わいせつの定義はどうなるんでしょう?
発表年 | 著者 | 書名 | 保護法益 | わいせつ定義 | 傾向犯・性的意図に関する記載 | 性的意図要否 |
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1996 | 川端博編 | 刑法総論現代法学双書12 | p74(担当:小野寺一浩)②傾向犯における傾向傾向犯とは、行為者の心情または内心の傾向を主観的構成要件要素とする犯罪である。たとえば、強制猥褻罪は、猥褻の傾向を主観的構成要件要素とする傾向犯である。この「傾向」を欠く場合には、犯罪は成立しない。たとえば、報復目的で女性を裸にして写真をとったとしても、強制猥褻罪は成立しない。自己の性欲を刺激、興奮させ、または満足させるという性的傾向の下にそのような行為を行なった時にはじめて、強制猥褻罪が成立する(最判昭四五・一・二九刑集二四・一・一)。 | 必要説 | ||
1987 | 川端博 | 事例式演習刑法1987主観的違法要素 P40 | 羞恥心 | 強制猥褻罪は傾向犯ではないと解すべきであろう。というのは、本罪における保護法益は「被害者の差恥心」とみるのが妥当だからである(平野一二八頁)。すなわち、客観的に見て被害者の性的自由が害されていれば足り、行為者の動機・目的を問題にする必要はないことになる。・・客観的にみてBは被害者の性的蓋恥心を害している以上、強制わいせつ罪が成立すると解すべきである(平野・一二八頁。なお、曽根・現代刑法論争Ⅱ七五頁以下も同旨と見てよいであろう)。 | 不要説 | |
2009 | 川端博 | 事例式演習刑法第2版 | 「性的差恥心」・性的意思決定の自由 | p42しかし、強制わいせつ罪は傾向犯ではないと解すべきである。なぜならば、本罪における保護法益は被害者の「性的差恥心」・性的意思決定の自由と解するのが妥当だからである。したがって、客観的に見て被害者の性的意思決定の自由が害されていれば足り、行為者の動機・目的を問題にする必要はない」とになる。 | 不要説 | |
2016 | 川端博 | レクチャー刑法各論第4版 | p50しかし,その本質は,個人の人格的自由の一種としての性的自由を侵害する点にあり,本罪は,個人的法益に対する罪として捉えるべきです。 | わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいいます(金沢支判S36.5.2)~ 本罪のわいせつ行為は被害者の性的自由の侵害の観点から把握されるべきですから、性的風俗の保護を主たる目的とする公然わいせつ罪におけるわいせつ行為ちがその内容を異にします。 | 傾向犯説ではないとする立場 | 不要説 |
2013 | 川端博 | レクチャー刑法各論3版 | p54しかし,その本質は,個人の人格的自由の一種としての性的自由を侵害する点にあり,本罪は,個人的法益に対する罪として捉えるべきです。 | 徒に性欲を興奮または刺激せしめ,且つ普通人の正常な性的蒸恥心を害し,善良な性的道徳観念に反すること」をいいます(名古屋高裁金沢支判昭36. 5 . 2下刑集3巻5=6号399頁)。これは,通常は,性欲を興奮または刺激させようとする意図のもとになされますが,客観的には,一般人の正常な性的蓋恥心を害し善良な性的道徳観念に反する行為がなされることを要する趣旨であると解されます。 | 判例・通説によりますと,本罪は傾向犯であると解されますから,本罪の行為は行為者の性欲を刺激興奮させ, または満足させるという性的意図のもとになされる必要があります。したがって, もっぱら報復または侮辱・虐待の目的で女性を強制して全裸にさせその姿態を撮影する行為は,本罪を構成せず強要罪を構成するにすぎないとされることになります(最判昭45・l 。29刑集24巻1号1頁)。しかし,本罪は傾向犯ではないと解する説によりますと,上記の行為は本罪を構成することになります。わたくしは, この立場に立っています | 不要説 |