児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

Q&Aセクシュアル・ハラスメント ストーカー規制法解説 第2版


「児童買春等規制法の改正等を大幅増補」というので買ってみました。

http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/roppou/keiji/qa_sexh_sto_2han.html
第3章 児童買春・児童ポルノ
Q77 児童買春等禁止法の制定の目的  196
Q78 児童買春等禁止法の改正  199
Q79 海外で13歳未満の女子に性交類似行為をした場合  201
Q80 児童が18歳未満であることの認識  203
Q81 「児童ポルノに係る行為」  205

 児童の顔+大人の裸体のコラージュも児童ポルノにあたりうるそうです。

3項製造行為(撮影)後のダビング行為の擬律(最高裁決定h18.2.20)

 ダビングは別罪だけど、その際「姿態をとらせ」の要件は、撮影時のそれを借用・流用できるということです。
 罪数としては、ダビングは別の製造罪だということを前提にしています。
 一般の方は、「撮影後のダビングまでも犯罪だ」と覚えていただければいいでしょう。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第7条(児童ポルノ提供等)
3前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

犯罪事実
被告人は
平成 年 月 日,ホテル号室において,Aが18歳に満たない児童であることを知りながら
1 児童買春
2 上記性交の場面をデジタルビデオカメラで撮影するとともにデジタルカメラで撮影することにより,児童を相手方とすろ性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノであるミニディスク.3本及びメモリースティック3本を製造し,さらに,同日,前記被告人方において,上記メモリースティック3本に記憶させた画像データ127個をパーソナルコンピューターのハードディスクに記憶させることにより,上記同様の児童ポルノであるハードディスクを製造したものである。

名古屋高裁金沢支部H17.6.9
ハードディスクの製造は児童ポルノ製造罪に該当しないとの所論について
所論は,被告人は,メモリースティックからハードディスクへ画像データをダビングしたものであるところ,ダビングの際には,「姿態をとらせ」の要件がないから,児童ポルノ製造罪には該当しないとする。
しかし,そのように解した場合,カメラ等を使用して撮影した場合には,その画像が最初に保存される媒体(ネガ,メモリースティック等)のみが製造となり,そこから他に流通の危険性が高いと認められる媒体(写真,MO,CD−R,DVD−R等)やそれらを作成するため画像を長期間保存できる媒体(ハードディスク等)に画像をダビングする行為は製造罪には当たらないことになるが,それでは,他人に提供する目的のない児童ポルノの製造でも,流通の危険性を創出する点で非難に値するとして処罰規定を新設した法の趣旨が没却されるというべきである。
したがって,被告人において,児童に「姿態をとらせ」て撮影したものを元にして,被告人自身が他の媒体へダビング等する行為は,法7条3項の製造に該当すると解すべきである。

最高裁決定h18.2.20
なお,法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たると解すべきであるから,これと同旨の原判断は正当として是認できる。

http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/$DefaultView/DF3953F543B345504925711D002DFE4F?OpenDocument



弁護人の主張
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050609/1118292067



弁護人のコメント
 一言でいえば立法ミスです。
 販売等の目的がなく撮影されたものが、後日拡散することを防止するために、製造行為の処罰対象を拡げようとして改正したが、「姿態をとらせて」という不明確な要件で限定した結果、法文上は「姿態をとらせて」撮影後に拡散していく過程を規制できなくなった。
 その規制の穴を最高裁が見かねて埋めた。