児童淫行罪には「淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要である」
東京高裁h8.10.30
児童福祉法三四条一項六号にいう淫行を「させる行為」とは、児童に淫行を強制する行為のみならず、児童に対し、直接であると間接であると物的であると精神的であるとを問わず、事実上の影響力を及ぼして児童が淫行することに原因を与えあるいはこれを助長する行為をも包含するものと解される(なお、最高裁判所昭和三〇年一二月二六日第三小法廷判決刑集九巻一四号三〇一八頁、最高裁判所昭和四〇年四月三〇日第一小法廷決定裁判集一五五号五九五頁参照。)。そして、前記2でみたとおり、同号には、行為者が児童をして行為者自身と淫行をさせる行為を含むと解すべきところ、同号が、いわゆる青少年保護育成条例等にみられる淫行処罰規定(条例により、何人も青少年に対し淫行をしてはならない旨を規定し、その違反に地方自治法一四条五項の範囲内で刑事罰を科するもの)とは異なり、児童に淫行を「させる」という形態の行為を処罰の対象とし、法定刑も最高で懲役一〇年と重く定められていること等にかんがみれば、行為者自身が淫行の相手方となる場合について同号違反の罪が成立するためには、淫行をする行為に包摂される程度を超え、児童に対し、事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけ、その結果児童をして淫行をするに至らせることが必要であるものと解される。
だとすると青少年条例違反(青少年淫行罪)には、「程度は問題なく、淫行することで足りる」ことになります。
児童淫行罪の実刑率は約25%で、師弟関係だと、このところ100%実刑となっているので、
?淫行の有無
?影響力行使は児童淫行罪のレベルに達しているか?
が争われることになります。
?は程度問題であって、児童淫行罪が認定された場合の量刑にも影響するので弁護人は要チェック。
なお、「淫行をする行為に包摂される程度を超えない場合」、家裁は管轄を失いますので、管轄違の判決となります。地裁・簡裁への移送はできません。