児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの罪数論

 奥村弁護士はちょっとこだわっているのですが、裁判例はどうなっていると説明すればいいんでしょうか?
 横浜地裁の被害児童基準説というのは、画期的だったんですけど、弁護人控訴によって、東京高裁であっさり破棄されました。
   わいせつ図画→何回行為しても一罪
というのが高裁レベルの固定観念なんでしょうね。凝り固まっている裁判官が多い。

 わいせつ図画じゃなくて、児童ポルノなんだからさあ・・・と説得してもダメなんだな。奇しくも併合罪説と一罪説が最高裁に係属中。

 児童ポルノ罪の罪数〜一罪か数罪か
(1)一罪とするもの
①大阪高裁H14.9.10*2(製造)
②大阪高裁H15.9.18*3(販売・陳列)
③東京高裁H16.6.23*4(陳列)(上告中)
(2)併合罪とするもの
①東京高裁H15.6.4*5(製造・所持・販売)(上告中)
京都地裁H14.4.24*6(販売)
③大阪高裁H14.9.12(販売)
(3)被害児童の人数を基準とするもの
横浜地裁H15.12.15*7(陳列)
(4)弁護人の見解
 このように裁判例は混沌としているのであるが、児童ポルノ罪の保護法益からすれば、出発点としては、形式的に本件による被害児童の人数と販売行為の回数だけ児童ポルノ販売罪が成立し、次いで罪数処理を行う必要があると考える。
 わいせつ図画罪の成立を認めると、わいせつ図画罪については判例上数回の販売行為は包括して一罪となり、かつ、児童ポルノ罪とわいせつ図画の罪は観念的競合となるから、結局、一罪であるわいせつ図画の罪にあたかも「串刺し」される如く、全体として一罪となり、児童ポルノ罪1罪の処断刑の範囲で量刑すべき事になる(わいせつ図画罪が起訴されていなければ併合罪であるところ)。
 その意味では横浜地裁H15.12.15が正解である。