児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者の求刑は事件単位。

 強姦未遂と強制わいせつ致傷が併合審理されたときに、強姦未遂の被害者は無期懲役を求刑できないようです。最終的に無期懲役が宣告されたとしても。

http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2010/20100617155648.asp?rss=20100617
懲役3年6月(求刑懲役5年)を言い渡した。被害女性は代理人の弁護士を通じて懲役8年の求刑意見を述べていた。

 解説では、事件単位とされていますが、例えば、強制わいせつ罪2件の被害に遭った被害者参加人は、懲役15年を求刑できるはずですよね。10年までだと、10年を2件分求刑して判決が15年ということで、求刑と判決がちぐはぐになります。

平成19年平成20年の犯罪被害者等保護関連改正法及び改正規則の解説(最高裁判所事務総局刑事局監修・法曹会・平成21年4月)
p73
(3)参加の対象となる被告事件の手続
被害者参加制度において参加の対象となるのは,「被告事件の手続」であるところ,「被告事件」とは,申出に係る個別の被告事件,すなわち,参加をしようとする者が被害者等又は当該被害者の法定代理人である被告事件をいい,「被告事件の手続」とは,当該被告事件の審理又は裁判が行われる手続をいう。
同一の被告人に対する複数の被告事件が分離して審理されている場合,被害者等が参加することができるのは,自らが被害者等である被告事件の手続のみであり,分離して審理されている他の被告事件の手続に参加することはできない。
また,同ーの被告人に対する複数の被告事件が併合して審理されている場合であっても,参加の許可は被告事件単位でなされるものであるので,被害者参加人等に認められる訴訟活動は,参加の許可がなされた被告事件についてのものに限られると解される。したがって,例えば,Aを被害者とする傷害被告事件とBを被害者とする傷害被告事件(各事件を甲事件,乙事件とする。)が併合審理されている場合において,甲事件の手続への参加を許可された被害者参加人Aは,乙事件のみに関係する事項について,証人を尋問したり,被告人に対して質問したり,事実又は法律の適用についての意見を陳述することはできないものと解される。


p120
(注5)被害者参加入等が法律の適用についての意見として量刑についての意見を述べる場合にも,検察官が求刑を行う場合と同様に,法律上被告人に科すことができない刑を求める意見を述べることは許されないと解きれる。
なお,同一の被告人に対する複数の被告事件が併合して審理されている場合であっても,参加の許可は被告事件単位でなされるものであるので,被害者参加入等に認められる訴訟活動は,参加の許可がなされた被告事件についてのものに限られる(第316条の33の解説の1(3)を参照。)から,複数の事件のうち特定の事件について参加を許されており,その他の事件には参加を許されていない被害者参加人は,自己が参加を許された事件のみを対象として相当と思料する具体的な刑期についての意見を述べることができ,参加を許されていない事件と併せて併合罪加重をした後の処断刑の範囲を前提とした具体的な刑期についての意見を述べることはできないものと考えられる。


p121
(注7)また,例えば,傷害致死として起訴された事件について,被害者参加人が「自分としては殺人と同等である」との意見を述べることは,それが被害者としての心情であることを指摘するものである場合は許されるが,法律上殺人罪が成立するとの意見として述べることは許きれないものと考えられる。