児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

サイバー補導における刑事と児童の攻防戦〜吉川誠司「青少年とその保護者からの相談傾向に見る今後の課題」警察学論集69巻10号

 ホットラインセンターがSNSを見物していてこれだけのことがうかがえるようです。

6 サイバー補導の実施状況
サイバー補導の実施状況
警察庁発表平成25年から26年までのサイバー補導による補導児童は597人。
補導した児童の目的は援助交際が366人、下着売買が223人、両方が8人。
補導児童の6割は非行・補導歴なし。
警察が現場で接触できなかった件数は11,955件うまく補導に至った場合はよいが、彼女らの、サイバー補導に引っかからないための情報リテラシー能力は侮れない。
もこのような実態を踏まえ、警察では、サイバー補導を強化して、深刻な被害に遭う前に児童を保護している。
警察庁の発表でもかなりの数の児童が保護されているのが見て取れる。
それはそれで非常に良いことだと思うので今後もやっていただきたいが、敵もさる者で、サイバー補導を受ける側の少女たちもそう簡単に補導員に引っかかるものかと、「Twitter」で警察対策を募集していたりする。
これ(上図) もそうだ。
何かアイデアがないかと募集したところ、「相手に顔写真を要求したらどうか」というアドバイスがなされている。
要するに、「まず実際に会う前の段階で写メを送ってくれ」ということである。
普通に買春しようとする大人はどこかから拾ってきたイケメンの写真を送ったりするが、さすがに補導員がそういうことはできない。
だからといって自分の写真は、よほど自信がない限りは相手は応じてくれないだろうから、このような対抗手段をとられるとなかなか難しいのではないかと思う。
また、「サイバー警察のアカウントを分かっていたら、それを教えてくれ」という投稿もある。
「このアカウントはサイバー補導をやっている捜査員だよ」と、見抜かれてしまうと、それらが要注意アカウントとしてリスト化されて流通してしまうということもあり得る。
このような実態も現実にあるということをわきまえた上で、相手の上を行く補導の手法を考えなければならない。
以前にインターネット・ホットラインセンターで見たゲイの掲示板サイトは、無料で見られるエリアにはわいせつな違法画像はないのだが、メンバーエリアに入ると無修正のものがあるのだろうとうかがえた。
しかし、メンバーエリアに入るためのパスをもらうためには、相手が指定した銘柄のボックスティッシュを背景に自分の裸を自撮りして画像を何枚か送れというルールがあり、さすがに私たちが自分の裸の写真を撮って送るわけにはいかないので遠慮したということもあった。
サイバー補導への警戒にも対応を強めていく必要があると思う。
他にも、「サイバー補導というか捜査かな−? と思わせてくれるDMの特徴晒しマース」として、「よくありがちなのが、写真売ってるの?とか下着売ってるの? とか援交してるの? とかとにかく質問攻め、これが怪しい。写真送つてよとか。でも、決して援交してとはみずからは言わない。」というサイバー補導の補導員の書き込みの特徴が掲載されている。
これはおとり捜査になってしまうからということであろうか。
このような特徴を相手は把握しているので、これに合致するようなアプローチをしていたら相手はその書き込みをサイバー補導であると見抜いてしまう。
もう1つ、【裏作法142】として、「日本の警察ではおとり捜査は禁止されているため犯意誘発型の発言はしない、だから相手からは決して誘ってこない、抽象的な表現しか使わない場合には捜査員の可能性がある」、また、「自称年齢が18歳未満でなければ補導対象外なので年齢を偽っておけばいい」などの助言も掲載されていた。
こういったところを補導する側が把握しておく必要があるだろう。