児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

困惑による淫行

 売春防止法の「困惑」を参考にするんでしょうね。

注釈特別刑法第8巻 売春防止法
二「人を欺き」とは、刑法の詐欺罪における「人ヲ欺岡シテ」と同じ意味であり、人に虚偽の事実を摘示し、または事実を際して錯誤に陥れることをいう
三「困惑させて」とは、暴行、脅迫に当たらない程度の方法によって、人に心理的威圧を加え、または人の自由意思を拘束することによって、精神的に自由な判断ができないようにすることをいう()。債権債務関係、雇用関係などにからめて、義理人情の機微にふれ、恩義をひけらかし、あるいは威力を示して売春を勧めるような場合がこれに当たるが()、人を困惑させる行為に当たるか否かは、当該言動のほか、その前後の事情、相手方の年齢、知能・性格および置かれた環境などを総合して判断しなければならない( )。勿論、困惑させる行為が存在しなければならないから、売春婦が、何ら理由もないのに雇主から報復されると信じ込んで自発的に売春したときは、本罪に当たらない()。判例としては、勅令九号に閲し、「石川県鳳至郡宇出町のような僻遠の地から東京都玉の井のような特殊な個所に周旋者により連行された淫行の習癖なき少女( 15~17歳)に対してその雇主が単に商売(売淫行為)が厭なら帰って呉れというのみで、他に之に即応した好意的な言動を示さないような場合には、その前後の事情、相手方の性格及び置かれた環境等に照し、これに依り相手方に心理的威迫を加えその自由意思を拘束することがあり得ると考えるを相当とし、… … 仮に右両女が被告人方に来る前に… … 売淫を承諾した事実があったとしても、之により両女が… … 自ら進んで売淫行為を為したものであると云うことは当らないのみならず… … 右両女を困惑させて売淫せしめたことを認定するに足り」るとしたもの( )、本条に関し、料理店経営者が女給の一七歳の少女に、「この人は私の知っている人だし、こういう人に好かれなくちゃ駄目だ」などといって暗に売春を勧める言動をした場合()、料理店経営者が雇い入れている一七歳の少女に、「この人は店の大事なお客さんで、どうしても泊ると言っているのだから泊めてやりなさいよ」、「こんな遅く実家に帰れるものではない、警察の人に見つかると変に思われるよ」などといって暗に売春を勧める言動をした場合( )に、それぞれ困惑させたことに当たるとしたものがある
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売春防止法「特別刑法4」
〔 解説〕
『人を欺き、もしくは困惑させてこれに売春をさせ、または親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた』者は、三年以下の懲役またほ一〇万円以下の罰金に処する(七粂一項)。情状により懲役と罰金を併科することもできる( 一五条前段)。未遂罪も処罰する(七条三項。一五条後段)。
人を欺きとは、人に虚偽事実を摘示し、または真実を隠蔽して錯誤に陥れることをいう。困惑させてというのは、「脅迫」に至らない心理的威迫またほ自由意思の拘束によって、自由な判断を失わせることである。債権債務関係・雇用関係等特殊な関係を利用して義理人情の機微につけ込むのがこれに当たることが多いが、人を困惑させる言動に当たるかどうかは、当該言動の内容はもとより、その前後の事情、相手方の年齢・性格および置かれた環境等を総合して決すべきである。雇主が婦女の売春行為に対して特に干渉しない場合でも、婦女が慣行的雰囲気において前借金等による心理的拘束を受けているのを利用して、その意に添わない売淫行為をさせた場合には、本罪が成立する(名古屋高裁昭和二五・六・一二、判決特封ニー・五四。なお、宇都宮家裁昭和三三・七・七、家裁月報一〇・七・九〇)。

11月県会一般質問 淫行処罰条例モデル 「困惑」定義めぐり議論
2015.12.05 信濃毎日新聞
 県会11月定例会の一般質問は最終日の4日、青少年との性行為に処罰規定を盛った条例モデルで、18歳未満を「困惑させて」または「困惑に乗じて」行う性行為やわいせつ行為を処罰対象としていることが議論になった。県側は「困惑」の定義として「精神的に自由な判断ができない状況」を想定。具体例として「家出中の児童を家に泊め(行為に)応じなければ追い出して居場所をなくす」「車に乗せて一人では帰れない状況に置く」ことを挙げた。
 備前光正氏(共産党塩尻市)は「困惑」は通常の恋愛でもあり得るとし、16歳以上の女性が結婚できる民法との整合性もただした。青木弘県県民文化部長は「(条例は)
 真摯(しんし)な恋愛は規制しない。婚姻しようとしている場合は処罰対象にはなり得ない」と答弁した。捜査で「困惑」をどう判断するかについて、尾崎徹県警本部長は
 「法令と証拠に基づいて判断することになる」との見解を示した。
 条例モデルは「威迫し、欺き、もしくは困惑させ、またはその困惑に乗じて」行う性行為やわいせつ行為を、2年以下の懲役または100万円以下の罰金としている。

 尾崎本部長は、18歳未満とのみだらな性行為を禁じた東御市青少年健全育成条例違反による摘発事例は、県警が2012年に教諭を検挙した2件以外に、13年春に県内在住の児童が被害者で、大阪府警が摘発した事例が1件あると説明した。今井正子氏(無所属、佐久市北佐久郡)への答弁。

山口県青少年健全育成条例の解説s61 
(2) 本条第l項第2号は、脅少年の精神的、知的な未熟さや情緒的な不安定さに乗じて性行為又はわいせつの行為をする場合であり、例えば、家出中の少女が金銭も宿泊する所もなく途方に暮れているのに付け込んで性行為又はわいせつの行為をする場合が含まれる。
ア「欺き」とは、脅少年をだまして真実と合致しない観念を生ぜしめる場合をいうものである。
イ「困惑させ」とは、暴行脅迫に至らない程度の心理的威圧を加え、又は自由意志を拘束するζ とによって精神的に自由な判断ができないようにすることをいうものである。
ウ「因感に乗じて」とは、直接困惑させなくても、既に上記の困惑に陥っている状態に付け込むことをいうものである。
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大阪府青少年健全育成条例の解説h26
2 第2号
性的欲望を満足させるため、心身ともに未熟な青少年を、正常な判断を行わせないような状態において、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「専ら」とは、概ね7割ないし8割程度以上をいうが、「専ら」に該当するかは、当該者の行為の態様、動機などを総合的に勘案することになる。
イ 「満足させる目的で」とは、行為者自らだけでなく、第三者の性的欲望についても含めるものである。
ウ 「威迫し」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。例えば、暴力団の構成員であると言ってすごむことなどが挙げられる。
エ 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいう。例えば、婚姻をするつもりはないのにもかかわらず婚姻をするつもりであると言うことなどをいう。
オ 「困惑させて」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせることをいう。例えば、雇用や金銭融通の恩義その他義理人情の機微につけ込むことや、職場の上司、教師などの立場を利用することにより、青少年が拒否の意思表示をできなくすることなどをいう。