児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

長野県子ども支援委員会による検証

 深夜同伴罪って、形式犯で、被害があるかどうか。

長野県子どもを性被害から守るための条例
(定義)
第3条 この条例において「子ども」とは、18歳未満の者をいう。
2 この条例において「性被害」とは、次に掲げる行為による身体的又は精神的な被害をいう。
(1) 刑法(明治40年法律第45号)第176条から第178条まで、第181条、第225条(わいせつの目的に係る部分に限る。)及び第241条の罪に当たる行為
(2) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第60条第1項の罪に当たる行為
(3) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法
律(平成11年法律第52号)第4条、第7条並びに第8条第1項及び第2項の罪に当たる行為
(4) 第19条第1項の罪に当たる行為
(5) 前各号に掲げる行為のほか、自己の性的好奇心を満たす目的で犯した罪に当たる行為
(6) 性的搾取、性的虐待その他の性の乱用に係る行為で前各号に掲げる行為に該当しないもの
(性被害を受けた子どもへの支援)
第14条 県は、性被害を受けた子どもが心身に受けた影響から早期に回復し、当該子どもが健やかに成長するため、関係行政機関、医療機関等と連携協力し、当該子どもの身体的、精神的な負担等の解消又は軽減に資する医療の提供、福祉に関する相談等の支援体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、性被害を受けた子どもが安心して適切な支援を受けられるよう、支援を行う者に対する研修の実施その他の必要な支援を行うものとする。
(罰則)
第19条
1第17条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

 「性被害」については、14条の支援の対象となるものの、長野県子ども支援委員会(長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例)とはリンクしてないですよね。警察が生の事件の捜査情報を提供することは期待できないと思います。

長野県の未来を担う子どもの支援に関する条例
第3章 子どもに対する人権侵害の救済等
(人権侵害の救済)
第18条 いじめ、体罰等による人権侵害(以下この章において「人権侵害」という。)を受けた、若しくは受けている子ども又は当該子どもに係る保護者は、長野県子ども支援委員会に対し、その救済を申し出ることができる。
2 長野県子ども支援委員会は、前項の規定による申出を受けたときは、当該申出に係る事案に関し法令に基づく救済制度が存する場合その他の規則で定める場合を除き、その事案について調査審議し、当該申出をした者に当該調査審議の結果及びその理由を通知しなければならない。
3 前項の場合を除くほか、長野県子ども支援委員会は、子どもに対する人権侵害があると認められるときは、その事案について調査審議することができる。
4 長野県子ども支援委員会は、前2項の規定により子どもに対する人権侵害に関する事案について調査審議を行うに当たっては、当該事案に係る学校関係者等その他の関係者に資料の提出及び説明を求めることができる。
5 長野県子ども支援委員会は、第2項又は第3項の規定により子どもに対する人権侵害に関する事案について調査審議した結果必要があると認めるときは、知事又は教育委員会に対し、次に掲げる事項について勧告することができる。
(1) 子どもに対する人権侵害が行われないようにするため必要な措置を講ずること。
(2) 県の機関以外の関係者に対し前号の措置を講ずるよう要望その他の行為を行うこと。
6 知事又は教育委員会は、前項の規定による勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。
(長野県子ども支援委員会)
第19条 子どもに対する人権侵害に関する事項について調査審議するため、長野県子ども支援委員会(以下この条において「委員会」という。)を設置する。
2 委員会は、前条の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、知事の諮問に応じて子どもに対する人権侵害に関する事項を調査審議するものとする。
3 委員会は、委員5人以内で組織する。
4 委員は、学識経験者のうちから知事が任命する。
5 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員会に、特別の事項を調査審議するため必要があるときは、特別委員を置くことができる。
7 この条に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、知事が定める。

「性被害」条例違反事件 県が支援委に報告 検証へ、足りぬ情報―委員指摘 審議次回持ち越し
2017.05.11 信濃毎日新聞
 県は10日の県子ども支援委員会(会長・木村宜子佐久総合病院児童精神科医)で、県子どもを性被害から守るための条例違反(深夜外出の制限)の疑いで県外の男性2人が4月に初めて摘発された事件の背景などについて報告した。ただ、委員から「検証するには県が報告した情報だけでは足りない」との意見が出て、次回7月の支援委に持ち越して検証することを決めた。【関連記事34面に】
 県警は4月、県内の18歳未満の少女を深夜に誘い出し、駐車した車に一緒に乗ったり、ホテルに泊まったりしたとして、同条例の罰則規定を初めて適用して男性2人を書類送検。このうち1人は10日までに罰金30万円の略式命令を受けた。
 支援委は、人権侵害に遭った子どもの救済に取り組む県の付属機関で、精神科医や弁護士、臨床心理士ら5人で構成。この日は県の報告を基に、2人の少女が深夜外出した事件の背景や、少女が適切なケアを受けられたかなどを検証する予定だった。
 事件の検証に関する部分は非公開で議論。会合に県警の関係者は出席せず、県が県警から提供された情報を基に、事件の背景などを報告した。書類送検された2件のほか、今年1月から3月末までに、県警に性被害の相談があったものの摘発には至らなかった2件についても説明した。
 県は書類送検された2件の事件を巡り、少女がなぜ深夜外出するに至ったのかや、支援委でどのような意見が出たかなどについて、青少年育成団体の代表者や教員ら15人で構成し青少年育成や保護の施策を審議する「県青少年問題協議会」の6月の会合で明らかにする予定としている。
 一方、県はこの日の支援委で、いじめや虐待など子どもを巡る相談を受け付ける「県子ども支援センター」の2016年度の運営状況を報告。相談件数は828件で、開設初年度の15年度と比べ36%減った。県は開設当初は関心が高かったため、昨年度は相談件数が減ったとみている。

焦点=「性被害」条例違反の県報告 冤罪の恐れ・子どもへのフォロー 多角的議論へ問われる姿勢
2017.05.11 信濃毎日新聞朝刊
 昨年11月に処罰規定を含めて全面施行された県子どもを性被害から守るための条例。県は条例に基づき初めて書類送検された事件を10日の県子ども支援委員会に報告したが、委員側は情報が足りないとして検証を次回に持ち越した。県は支援委について、第三者が条例の運用状況を検証する組織と位置付けており、専門家は多角的で詳細な情報が必要と指摘。情報公開の在り方など県側の姿勢が早速問われる事態となった。(牧野容光)

 「委員から足りないと指摘された情報を県警に要請し、次回の支援委で再度報告、検証する」。県の轟寛逸こども・若者担当部長は事件の検証を巡る委員側からの指摘について、会合後の取材にこう述べた。
 県はこの日の会合に県警側に出席要請はせず、県警から提供された情報を報告した。
 「しっくりこない」。関係者によると、県警が出席せずに県が事件について説明した内容の不十分さを指摘、不満を投げ掛ける委員がいたという。

 轟担当部長は取材に「県として事件を検証すべきだと判断したため、事件の報告も県警ではなく、県がすべきだと考えている」と説明した。

 だが青少年問題に詳しい甲南大法科大学院園田寿教授は取材に「県が間接的に説明するのではなく、県警が出席し、今回の事件について詳細に説明すべきだ」と指摘。「検証の基となる情報自体が不十分では、実りある議論はできない」と話す。

 男性2人のうち1人については、佐久区検が10日までに佐久簡裁に略式起訴し、佐久簡裁は罰金30万円の略式命令を出した。公開が原則の通常の刑事裁判と違い、この手続きは非公開のため、事件の背景を巡る検証は支援委にかかる面が非常に大きい。
 県警は今回、条例の罰則規定のうち「淫行処罰規定」でなく、立件のハードルが低い「深夜外出の制限」で摘発したが、自由な恋愛を阻害し、冤罪(えんざい)を生む恐れは変わらない。一方、子どもの人権侵害が認められたケースでは、適切なケアが受けられたかどうかフォローが必要だ。それには、県や県警が十分な情報を支援委側に提供する必要がある。
 子どもの権利条約に詳しい山梨学院大法科大学院の荒牧重人教授は、県警情報のみに頼らず、多角的な視点での検証の必要性も指摘する。「支援委の委員が直接、(深夜外出した)少女の声を聞けなくとも、県子ども支援センターの相談員などが少女の声を聞き、支援委の検証に役立てるべきだ」としている。

 [県子ども支援委員会]
 2014年7月に制定された「県の未来を担う子どもの支援に関する条例」に基づき設置。いじめ、体罰など子どもに対する人権侵害について調査、審議し、知事や教育委員会に必要な措置を勧告できるとしている。県は16年11月に「県子どもを性被害から守るための条例」が全面施行されるのに当たり、同条例により容疑者が逮捕された事案などについて、子どもの人権侵害への対応の観点で、子ども支援委員会で個別事案を詳細に検証するとした。