児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノの被害児童を捜して弁償する話。

 逮捕されて、「児童ポルノ・児童買春野郎」と烙印(スティグマ)を押されると、社会的制裁(懲戒とか)も予想されるし、量刑もわかってるし、罰金でも執行猶予でも制裁が強烈なことに変わりないので、慣れてくると弁護人は意外とすることがない。
 自白事件で事案を把握すれば、懲戒免職になって、どれくらいの罰金・懲役(執行猶予の可能性)になって、身柄拘束は何日くらいで・・・とわかってしまうし(紙に書いて渡しますよ。似た事例の裁判結果を挙げれば足りる。)、その通りになるか弁護活動の成果を反映してそれよりちょっと軽くなる。
 前科前歴とか犯情の関係で執行猶予が厳しいとか微妙という場合(どういう場合がそうなのか?境界線は奥村に聞いてください)、被告人側としては軽くなる・猶予が付くというのならなんでもしますよね。
 児童ポルノ・児童買春の場合は、情状立証としては被害弁償が一番効く。個人的法益だから。
 となると、数十年前の写真集について、探偵頼んで、所在を確認しにいきます。
 所在がわかれば、例えば、40才くらいの「被害児童」に、16才ころ販売していた写真について、弁償しにいくわけです。人によっては「弁償なんか要りません」ということになりますよね。
 まあ、結果はともかく「個人的法益というので、そこまでやりましたよ」ということで、その辺の経過を裁判所に報告する。
 どこまでやるかというと、裁判所に相談しながら

弁護人「さらに、被害弁償関係の情状立証として・・・をする予定」
裁判所「そこまでするんですか?」
弁護人「それが弁護人の仕事だから、できるところまでやりますよ。」
裁判所「そこまでする必要があるんですかと申し上げているんですよ。」
弁護人「適当に止めて実刑になっちゃったら申し訳が立たないから、できるところまでやるということです。」
裁判所「お気持ちはわかりますが、必要な程度でほどほどにしてください。」
弁護人「・・・・・」

というところまでやる。
 全部の事件ではなく、重い事例では情状弁護も厚くということです。
 被害者がいる罪で、他の弁護方針というのは考えられません。

教え子との淫行が青少年条例違反として起訴された事例(静岡地裁浜松支部)

 児童淫行罪の実行行為は、支配関係を背景にした性交又は性交類似行為ですので、支配関係か、性交又は性交類似行為が落ちれば、成立しない。
 支配関係については、「先生の言うことを聞かなければいけない」という支配関係があれば、児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)、なければ青少年条例違反(青少年淫行罪)と覚えてください。

東京高裁平成18年1月10日
第3  家庭教師は児童に対する支配関係がないという主張について
控訴趣意書の「第3部控訴理由」中の第5関係)
論旨は,要するに,家庭教師は,全日制の学校の教師とは異なり, 教え子の児童に対して強い支配力がないから,原判決が家庭教師で ある被告人の行為を「淫行をさせる」と評価したことには法令適用 の誤りがある,というのである。
しかしながら,家庭教師であっても,教え子である児童に対して, 事実上の影響力を及ぼして児童の淫行に原因を与え,あるいはこれ を助長するような行為に及ぶことがあり得ると解されるのであって, 原判決もそのような解釈を前提としているものとみることができる

 青少年条例違反になったのは臨時の講師だったこととかが影響していると思いますが、実際にはこの点の事実認定は紙一重の問題です。
 被害者も児童ですから、捜査員に

先生だから、先生の言うことを聞かなければいけないよな
担任でなくても(講師でも)授業とかで会ったとき怖いもんなあ
教員としての立場を利用したと思います。

と誘導されてしまえばそれで終わりです。教員の児童福祉法違反はほぼ実刑です。

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/shizuoka/archive/news/2006/11/02/20061102ddlk22040172000c.html
中学校講師わいせつ:元講師に懲役1年を求刑−−地裁浜松支部初公判 /静岡
 起訴状などによると、被告は3月12日昼ごろ、教え子だった中学1年の女子生徒(当時13歳)をドライブに誘い、掛川市内の駐車場で生徒の胸を触るなどのわいせつ行為をした。被告は被告人質問で、学校の調べに当初は否認したことについて「性的暴行をしたのではないかと追及されたため認められなかった」と話した。
毎日新聞 2006年11月2日

 容疑者は生徒の写真を撮り「周囲に話せば写真をばらまく」などと脅していたという。 容疑者から脅された生徒は5月下旬、女性教諭に涙ながらに被害を訴えた。しかし容疑者は校長らの調べに対し、わいせつ行為を全面的に否認。関係者によると、学校側は生徒に「私たちは先生を信じる。あなたのことは信用できない」と告げたという。生徒はその後学校を休みがちになったが、転校も許可されなかったという。
 結局、事実を解明しないまま、磐田市教委は容疑者を市教委付とした。一方、市教委は「市が任用した職員なので市が責任を持って対処する」として県西部教育事務所には口頭でのみ伝え、同事務所は県教委義務教育課には連絡しなかった。6月に入り保護者は磐田署に被害届を出したが、容疑者は同月30日付で依願退職した。
毎日新聞

 「わいせつな行為はしたが、強姦はしていない」というのは、本人に言わせると言い逃れに聞こえるので、弁護士に任せて欲しいところです。否認じゃないわけだから。
 写真撮って脅迫したのは、どう評価されてるんでしょう?