児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪の公訴時効

 こう教職員の事件が多いと、教員の身分犯を作った方がいいですね。
 H14の不倫行為については、児童淫行罪の時効が気になります。
 H16の刑訴法改正があるので、旧規定も確認してください。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080309-00000902-san-soci
容疑者は12、13年度の2年間、当時教頭として勤務していた県立行田女子高(現進修館高校)2年生だった女性に「放課後に勉強を教えてあげる」と近づき、14年1月から不倫関係にあった。女性に恋人ができたため19年3月に別れたが、今年3月までに数十回以上、「君を見守っている」「また一緒にやろうよ」などのメールや手紙を一方的に送り続け、復縁を迫ったという。
 女性が今年1月、同署に相談、捜査していた。市立川口高校はこの日、卒業式で、容疑者は式の帰りに任意同行された。
 川口市教委の関係者らによると、容疑者はスポーツなどに秀でた生徒を評価する新入試制度や、学力向上のため土曜授業の導入など、市の教育改革に熱心だった。18年10月にはJR上尾駅で痴漢を取り押さえたこともあった。関係者は「何ら問題ない人で、びっくりしている」と話した。

刑訴法
第250条〔公訴時効の期間〕
時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
〔平一六法一五六本条改正〕

附 則〔抄〕(平成一六年一二月八日・法律第一五六号)
第3条 〔省略〕
2 この法律の施行前に犯した罪の公訴時効の期間については、第二条の規定による改正後の刑事訴訟法第二百五十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

改正前の刑訴法
第250条〔公訴時効の期間〕
時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については15年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については10年
三 長期10年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については7年
四 長期10年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については5年
五 長期5年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については3年
七 拘留又は科料に当たる罪については1年

「インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増している」?

 これを改正の動機にするんなら、提供罪の被害児童をもう一回数えませんか?
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080222/1203671544
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080305/1204683082
の数字はあてにならない。
 ほんとは何万人もいるのに、そのうち数百まで数えて、あとは「たくさん」という感じでカウント停止。
 氏名不詳にしてるから、人数もわからない→罪数処理や量刑に反映しない。
 ある日突然、氏名不詳も全部カウントし始めて、一気に「被害者数万人前年比100倍」なんかとすれば、何でも出来ますね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080308-00000060-yom-pol
児童ポルノ、所持だけでも「処罰」…与党が法改正方針
3月9日3時5分配信 読売新聞
 自民、公明両党は、児童ポルノの画像などのはんらんに歯止めをかけるため、児童ポルノを販売目的でなく、「単純所持」するだけでも禁じることとし、罰則の対象とする方向で児童買春・児童ポルノ禁止法を改正する方針を固めた。
 改正案は議員立法で、今国会中にも提出する方針だ。インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増していることや、国際的に日本の対応が出遅れていることが背景にある。


 この条文からみれば、4項の提供罪・公然陳列罪が児童ポルノ罪の頂点(一番悪い)で、それ以外は、その準備段階ですよね。上から下まで保護法益は同じ。頂点にある提供罪が個人的法益(社会的法益)であるなら、全部個人的法益(社会的法益)。
 だから、児童ポルノ罪が個人的法益だというのなら、提供罪・公然陳列罪についても、それ以外についても、個人的法益の侵害(被害児童1人1罪・1回1罪)というのを徹底しておかないと、筋が通らないんですよ。
 物にたとえれば、薄い厚いの不均衡があって、弱いところがほころびるような法律です。

 現状の裁判例では
  製造罪は個人的法益
  提供罪は社会的法益
  製造罪には個人的法益はない。
なんてバラバラになっていて、まさに、立法者の迷い・考えが浅いところを反映していると思います。

第7条(児童ポルノ提供等)
1 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。


 なお、H16改正前から、目的所持罪はありましたので、読売の報道は不正確ですね。

〈解〉児童買春・児童ポルノ禁止法
2008.03.09 読売新聞社
 18歳未満の児童の買春や買春のあっせん、児童ポルノの販売、インターネットなどへの掲示を懲役や罰金付きで禁止する法律。2004年の法改正で児童ポルノの提供目的で製造や所持、保管することにも3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科せられることになった。

 旧法(法務省はいまだに旧法を周知しているわけで、やる気ないようです)
 「販売・頒布・業として貸与・公然陳列目的所持罪」があります。

http://www.moj.go.jp/KEIJI/h01.html
児童ポルノ頒布等)
第七条  児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3  第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

 
 現行法では2項所持罪(特定少数向け)が新設され、5項製造罪(不特定多数向け)が加重されています。
 製造目的所持罪が抜けています。編集前の素材はこれがないと処罰できません。

地元の弁護士に相談して出頭→逮捕→地元弁護士が「自首」主張したケース

が数件あるようです。
 その後で弁護士から奥村に「自首になるか?」って相談されても、逮捕されてしまうとどうしようもできない。しかるべき刑事処分で落ち着くでしょう。

 弁護士のなにがしかのアドバイスがあったんでしょうが、警察には「自首」と理解できなかったんでしょうね。
 「自首に当たるのか?」の判例を見ると、微妙なケースが争われています。
 ほんとに、自首するつもりで弁護士に相談して自首調書取ってもらう段取りくらいしてもらえば、端緒のところで問題点を残すというリスクはなくなります。
 刑事処分は同じ程度だとしても、逮捕されるかどうかはの差は大きいです。

刑法
第42条(自首等)
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
刑訴法
第245条〔自首〕
第二百四十一条〔告訴・告発の方式〕及び第二百四十二条〔告訴・告発の場合の書類等の検察官送付〕の規定は、自首についてこれを準用する。
第241条〔告訴・告発の方式〕
告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
②検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

 若い弁護士がよく飛びつく主張ですが、正式裁判になったとして、自首は任意的減軽事由なので、自首の主張が通っても減軽されるとは限りません。
 処断刑期の下限より減軽する必要があると思わせるくらいの情状を積まないとだめです。