児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護士川本瑞紀「現代女性は,合意がないセックスはレイプ(強制性交)だと思っていますこの感覚と,刑法上「強制性交」と評価される行為とは, あまりにもかけ離れているので,相談が来たときに必ず被害者に, 「ご説明メモ」というペーパーを見せています。」捜査研究812号

 強姦弁護人にも参考になる。

犯罪被害者支援と弁護士実務
第13回強姦神話という迷信
犯罪被害者支援弁護士フオーラム(VSフォーラム)
弁護士川本瑞紀
2 レイプに関する現代女性の認識
現代女性は,合意がないセックスはレイプ(強制性交)だと思っていますこの感覚と,刑法上「強制性交」と評価される行為とは, あまりにもかけ離れているので,相談が来たときに必ず被害者に, 「ご説明メモ」というペーパーを見せています。
これは,小林充・香城敏麿編「刑事事実認定一裁判例の総合的研究(下)』(判例タイムズ社)の第8章「実行行為等」のうち, 「強姦の成否」部分の要点のみを抜き出したものです。この本は, 司法研修所の刑事裁判の授業で,読んでおくように勧められるものです。被害者には「この本を使って裁判官も検察官も弁護人も勉強をしているので,捜査段階でも公判に進んでも, この本の枠組みで判断されていきますよ」と説明をしているのです(ご参考までに「ご説明メモ」を「資料」として末尾に掲載します。)。
・・・
資料)
ご説明メモ(『刑事事実認定一裁判例の総合的研究(下)』より)
第1  刑事事件において裁判所が想定する典型的な態様の強姦行為
・夜間人通りのない暗がりでいきなり或いは待ち伏せして通行中の婦女子に姦淫目的で襲いかかる場合
・被害者と一面識もない者が自動車にむりやりこれを引きずり込み或いは甘言をもって乗車させて拉致したうえ,人里離れた場所や孤絶したモーテルで犯す場合
・夜間一人住まいの女性の居室に侵入,就寝中であった被害者の懸命の抵抗を抑えつけて挑む場合
・いわゆる輪姦の場合

第2  強姦事件の刑事裁判において,争点となる可能性が高い要素
①性行為について被害者の承諾があったかどうか
②暴行脅迫が,被害者の「抗拒を著しく困難ならしめる程度」に達していたかどうか
③強姦の犯意で未遂に終わったのか,強制わいせつのみの目的であったか
④犯人性
第3 第2①について,裁判所の判断基準
ア暴行脅迫の程度態様が強烈なものであったか,被害者の抵抗が積極的で激しく強いものであったか
イ(アが否定され得る場合)被害者のおかれた具体的状況が,抵抗できないような又は拒否的な態度を取れないようなものであったか
ウ被害者の犯行中における挙動,所作の中にかりそめにも性行為を容認したのではないかと窺わせるような節はなかったか。逆に拒絶の意思を陰に陽に示す振る舞いがあったかどうか。
○泣く,大声で叫ぶ,足をばたつかせる,蹴る,逃げようとする, 「いや」と言う。
△身を固くする, いやいやして首を振る,身をよじる,両足を固く閉じて開こうとしない
エ(アが否定され得る場合)被害者がどのような経緯,心理状況,四囲の事情からそういう挙動に出たかなど自然で合理的な説明がつきうる背景があったかどうか。
例:抵抗できぬ弱みを握られていたかどうか(心理状況)
 助けを求めても無駄な場所、逃げ出せない状況(四囲の事情)
オ被害者の届出,通報,告訴が犯行直後になされたかどうか
力被害者の|司意承諾を凡そ予期或いは期待できるような経過なり事情があったかどうか,その他情交がVi穏裡に行われたと考えるのを妨げるような事情がなかったか。
第4 第2②について,裁判所の判断基準
相手方の年令,性別, 素行,経歴等やそれがなされた時間場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴って相手方の抗拒を不能にし又は此れを著しく困難ならしめるものであれば足りる。