児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

ロースクール入試に子どもを犯罪の被害から守る条例(児童ポルノ法)

 あれこれ考えてください。

http://www.law.kobegakuin.ac.jp/~ls/kenpou2006.pdf
2006年度前期日程入試問題 法学専門試験 憲法
問Ⅰ
A県に在住するXは、もっぱら自己の鑑賞目的のために満13歳未満の少女を含む複数の女性の裸体を被写体とする写真集を購入したところ、Xが当該写真集を購入したことを知った知人Yの通報により、A県子どもを犯罪の被害から守る条例13条違反で逮捕・起訴された。
本件における憲法上の問題点について、A県子どもを犯罪の被害から守る条例13条と、刑法175条、児童買春・児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)7条の規定とを比較しながら検討しなさい。

<出題意図>
① 本設問は、わいせつ図画の単純所持(もっぱら自己の鑑賞目的での所持)までは規制していない刑法175条、児童買春・児童ポルノ禁止法7条の場合と、子どもポルノ等の単純所持まで規制しているA県子どもを犯罪の被害から守る条例13条の場合について、憲法21条の保障する表現の自由との関係−ことに、憲法21条2項が絶対的に禁止している検閲に該当するかどうか、表現の自由の規制に対する違憲審査基準(二重の基準、表現内容規制か表現内容中立規制か)、規制目的と規制手段の関係など−についての観点から比較検討することを求める問題である。
② 単純所持規制の検閲該当性の問題は、税関検査事件・最大判昭和59年12月12日民集38巻12号1308頁など、憲法上最も代表的かつベーシックな典型論点の一つである。ただし、A県子どもを犯罪の被害から守る条例は、13歳未満の未成年者の「生命又は身体に危害を及ぼす犯罪の被害を未然に防止」することを目的として、子どもポルノ等の単純所持のみを規制対象とするものであり、この点を憲法上どのように評価するのかによっては、税関検査事件の場合とは異なる結論が導かれる場合もあろう。
③ なお、付随する論点として、条例の限界なども検討される必要があろう。

[性犯罪] 強制わいせつに児童ポルノ罪が併合された事例(仙台地裁H18.9.28)

 画像が流出した模様です。
 製造罪とは併合罪で処理されると思われますが、疑問です。

連続わいせつ 元陸自隊員に懲役12年求刑=宮城
2006.08.05 読売新聞社
 元自衛官による女子中学生への連続強制わいせつ事件で、5件の強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪に問われている被告(26)の公判が4日、仙台地裁(山内昭善裁判長)であった。検察側は論告で「被害少女の人格を全く無視しており、情状酌量の余地がない」と述べ、懲役12年を求刑した。

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/miyagi/news/20060805ddlk04040652000c.html
被告は裁判官の質問に対し「知人から少女のわいせつ画像をもらううちに、自分も撮ってみたいと思うようになった」と動機を説明。検察側は「卑劣、陰湿で少女の人格を極限まで踏みにじる行為」と指摘した。毎日新聞 2006年8月5日

追記
 「わいせつ」なんて無限定だから、撮影行為も含む。
 撮影行為自体が、従来、強制わいせつの実行行為とされてきて、いまでもそうなのに、児童ポルノ製造罪を立てると、併合罪になるのはおかしい観念的競合。なお、児童淫行罪の性交・性交類似行為とは観念的競合(判例)。
 製造罪の個数については、被害児童の数にかかわらず、包括一罪にする裁判例が複数ある。

 とすれば、撮影を伴う数個の強制わいせつ罪は、製造罪をかすがいにして、一罪となる。「かすがい」は「現象」だからしょうがない。
 変な結論だが、裁判例の集積による帰結であって独自の見解とは言わせない。児童ポルノ罪の保護法益と罪数をよく考えなかった(そんな言葉も知らなかったであろう)立法者の責任だと考えています。


 
 
 

児童ポルノの被害者数83名(H18上半期)

 統計が出ています。
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen30/20060805.pdf
 常々「被害者を数えろ」と言ってるんですが、人定が判明した児童だけをカウントしていると、同一被害児童が何回も登場していることになります。
 児童ポルノ提供罪や公然陳列罪について、被害者が観念できるか社会的法益を優先するのかについては、最高裁、大阪高裁の3部・4部・6部で検討中です。