奈良地裁でもこんな訴因がありました。
起訴状にこう書いてあるから、判決もこうなっています。漫然と起訴状を丸写しにするからこうなる。
黙って聞いてる弁護人もどうかと思うんですが、罪にならないので、控訴すべき事案です。
(罪となるべき事実)
被告人は,
平成24年1月24日,大阪府大阪市北区西天満1番1号所在の露天風呂「西天満温泉」において,入浴中の女児が18歳に満たない児童であることを知りながら,他人に提供する目的で,同児童の裸を万年筆型のビデオレコーダーで撮影しその電磁的記録を同レコーダー内蔵の記憶装置に記録して児童ポルノを製造したものである。
(証拠の標目
省略
(法令の適用)
罰条
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条2項,1項,2条3項3号
刑事訴訟は訴因が審判対象なわけで、書いてる事実があるという主張で、書いて無い事実は審判外です。
弁護人が訴因に書いて無いことを主張すると、「訴因外事実の主張であって違法だ」なんて言われます。
児童ポルノ法は、3号ポルノについて
第2条(定義)
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
と定義するのだから、
同児童の裸であって「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」を万年筆型のビデオレコーダーで撮影しその電磁的記録を同レコーダー内蔵の記憶装置に記録して児童ポルノを製造したものである。
と記載しないと、3号ポルノの製造罪は成立しません。
女児の裸だから「性欲を興奮させ又は刺激するもの」というかもしれませんが、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」という要件と「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の要件は別個なので、別々に書かないとだめです。
国会でも「水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや医学図書に掲載された児童の身体を撮影したもの」を除外する重要な要件だと説明されています。
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」のなかに、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とそうでないものとがあって、前者のみを処罰する趣旨です。
171-衆-法務委員会-12号 平成21年06月26日
○葉梨議員
性欲を興奮させ刺激させるということについては、また後の質疑でもあろうかと思いますけれども、基本的な当時の考え方としては、やはり医学書ですとかあるいは家庭内の成長の記録、こういったものは除かなきゃいけない。その中で、性欲を興奮させ刺激させるというような法令用語もあった、あるいは運用の積み重ねもある、現実に幾つかの判例も出ているわけでございまして、その言葉を使わせていただいたわけです。
・・・・
○保坂委員 見ていないのに、廃棄した方が安全だ、そういうふうに言えるんでしょうか。(葉梨議員「違う、違う」と呼ぶ)ちょっと待ってください。その後議論します。
ちょっと警察庁にまず基本的なことを聞きます。
三号ポルノの要件の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こうありますけれども、これは統一したいわゆる認定基準のようなものを設けているんでしょうか。○園田政府参考人 お答え申し上げます。
いわゆる児童ポルノ、三号ポルノに当たるかどうかでございますけれども、これにつきましては、個別具体的な事案に即しまして、本法の制定趣旨あるいはこれまでの裁判例等を踏まえまして、児童ポルノに該当するかどうかを総合的に判断しているところでございます。○保坂委員 今の答弁は何も言っていないのに等しいんですね。ケース・バイ・ケースで見ると。
警察庁からきのういただいたコンメンタールでは、これは一応、衣服の全部または一部をつけない児童の姿態を描写したものの中には、水浴びをしている乳幼児の自然な姿を撮影したものや医学図書に掲載された児童の身体を撮影したものが含まれることになり、このようなものは除外する、こうありますよね。そういうふうに具体的に除外しているものがあるんだと答えてもらわなければ困るわけです。
145-衆-法務委員会-11号 平成11年05月12日
○大森参議院議員 このような問題にお答えするのは非常に困難なのですが、通常の下着、通常のシチュエーションというのは、多分枝野委員と私の頭の中で描いているものが異なるかもしれません。そういったことで、こういう事案につきましては、具体的な口頭で言われたことについて、その場合はということはなかなか言いにくいものがございます。
こういう判断につきましては、あるものが児童ポルノに当たるか否かについては、あくまで個別具体的な事例に基づきまして、この法案の要件に該当するか否か総合的に判断されるべきものでありまして、最終的には裁判所の認定によることになります。したがって、確定的にお答えすることは困難であるということをまず御理解いただきたいと思います。
それから、通常のおふろのシーンといいますと、これは衣服はつけていない子供になると思いますけれども、三号ポルノにつきましては、その要件といたしまして「性欲を興奮させ又は刺激する」、こういうような要件がついております。子供がおふろに入っている姿を見て通常、一般人は性欲を興奮させ、刺激するというところまで至らないと思いますので、そういうところから当たらない場合が多いのではないかというふうにお答えできると思います。