児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2016年09月03日のツイート

年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせない〜東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説h28

 下着買受とか深夜同伴は過失処罰されて、淫行には過失処罰がありません。下着買受とか深夜同伴にあたっては、身分証明書を確認することを前提とするようです。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説h28
第28条
第9条第1項、第10条第1項、第11条、第13条第1項、第13条の2第1項、第15条第1項若しくは第2項、第15条の2第1項若しくは第2項、第15条の3、第15条の4第2項又は第16条第1項の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第24条の4,第25条又は第26条第1号、第2号若しくは第4号から第6号までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。
【解説】
本条は、第9条第1項の指定図書類の販売等の制限、第10条第1項の指定映画の観覧の制限、第11条の指定演劇等の観覧の制限、第13条第1項の指定がん具類の販売等の制限、第13条の2第1項の指定刃物の販売等の制限、第15条第1項又は第2項の質受け又は古物買受けの制限、第15条の2第1項又は第2項の着用済み下着等の買受け等の禁止、第15条の3の青少年への勧誘行為の禁止、第15条の4第2項の深夜の青少年の連れ出し等の禁止、第16条第1項の深夜における興行場等への立入りの制限等の規定に違反した場合に、違反者は、その相手方の年齢が18歳に満たない者であることを知らなかったとしても、それを理由として処罰を免れることができないことを規定したものである。
本条でいう「過失」とは、注意すれば相手が青少年であるという事実を認識することができたのに不注意で認識しなかったことをいい、「この限りでない。」とは、過失がないと認められる場合は、消極的に本条の罰則適用を打ち消すとの意味である。
すなわち、年齢確認をした際、当該青少年が他人の身分証明書や年齢を詐称した定期券を提示した場合等で、誰が見ても見誤る可能性が十分あり、見誤ったことに過失がないと認められるような状況にあった場合は、あえて責任を負わせないとしたものである。

熊本県少年保護育成条例の解説に紹介されている無罪判決(名古屋簡裁h19.5.23)

 判決書は公開されていないのですが、
 名古屋簡裁の判決が地方に浸透しているようです。

熊本県少年保護育成条例の解説h27
3 第1項関係
(1) 「みだらな性行為」とは、「淫行」 と同義語で、一般社会人からみて不純とされる性行為をいい、結婚を前提としない、単なる欲望を満たすためあるいは好奇心からのみ行う性行為がこれにあたり、性交のほか性交類似行為も含まれる。また、不純であるかどうかは、あくまでも社会通念上判断されるべきものである。
なお、17歳の女子高生と分かつていながら性交したとして、愛知県青少年保護育成条例(淫行の禁止)違反の罪に関われた男性に対する無罪判決(平成19. 5. 23、名古屋簡裁判決)が出ていることから注意が必要である。
同裁判は、被告である男性が「単に自己の性的欲望を満たすためだけの目的」 で性行為に至ったのかが争われたもので、判決では、
「不倫」 「結婚を前提にしない」というだけでは刑事罰の対象とはならず、「加害者と青少年との関係性、行為の手段方法状況等の外形的なものを捉え、青少年の保護育成上危険があるか、加害者に法的秩序からみて実質的に不当性、違法性があるか等、これらを時代に応じて『社会通念』を基準にして判断すべき」と述べた上で、一定期間に映画を見に行くなどのデートを重ねたこと、女子高生も男性に対して好意を抱いており、合意や心的交流があったうえでのセックスだ、ったことなどから、「淫行」 に相当するというには相当な疑問が残るとして、男性を無罪としている。
また、同判決では、以下のような場合は、たとえ合意があっても青少年保護の観点から社会通念上非難に値する行為、つまり「淫行」としている。
?職務上支配関係下で行われる性行為
? 家出中の青少年を誘った性行為
? 一面識もないのに性交渉だけを目的に短時間のうちに青少年に会って性行為すること
?代償として金品などの利益提供やその約束のもとに行われる性行為

判例違反を主張する場合には、裁判所名、事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等を指示して、その判例を具体的に示すべきである(最決S45.2.4)

 地裁の支部の事件で、主張書面で青少年条例違反が包括一罪になるという判例を引用したら、裁判官が「立証してください」というんだ。
 裁判所がそういうので、金沢支部判例は保管検察官に謄写拒否されて摘録のメモを報告書にして、福岡高裁判例も、地裁判決→控訴理由→高裁判決をまとめた報告書にしたんだが、上告審でも「裁判所名、事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等を指示して、その判例を具体的に示せば」判例は立証の要なしとされているんだから、下級審でもそれでいいだろう。結局、全部引用しておけばいいんじゃないか。

条解刑事訴訟法
1) 判例違反の主張方法
判例違反の主張は,上告趣意書にその判例を具体的に示す必要がある〈規253)。具体的に示すとは,事件番号,裁判年月日,出典等を明らかにすることであって,事例を具体的に示さないものは不適法として上告を棄却される(最判昭25・5-11集4-5ー765等〉。
また,原判決の判断がどの点で判例違反となるのか具体的に示す必要がある(最決昭26・3・3O架5-4-742)。これを欠く場合も不適法とされる。
。。
規則第二五三条(判例の摘示)
 判例と相反する判断をしたことを理由として上告の申立をした場合には、上告趣意書にその判例を具体的に示さなければならない。

   恐喝、同未遂被告事件

最高裁判所第2小法廷決定昭和45年2月4日
最高裁判所裁判集刑事175号73頁
       判例タイムズ246号269頁
       判例時報588号95頁
 弁護人荒木孝壬の上告趣意第一点の一、二は、判例違反をいうが、判例の具体的な摘示がなく(上告理由として判例違反を主張する場合には、裁判所名、事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等を指示して、その判例を具体的に示すべきであるが、本件上告趣意書には、単に裁判所名と判決要旨の記載があるのみである。)、その余は事実誤認の主張であり、同三は、単なる法令違反の主張、同第二点は、量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても、同法四一一条を適用すべきものとは認められない。
【出  典】 判例タイムズ246号269頁
 被告人は恐喝の共謀共同正犯である旨を原判決が判示したのに対し、弁護人は、上告趣意において、共謀共同正犯の成立要件に関する最高裁および大審院判例の要旨のみを引用し(事件番号、裁判年月日、掲載文書名、掲載箇所等の記載はまつたくない。)、原判決は判例違反であると主張した事案である。
 本件に類似する先例としては、事件番号、宣告年月日を指示せず、単に事案を説明して大審院判例集12巻207丁以下参照としているが、その箇所に当該判例を発見できない事例につき、判例の具体的摘示がないとした最高裁第2小法廷昭39・7・17決定(裁判集152号325頁)がある。
 上告理由として判例違反を主張する場合に、上告趣意書にその判例を具体的に示さなければならないことは、刑訴規則253条の明定しているところである(なお、判例として、最1小判昭25・5・11刑集4・5・765、同2小決25・5・12刑集4・5・797、同2小決26・3・30刑集5・4・742参照)。
問題は、どのように記載した場合判例の具体的な摘示があつたといえるかということであるが、本決定の要求している程度の記載は、すでに、これまで判例の摘示方法として一般的慣行となつているものに過ぎないといえよう(ただし、事件番号は省略されることもある。)。そして、判例違反を主張する場合は、必ず当該判例の掲載されている文書(通常は判例集であろうが、法律雑誌、教科書等のこともありうる。)を参照しているはずであるから、右程度の記載をすることは、一挙手一投足の労に過ぎないはずであつて、訴訟上の権利の誠実な行使(刑訴規則1条2項)という点からも、当然のことと思われる。