児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

告訴権の事前放棄は無効である(名古屋高裁s28.10.7)

 親告罪の告訴前に示談する際に「告訴しない」旨の条項を入れることがありますが、その条項に反してされた告訴も有効ですので、そこは相当柔いので、その他の条項で、事実上告訴しないような内容にしておく必要があります。

名古屋地方裁判所一宮支部
高等裁判所刑事判例集 6巻11号 1509頁
(弁護人の主張に対する判断〉
本件強姦事実に対する被害者の告訴〈昭和二十八年四月二十六日付)の効力に関し弁護人より後記のような主張があったから以下順次右主張に対する当裁判所の判断を示すものである。
弁護人は、本件告訴人nは当時満十八年の未成年者で訴訟行為をな能力を欠いて居るから本件告訴はその効なきものであると主張するが、有効に告訴をなす為には告訴人は単に意思能力を有ナれば足りるものと解すペき処 右nの司法瞥察員に対ナる告訴調書(昭和二十八年四月二十六日付〉の供述記載に徴しても当時告訴人が右能力を有して居たことにつき疑いた容れる余地がないから弁護人の此の主張は採用に値しない。
次に弁護人は、同告訴人は之より先、同年同月二十二日付司法警察員に対する上申書により被告人等に対する告訴権を地棄して居るから英の後の告訴はその効なきものであると主援するが、右上申書の供述記載を精査するに明確なる告訴権放棄の意思表示は認め難く、仮にかかる意思表示が認められるとしても公法上認められた告訴権の拠棄はその効なきものと解するを相当とするから弁護人の右主援は主張自体失当と一買うぺきであろう。

強姦窃盗外国人登録法違反被告事件
名古屋高等裁判所昭和28年10月7日
高等裁判所刑事判例集6巻11号1503頁
高等裁判所刑事判決特報33号52頁
 控訴趣意第一点について
告訴権は刑事訴訟法上被害者に認められた権利であつて本件の如き所謂親告罪にあつては告訴の存在は公訴提起の必要的条件をなし、その法律関係は国家と被害者との間に存する公法上の関係であつて同法に告訴の取消に関する規定があるに拘らず、これが抛棄について何等の規定を設けなかつた点より観察すれば告訴前にその権利を抛棄することは法の認めない精神であると解するを相当とする、然らば即ち仮りに論旨主張の如く被害者より警察官に提出した上申書中告訴権抛棄の意思を含むものであることを認め得るとしても、これに因り法律上何等告訴権消滅の効果を生ずるに由なきものと謂はざるを得ない、論旨はその理由がない。
 同修二点について
(裁判長判事 羽田秀雄 判事 鷲見勇平 判事 小林登一)