児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

小栗健一「16歳の少女について年齢確認の方法を尽くさず、女優としてアダルトDVDに出演させた事件について」捜査研究6月号

東京家裁H16.10.25
「児童を使用する者」について論じられています。
 ところで、「今後の捜査の参考にせい!」ということで紹介されているのですが、この判決、児童福祉法違反(淫行させる行為)と児童ポルノ製造罪が一罪とされていて、管轄と罪数に問題があると思います。
 すなわち、児童ポルノ製造の前提となる性行為(強姦・買春・淫行)と製造罪とは併合罪というのが高裁レベルの判例です。
 また、児童ポルノ・児童買春の事物管轄は地裁であって家裁ではないという高裁判決もたくさんあります。
 仮に、併合罪だとすると、家裁には児童ポルノ製造罪の管轄はありませんから、管轄違いとなります。
 たとえば、関西援交の主犯は、児童福祉法違反は家裁、児童ポルノ製造罪は地裁に起訴されているようです。
 どっちが正しいのかわかりませんが、矛盾しているように見えます。


一罪説の裁判例

東京家裁H16.10.25
奈良家裁H16.2.5
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20040408/1106558870
横浜家裁横須賀支部H17.6.1

ところで、
児童ポルノ・児童買春罪の裁判管轄

東京高裁平成15年6月4日
第1 管轄違い(刑訴法378条1号)の論旨について(控訴理由第1)
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下単に「児変異春・児童ポルノ禁止法」又は「法」という。)は,児童福祉法の特別法であるから,少年法37条1項の適用を受けるので,本件は家庭裁判所の管轄に属する事件であるのに,地方裁判所に起訴されたものであるから,管轄遠いであるというのである。
しかしながら,たとえ,所論のいうように,児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪が,少年法37条1項所定の罪の特別法的性格を有するとしても,同項に限定列挙された罪には該当せず,法律に家庭裁判所の権限に属させる旨の特別の規定がない以上は,その第一審の管轄裁判所は地方裁判所又は簡易裁判所である(裁判所法31条の3第1項3号,2項等)。
論旨は理由がない。

阪高裁H15.9.18
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/WebView2/27642C03FB01140B49256E6700180854/?OpenDocument
(1) 不法に管轄を認めた違法の主張(控訴理由第20)について
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,「児童買春児童ポルノ禁止法)」という。)は,児童福祉法の特別法であり,児童買春児童ポルノ禁止法の罪は児童の福祉を害する行為であるから,少年法37条1項の適用を受け,家庭裁判所の専属管轄とされる事件であるのに,地方裁判所に起訴された本件各罪についてこれを看過してなされた原判決には不法に管轄を認めた違法がある,というものである。
しかしながら,少年法37条1項は限定列挙であり,また,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪を家庭裁判所の権限に属させるとする法律の規定も存しないから,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪についての第一審の管轄裁判所は地方裁判所又は簡易裁判所であることは明らかである(裁判所法31条の3第1項3号,2項,24条2号,33条1項2号)。
論旨は理由がない。

名古屋高裁金沢支部H17.6.9も同旨

 前提となる性行為との罪数関係についての裁判例

名古屋高裁金沢支部H14.3.28
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない。

名古屋高裁金沢支部H17.6.9も同旨

 他人をして淫行させるというのと、児童ポルノを撮影(製造)するというのは、1個の行為ですか?「淫行させる」というのは、事案によっては自分で淫行している場合も含むんでしょ。
 他人と児童に「演技(淫行)しろ」「アクション!」と言っているのとカメラ回したり編集したりしているのとを社会見解上1個といえるかですよ。

最高裁判所大法廷判決昭和49年5月29日
 しかしながら、刑法五四条一項前段の規定は、一個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ、右規定にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上一個のものとの評価をうける場合をいうと解すべきである。
 ところで、本件の事例のような、酒に酔つた状態で自動車を運転中に過つて人身事故を発生させた場合についてみるに、もともと自動車を運転する行為は、その形態が、通常、時間的継続と場所的移動とを伴うものであるのに対し、その過程において人身事故を発生させる行為は、運転継続中における一時点一場所における事象であつて、前記の自然的観察からするならば、両者は、酒に酔つた状態で運転したことが事故を惹起した過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく、社会的見解上別個のものと評価すべきであつて、これを一個のものとみることはできない。
 したがつて、本件における酒酔い運転の罪とその運転中に行なわれた業務上過失致死の罪とは併合罪の関係にあるものと解するのが相当であり、原判決のこの点に関する結論は正当というべきである。