児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

前記の事実関係の下において、被上告人がaと肉体関係を持った当時、aと上告人との婚姻関係が既に破綻しており、被上告人が上告人の権利を違法に侵害したとはいえないとした原審の認定判断は、正当として是認することができる(最判H8.3.26)

 テレビで弁護士が言ったからって、奥村に問い合わせて来る人もいます。
 なにをもって「婚姻関係破綻」かについては、判例を見て下さい。

最高裁判所第3小法廷判決平成8年3月26日
最高裁判所民事判例集50巻4号993頁
家庭裁判月報48巻9号34頁
最高裁判所裁判集民事178号1051頁
裁判所時報1168号103頁
判例タイムズ908号284頁
判例時報1563号72頁
戸籍時報634号65頁
ジュリスト1095号167頁
ジュリスト臨時増刊1113号76頁
別冊ジュリスト160号200頁
判例タイムズ924号85頁
判例タイムズ臨時増刊945号136頁
判例タイムズ臨時増刊996号39頁
法学教室192号98頁
法律時報別冊私法判例リマークス14号68頁
法律のひろば49巻9号41頁
法令ニュース31巻9号18頁
民商法雑誌116巻6号94頁

主文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理由
上告代理人森健市の上告理由について
一原審の確定した事実関係は次のとおりであり、この事実認定は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。
1上告人とaとは昭和四二年五月一日に婚姻の届出をした夫婦であり、同四三年五月八日に長女が、同四六年四月四日に長男が出生した。
2上告人とaとの夫婦関係は、性格の相違や金銭に対する考え方の相違等が原因になって次第に悪くなっていったが、aが昭和五五年に身内の経営する婦人服製造会社に転職したところ、残業による深夜の帰宅が増え、上告人は不満を募らせるようになった。
3aは、上告人の右の不満をも考慮して、独立して事業を始めることを考えたが、上告人が独立することに反対したため、昭和五七年一一月に株式会社A(以下「A」という)に転職して取締役に就任した。
4aは、昭和五八年以降、自宅の土地建物をAの債務の担保に提供してその資金繰りに協力するなどし、同五九年四月には、Aの経営を引き継ぐこととなり、その代表取締役に就任した。しかし、上告人は、aが代表取締役になると個人として債務を負う危険があることを理由にこれに強く反対し、自宅の土地建物の登記済証を隠すなどしたため、aと喧嘩になった。上告人は、aが右登記済証を探し出して抵当権を設定したことを知ると、これを非難して、まず財産分与をせよと要求するようになった。こうしたことから、aは上告人を避けるようになったが、上告人がaの帰宅時に包丁をちらつかせることもあり、夫婦関係は非常に悪化した。
5 aは、昭和六一年七月ころ、上告人と別居する目的で家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てたが、上告人は、aには交際中の女性がいるものと考え、また離婚の意思もなかったため、調停期日に出頭せず、aは、右申立てを取り下げた。その後も、上告人がAに関係する女性に電話をしてaとの間柄を問いただしたりしたため、aは、上告人を疎ましく感じていた。
6aは、昭和六二年二月一一日に大腸癌の治療のため入院し、転院して同年三月四日に手術を受け、同月二八日に退院したが、この間の同月一二日にA名義で本件マンションを購入した。そして、入院中に上告人と別居する意思を固めていたaは、同年五月六日、自宅を出て本件マンションに転居し、上告人と別居するに至った。
7被上告人は、昭和六一年一二月ころからスナックでアルバイトをしていたが、同六二年四月ころに客として来店したaと知り合った。被上告人は、aから、妻とは離婚することになっていると聞き、また、aが上告人と別居して本件マンションで一人で生活するようになったため、aの言を信じて、次第に親しい交際をするようになり、同年夏ころまでに肉体関係を持つようになり、同年一〇月ころ本件マンションで同棲するに至った。そして、被上告人は平成元年二月三日にaとの間の子を出産し、aは同月八日にその子を認知した。

二 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となる(後記判例参照)のは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。
三 そうすると、前記一の事実関係の下において、被上告人がaと肉体関係を持った当時、aと上告人との婚姻関係が既に破綻しており、被上告人が上告人の権利を違法に侵害したとはいえないとした原審の認定判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例最高裁昭和五一年(オ)第三二八号同五四年三月三〇日第二小法廷判決・民集三三巻二号三〇三頁)は、婚姻関係破綻前のものであって事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官可部恒雄
裁判官園部逸夫
裁判官大野正男
裁判官千種秀夫
裁判官尾崎行信

最高裁判所昭和54年3月30日
最高裁判所民事判例集33巻2号303頁
家庭裁判月報31巻8号28頁
最高裁判所裁判集民事126号361頁
裁判所時報762号1頁
判例タイムズ383号46頁
金融・商事判例577号43頁
判例時報922号3頁
ジュリスト694号78頁
ジュリスト臨時増刊718号91頁
別冊ジュリスト66号52頁
別冊ジュリスト78号178頁
別冊ジュリスト105号198頁
時の法令1039号52頁
判例タイムズ383号6頁
判例タイムズ385号116頁
判例タイムズ397号2頁
判例タイムズ411号127頁
法学協会雑誌98巻2号149頁
別冊法学教室基本判例シリーズ2号165頁
法政研究50巻3〜4号183頁
法曹時報34巻12号181頁
法律のひろば32巻7号42頁
民事研修594号13頁
民商法雑誌82巻4号496頁
LawSchool2巻5号82頁
理由
上告代理人信部高雄、同大崎勲の上告理由中上告人Aに関する部分について
原審は、(1)上告人Aと訴外Eとは昭和二三年七月二〇日婚姻届出をした夫婦であり、両名の間に同年八月一五日に上告人Bが、昭和三三年九月一三日に同Cが、昭和三九年四月二日にDが出生した、(2)Eは昭和三二年銀座のアルバイトサロンにホステスとして勤めていた被上告人と知り合い、やがて両名は互に好意を持つようになり、被上告人はEに妻子のあることを知りながら、Eと肉体関係を結び、昭和三五年一一月二一日一女を出産した、(3)Eと被上告人との関係は昭和三九年二月ごろ上告人Aの知るところとなり、同上告人がEの不貞を責めたことから、既に妻に対する愛情を失いかけていたEは同年九月妻子のもとを去り、一時鳥取県下で暮していたが、昭和四二年から東京で被上告人と同棲するようになり、その状態が現在まで続いている、(4)被上告人は昭和三九年銀座でバーを開業し、Eとの子を養育しているが、Eと同棲する前後を通じてEに金員を貢がせたこともなく、生活費を貰つたこともない、ことを認定したうえ、Eと被上告人との関係は相互の対等な自然の愛情に基づいて生じたものであり、被上告人がEとの肉体関係、同棲等を強いたものでもないのであるから、両名の関係での被上告人の行為はEの妻である上告人Aに対して違法性を帯びるものではないとして、同上告人の被上告人に対する不法行為に基づく損害賠償の請求を棄却した。
しかし、夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持つた第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つ
に至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によつて生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被つた精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。
したがつて、前記のとおり、原審が、Eと被上告人の関係は自然の愛情に基づいて生じたものであるから、被上告人の行為は違法性
がなく、上告人Aに対して不法行為責任を負わないとしたのは、法律の解釈適用を誤つたものであり、その誤りは、判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこの点において理由があり、原判決中上告人Aに関する部分は破棄を免れず、更に、審理を尽くさせるのを相当とするから、右部分につき本件を原審に差し戻すこととする。
同上告理由中上告人B、同C、同Dに関する部分について
妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持つた女性が妻子のもとを去つた右男性と同棲するに至つた結果、その子が日常生活にお
いて父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなつたとしても、その女性が害意をもつて父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。けだし、父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によつて行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被つたとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。
原審が適法に確定したところによれば、上告人B、同C、同D(以下「上告人Bら」という。)の父親であるEは昭和三二年ごろから被上告人と肉体関係を持ち、上告人Bらが未だ成年に達していなかつた昭和四二年被上告人と同棲するに至つたが、被上告人はEとの同棲を積極的に求めたものではなく、Eが上告人Bらのもとに戻るのをあえて反対しなかつたし、Eも上告人Bらに対して生活費を送つていたことがあつたというのである。したがつて、前記説示に照らすと、右のような事実関係の下で、特段の事情も窺えない本件においては、被上告人の行為は上告人Bらに対し、不法行為を構成するものとはいい難い。被上告人には上告人Bらに対する関係では不法行為責任がないとした原審の判断は、結論において正当として是認することができ、この点に関し、原判決に所論の違法はない。
論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、三八六条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官大筭喜一郎の補足意見、裁
判官本林讓の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。