被害者数の増減はあてになりません。最近ですからね、警察が児童ポルノの「被害者」を数えるようになったのは。
数えろと言ってるのに数えなかったんだからそりゃ増えるわな。
なお、刑事裁判所では、製造罪の被害者は数えるけど、それ以外の児童ポルノ罪では被害者を数えない(認定しない)ことになっています。立法の体裁からわいせつ図画罪(被害者がいない)と混同したという経緯があって、現在でもそれを改めようとしない。
判例上「児童ポルノ罪全部に被害者を観念する(個人的法益説)」というのは「奥村弁護士独自の見解」とされています。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051103k0000m040175000c.html
今年上半期は112人と、前年同期の3倍以上。
623人の内訳は、未就学7人▽小学生181人▽中学生199人▽高校生189人▽有職・無職少年47人
「未就学7人」だそうです。この辺になると、性欲刺激要件(2号、3号)が微妙です。
このくらいの年齢に対する強制わいせつ罪と製造罪とは観念的競合。
参考判例
6歳児童をモデルにした3号児童ポルノについては判例があります。
大阪高裁 平成14年9月10日
第4事実誤認ないし法令適用の誤り(控訴理由第9)及び事実誤認(控訴理由第10)の主張について
論旨は,①原判決は,本件ネガにつき,単なる裸体ではなく両脚を開かせ性器を露出させた露骨な描写をしており,一般人の性欲を興奮させ又は刺激すると判示しているが,被害児童は6歳であって,このような児童の姿態からは,どのようなポーズを取らせてみても,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとは解されず,本件ネガが児童ポルノに当たるとはいえず(控訴理由第9),②被告人も,本件ネガが一般人の性欲を興奮又は刺激されるものであるとの認識はなかったから,被告人に故意があるとはいえないのに(控訴理由第10),本件ネガが児童ポルノに当り,被告人にもその認識があったとして児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤りがある,というものである。レかしながら,捜査報告書(「差し押さえにかかる証拠品ネガフィルムの焼付けについて」,原審検甲5,6号証)によれば,被害児童は当時6歳の女児であるが,被告人によって撮影された被害児童の姿態は,幼女のあどけない自然な裸の姿ではなく,寝そべって両足を開いたり,足を立てて座ったりして,ことさら性器を露出するなど煽情的なポーズをとっており,これが鮮明に撮影されているものであるから,一般人の性欲を興奮又は刺激することのある態様のものと認められ,本件ネガが児童ポルノに当たることは明らかであり,また,上記のような被害児童のポーズを被告人がとらせたものであるから,これを撮影した被告人に児童ポルノ製造の故意があることも明らかであり,被告人に対し児童ポルノ製造罪の成立を認めた原判決に事実誤認ないし法令適用の誤りがあるとは認められない。 論旨は理由がない。
追記
警察を弁護するようですが、統計を取る場合の被害児童は人物特定ができたものしかカウントできない。でないと、同一被害児童をA県警、B県警、C県警・・・とバラバラにカウントしてしまい、人数を数えたことにならないから。
奥村弁護士が主張している「児童の特定」というのは、児童ポルノ事件の刑事訴訟において、ある児童ポルノに撮影されている人物を、「訴因特定」の問題として仮称で甲乙丙と区別して、被害態様や被害児童の人数・年齢を、事実認定、罪数、量刑に反映させろというものである。別に、被害児童の人定を要求するものではない。
すなわち、児童ポルノとされる物から、
- 被害児童甲 氏名不詳 推定年齢13才
- 被害児童乙 氏名不詳 推定年齢12才
- 被害児童丙 氏名不詳 推定年齢17才
などというふうに被害児童を抽出して、
を観念し、各被害者の被害の程度等を論じようとするものである。