児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

著作権法違反実刑事案

 こんな人が、こんなことを、こんな風にやると実刑

画像処理ソフトを無断複製 著作権法違反容疑で暴力団幹部を逮捕−−桂署 /京都
[毎日新聞 2003年1月8日(水)]

著作権法違反被告事件京都地裁h15.3.7大阪高裁h15.5.15実刑
(犯罪事実)
第1 被告人は,sと共謀の上,法定の除外事由がないのに,平成14年3月26日ころ,別紙一覧表(1)記載のとおり,アほか1社が著作権を有するプログラムの著作物である「Ad o b e Ph o t o s h o p6.0 日本語版」ほか2点を,いずれも上記著作権者の許諾を得ずに複製されたものであることの情を知りながら,大阪府内の郵便局から                 あてに,有償で郵送頒布し,もって,上記著作権者の著作権を侵害した。
第2 被告人は,s及びiとの上,法定の除外事由がないのに,
平成14年11月5日午後零時50分ころ,において,別紙一覧表(2)記載のとおり,アほか1社が著作権を有するプログラムの著作物である「Ad o b e Ph o t o s h o p7.0 日本語版」ほか8種類合計29点を,それらがいずれも上記著作権者の許諾を得ずに複製されたものであることの情を知りながら,頒布の目的で所持し,もって,上記著作権者の著作権を侵害した。
(量刑の理由)
本件は,被告人が共犯者と共謀の上,判示各著作物を頒布あるいは頒布目的で所持して判示各著作権者の著作権を侵害したという事案である。

被告人は,犯行に用いるためのパソコン等を購入し,共犯者2名を雇用し,広告チラシを大量に配布するなどしており,また,警察の追及が被告人らに及ぶことを慮って代行業者を利用するなど計画的かつ巧妙なものであって,利欲的な動
機に基づく常習的,職業的犯行であること,被告人は本件の首謀者であること,一連の侵害行為に関与していた期間が相当長いこと,その間に相当多額の不法な利益を得ており,共犯者らに給料という名目で定額の分配をした以外は自ら取得していること,各被害者への弁償が未了であることなどに照らすと,犯情は相当悪質である。さらに,被告人は

不良かつ不安定な生活状況のなかで,本件犯行に及んでいるのであって,被告人の規範意識の欠如,反社会的性向は相当強固であるといわざるを得ない。以上によれば,被告人の刑責は重い。加えて,近時,知的財産に対する侵害が社会問題化しているなかで,本件のような悪質な犯行に対しては,厳しい態度で臨む必要がある。そうすると,被告人なりに一応反省の態度を示していること,各被害者に謝罪文を送付していること,        病弱の元妻が被告人との生活をやり直す意向を示していること,雇用を約束する者があることなど,被告人のために有利に掛酌すべき事情を考慮しても,実刑をもって臨むのが相当であり,主文のとおり量刑した次第である。
(求刑 懲役2年,没収)

阪高裁h15.5.15実刑
本件控訴を棄却する。
控訴審における未決勾留日数中70日を一審判決の刑に算入する。
理     由
第1 弁護人の控訴理由
一審判決の量刑は重すぎて不当である。
第2 控訴理由に対する判断
本件は,被告人が共犯者と共謀の上,著作物であるパソコンソフトを不正に複製したCD−Rであることを知りながら,6枚を頒布し,45枚を頒布目的で所持して著作権を侵害した著作権法違反の事案である。
被告人は,安易に金もうけをしようと考え,パソコン,マザーCD−R,顧客名簿等を購入し,また,犯行の発覚を免れるため代行業者を利用するなど用意万端整えた上,パソコンソフトの違法コピーを作成頒布するようになり,その後,本件共犯者2名.を順次雇用し,作業所とするための部屋を借り受けて,組織的かつ職業的に違法コピーの作成頒布を行っていたところ,本件各犯行はその一環として敢行されたものである。被告人は,本件各犯行の首謀者であって,共犯者が逮捕されるまでの間巨額の利益を得ており,その結果,被害会社2社に甚大な損害を与え,被害会社らは,被告人の被害弁償の申出を拒絶しており,被害感情は極めて強い。
被告人は,無為徒食の生活を送る中で本件犯行に及んだものであって,このような芳しくない生活態度が本件の背景となっているものといえる。
以上にみた,本件犯行の動機,罪質,組織的かつ職業的犯行の一環であること,被告人は首謀者であることなど本件において重要な役割を果たしていること,被害感情の強さ,被告人の生活態度等にかんがみると,被告人の刑責は重いというべきである。加えて,近時,知的財産権の重要性が主張されており,悪質な知的財産権侵害に対しては厳しく対処し,同種の犯行を防止する必要がある。
そうすると,被告人なりに本件各犯行を反省していること,被害会社らに謝罪文を送付したほか,その受領を拒絶されたものの被害会社2社に被害弁償の一部として各50万円の支払を申し出ていること,控訴審段階において100万円をしょく罪寄附していること,家庭状況,その他弁護人の指摘する被告人に有利な事情を総合しても,被告人を       に処した一審判決の量刑はやむを得ないものであって,これが重すぎて不当であるとはいえない。