木村先生、また書いてますね。学者先生はこういうのも業績1件になるんでしょうね。
事案の企画者は被告人ですが、判例の企画者は奥村弁護士です。
犯行当時の判例では無罪だったのが、行為後に判例変更されて有罪にされたわけで、無念の余り、トラウマになっています。
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/FMainOpendoc?OpenAgent&%28%20%28%5B%46%6F%72%6D%4D%61%69%6E%46%69%65%6C%64%32%5D%20%3D%20%22%8DC5%8BDF%22%20%29%20%20%4F%52%20%28%5B%46%6F%72%6D%4D%61%69%6E%46%69%65%6C%64%31%5D%20%3D%22%8C59%8E96%22%20%41%4E%44%20%28%4E%4F%54%20%5B%46%6F%72%6D%4D%61%69%6E%46%69%65%6C%64%32%5D%3D%22%8DC5%8BDF%22%29%29%20%29%20%41%4E%44%20%28%20%28%20%28%5B%72%65%61%73%6F%6E%5D%3D%20%899C%91BA%934F%29%20%4F%52%20%28%20%20%28%5B%6A%75%64%67%65%5D%3D%20%899C%91BA%934F%29%29%29%20%29&1&B7D7738C071DEEAF49256D7200269E05
http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/webview/3FDA5339A86D26BA49256CFA0006EDBB/?OpenDocument
『研修』(平成17.3,第681号)
木村光江 信用毀損罪における「信用」の意義
1.問題の所在
信用毀損罪における「信用」については,従来裁判例も少なかったことから,学説上もあまり議論がなされてこなかった。そして,一般に、「信用」とは,「経済的信用,すなわち人の支払能力または支払意思に対する社会的信頼」)であると定義されこの定義についてはほとんど疑問が持たれてこなかった。
ところが,最判平成15年3月11日(刑集57巻3号293頁)は,警察に,コンビニエンスストアで買ったジュースに異物が混入していたと虚偽の申告をし,その旨の新聞報道をさせた行為について,コンビニエンスストアに対する信用毀損罪の成立を認めた2)。信用毀損罪における「信用」概念を,少なくとも従来学説が意識していた範囲からは拡大し,「販売される商品の品質に対する社会的な信頼」も「信用」に含まれるとしたのである。
信用毀損罪は,特に名誉毀損罪及び業務妨害罪との関係が問題となるが,名誉毀損罪における「名誉」の概念,業務妨害罪の「業務」の概念も拡大しつつある3)。それぞれの犯罪類型の守備範囲が拡大するに従い,この3つの犯罪類型の相互関係や区別は,判断か難しくなりつつある。さらに,信用毀損一般で問題となるわけではないか,本事案のように,虚偽告訴の側面を含む場合には,軽犯罪法l粂16号の「虚構犯罪等申告の罪」との関係も問題となり得る4)。
また,刑法における信用毀損罪についての裁判例は,非常に少数にとどまるのに対し,民法上の信用毀損(実際には名誉毀損として考慮される)に基づく不法行為責任(民法709粂)5)や,不正競争防止法上の宮業誹謗行為(不正競争防止法2条1項14号)6)に関する裁判例は,その数が極めて多い7)。
そこで本稿では,信用毀損罪,名誉毀損罪,業務妨害罪の相互関係を整理し,その中で「信用」として保護すべき対象を明らかにしたい。その際には,現代において,他の法令でなく,刑法により処罰に値する「信用」とは何かを,改めて検討することも重要であろう。