己中心的である等)が根深いものであることを表している。また,児童相談所による一時保護や少年鑑別所送致の観護措置を経てなお少年の内省が十分に深まっているとは認められず,少年の両親の監護意欲は高いものの,その十分な指導は期待できないとする原決定の認定判断にも誤りはない。
 少年に対しては,自己の抱える問題を十分に認識させ,他者の心情に対する共感を高めさせるとともに,誠実な規範意識を身に付けさせるため,現在の環境から切り離し,少年院に収容して,個別的かつ継続的な矯正教育を施すことが最も適切であり,少年法24条1項ただし書所定の「特に必要と認める場合」に該当するとした原決定の判断は,少年が,原決定時点において13歳10か月弱であったことからしても相当として是認できる。
 3 これに対し,所論は,少年の常習性が顕著とはいえず,少年の資質についても,根深い非行性,反社会性は認められず,家庭の保護環境も整っている上,本件非行には,少年のアスペルガー障害,高機能自閉症スペクトラム障害が与えた影響が大きく,少年については矯正教育よりも医療を優先させるべきであるから,少年の要保護性は高いとまではいえず,少年法所定の「特に必要と認める場合」に当たる事情は存しないと主張する。
 しかし,本体各非行の常習性が顕著で,その背後に横たわる少年の資質上の問題性が根深いことは前記のとおりであるし,父親が,少年の撮影した被害者Bの前記写真を見つけて少年を指導した後も,しばらくして少年が類似行為に及んでいるという経緯等に照らし,家庭内での十分な指導監督を期待することは困難といわざるを得ない。また,少年に対して治療的教育が必要であることは確かであるが,そのことが少年の要保護性を低下させるものではないし,原決定は,前記の少年の抱える問題性に加え,少年の児童相談所による一時保護中の状況等も踏まえ,福祉的,開放的処遇では少年の矯正が困難であり,規制された枠組みの下での指導が必要と判断したものと解され,その判断に誤りはないから,所論は失当である(なお,当審事実取調べの結果によれば,非行に関連する問題性として,高機能自閉症スペクトラム障害,素行障害(性的逸脱行動),衝動性障害(心の理論不調)を指摘されている少年は,○○少年院に収容され,退院までの個人別矯正教育計画表に従い,現在処遇を受けている状況にあると認められる。)。
 4 以上のとおりであって,少年を初等少年院に送致することとした原決定の処分が著しく不当であるとはいえない。
 論旨は理由がない。