児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

逆強姦神話

逆強姦神話
 被害者供述が信用される傾向が指摘されています
 1対1の事件では客観的証拠がないと、被告人の弁解が通りません。

http://news.livedoor.com/article/detail/15831431/
訴状などによると、男性は2004年と08年に当時10代の女性に自宅で性的暴行を加えたとして強姦と強制わいせつの罪で起訴された。一貫して無罪を訴えたが、大阪地裁は09年5月、「女性が被害をでっちあげることは考えがたい」として、女性本人や被害を目撃したとする親族の証言などから懲役12年の判決を言い渡した。最高裁が11年4月に上告を退け、確定した。

 しかし男性が服役中の14年、女性が「被害はうそ」と告白。親族も証言が虚偽と認めた。その後の大阪地検の調べで、女性が被害届を出した後に受診した医療機関に「性的被害の痕跡はない」とするカルテがあったことが判明。男性は14年11月に釈放され、15年10月に地裁の再審で無罪判決を受けた

裁判年月日 平成27年10月16日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 平26(た)22号
事件名 強制わいせつ、強姦(再審)被告事件
裁判結果 無罪 上訴等 確定 文献番号 2015WLJPCA10169001
主文
 被告人は無罪。 
理由
第3 当裁判所の判断
 1 証拠構造
 前記のとおり,確定判決が,被告人のAに対する強姦及び強制わいせつ行為(以下,併せて「強姦等」という。)を認定した中心的な証拠は,被告人から強姦等された旨のAの旧供述及びそれらを目撃した旨のBの旧供述である。そこで,A及びBの各旧供述が,新たな証拠が取り調べられた現時点においてもなお信用性を有するかについて,以下検討する。
 2 A及びBの各旧供述の信用性
  (1) 客観的事実との矛盾
 本件再審請求後,検察官において補充捜査が実施された結果,検察官から証拠請求された本件カルテ(当審甲2)には,Aが,平成20年8月29日,F病院を受診し,「処女膜は破れていない」との診断がなされたとの記載があることが認められるところ,その診断結果に信用性を疑わせる事情は何らうかがわれない(なお,確定審の公判では,Dは,最初,Aが胸を触られたと言っていたので,これは強姦の被害を受けているのではないかと疑い,Aを産婦人科医院に連れて行って診察を受けさせたことがあったほか,その後,警察から依頼があり,Aを別の産婦人科医院に連れて行ったことがあった旨供述していたが,確定審では,産婦人科医師の診断結果についての証拠調べはなされなかった。)。
 他方,Aの旧供述によると,Aは,平成16年11月及び平成20年4月の2回のほか,何回も被告人に強姦されたというのであり,Aの旧供述を前提にすれば,前記受診当時,Aの処女膜が破れていないとは考えがたい。
 以上からすると,A及びBの各旧供述のうち,被告人がAを強姦したという核心部分は,本件カルテの診断結果と明らかに矛盾しており,その信用性は大きく減殺されるものといえる。このような矛盾は,A及びBに記憶違いがあったなどとはおよそ考えられないから,両名が意図的に虚偽供述を行ったとみるほかない。そうすると,両名の供述の前記核心部分と密接に関連する,被告人がAに強制わいせつ行為をしたという供述部分についても,A及びBが意図的に虚偽の供述をしたとみるのが相当であり,両名の各旧供述全体の信用性に疑義を生じさせるものである。
  (2) 信用できる各新供述との矛盾
   ア 前記のとおり,A及びBは,再審請求審において,被告人がAに対して強姦等をした事実はなく,それぞれの旧供述は虚偽である旨述べるに至っているところ,かかる両名の各新供述が信用できることは,以下のとおりである。
 (ア) 客観的事実等との整合
 前記のとおり,平成20年8月29日時点において,Aの処女膜は破れておらず,この事実自体,被告人によるAへの強姦がなかったことを如実に示すものであり,A及びBの各新供述のうち,強姦の事実はなかったとの核心部分を積極的に裏付けるものである。
 (イ) 虚偽供述をする動機がうかがわれないこと
 A及びBの各新供述は,自身の確定審での各公判供述が虚偽であること,ひいては自身に偽証罪が成立することを認めるものであるところ,真に被告人によるAへの強姦等があったというのであれば,A及びBがあえて自身が偽証罪に問われる危険を冒してまで,被告人は無実である旨の虚偽の供述をする事情は何ら見当たらない。したがって,無実の被告人を放ってはおけない,偽証罪に問われるのは自身の責任であるなどという気持ちから,真実を打ち明けるに至ったとするA及びBの各新供述の信用性は高いといえる。
 (ウ) 虚偽供述をした理由及び真実を述べるに至った理由について合理的な説明をしていること
  a 確定審で虚偽の供述をした経緯等
   (a) Aは,被告人から強姦等された旨の虚偽供述をした経緯等について,①D及びEから尻以外も触られていないかと聞かれ,当初は否定していたものの,問い詰められた結果,これを否定できず,最終的には胸を触られたと答えてしまい,その後,強姦についても執拗に「やられたやろう。」などと問い詰められ,これも認めてしまった,②強姦等の被害状況についてはDから見せられた動画等をもとに,Dに言われるがままに供述したなどと供述する。
 前記①のうち,強制わいせつの被害を告白するに至った経緯については,Aの供述内容と,B,D及びEの再審請求審における各供述内容とで一部齟齬するところがあるものの,強姦を認めるに至った経緯の部分については,Eは,再審請求審において,尻と胸を触られたのであれば強姦もされているのではないかとの疑念から,DとともにAを問い質したところ,Aは当初これを否定していたが最終的には認めた旨供述しており,Eの供述と一致している。なお,DはAを問い詰めたことはない旨供述するが,Eの前記供述とは相反する上,Aから強姦被害の告白を受けた経緯に関する質問に対して曖昧な供述に終始していたことなどからすれば,Dの前記供述の信用性は相当に疑わしい。また,Dは,平成20年8月29日にAをF病院に連れて行って受診させ,処女膜が破れていないとの診断がなされたが,その後も,Aの処女膜裂傷の有無を確認するために,同年9月8日と同月24日の2回にわたりG病院という別の病院で受診させていたところ,当時のDのこのような行動状況からすれば,Eと同じく,Aが強姦されたのではないかという強い疑念を抱き,これを否定するAの言葉を容れることなく,執拗に問い質したことがあったと考えるのが自然である。
 前記②の点については,DはAに対して動画を見せたり実演してみせたことはない旨供述している。しかしながら,性体験のない弱冠14歳の少女が,大人から助言等を得ることなく,実際には体験していない強姦等の被害状況について事細かな供述ができたとは考えられず,Dが動画を見せたかはともかく,Dらによる誘導等に基づく部分が少なからずあったと疑われる。
 したがって,Aの新供述は,前記のとおり一部その他の証拠と齟齬する部分はあるものの,虚偽供述をするに至った理由等について合理的な説明内容といえる。
   (b) Bは,Aが泣きながら,被告人から胸を触られたと突如言い出したため,嘘とも思えず,また,D及びEから長時間問い詰められた上,Aからも「おにいも見たやろ。」などと言われたため,話を合わせてしまった,Aを信じていたし,Aが強姦されたというのであれば自分がそれを否定しても信じてもらえないだろうという気持ちから目撃した旨嘘をついたと供述するところ,その供述内容は自然かつ合理的である。加えて,Bが曖昧な答えをしたことから強い口調で問い詰めた旨のEの供述とも一致していることからすると,Bの前記供述は信用することができる。
  b 真実を述べるに至った経緯
 Aは,確定審の一審判決が言い渡された後に,確定審での供述は虚偽であった旨をDやEらに述べたが,話し合いの結果,偽証罪に問われるおそれがあることや,確定審で証言等をした人に迷惑がかかるなどの理由から真実は伏せておくことになり,その後,DやEと疎遠になり,かつ,Cから促されたため真実を述べることにした旨供述する。また,Bも,前記話し合いの結果,真実は伏せておくことになったが,その後,Aが弁護人に真実を話した旨の連絡を受け,自分も真実を話そうと思った旨供述する。
 A及びBの前記各供述は,各人が真実を述べるに至った経緯について合理的に説明するものである。また,Aは,平成22年8月2日,H病院精神科神経科を受診しているが,同病院の診療録(当審甲6)には,Aの陳述として,確定審の一審判決があった頃から,Aが性的虐待はされていないと言い出していた旨が記載されており,前記各供述を裏付けている。さらに,Eも,再審請求審において,確定審の一審判決後,AやBが実はうそだったと話したが,Aらが何らかの罰を受けるのをおそれて公にはしなかった旨供述しており,A及びBの前記各供述は,Eの供述とも合致しており,信用性が認められる。
  c 以上のとおり,A及びBの各新供述は,両名が確定審の公判で虚偽供述をした理由や,再審請求審において真実を述べるに至った経緯等について合理的な説明がなされており,格別不自然な点はなく,被告人がAに対して強姦等をした事実はないとのA及びBの各新供述の信用性には何らの問題はない。
   イ 以上のとおり,被告人がAに対して強姦等をした事実はないとのA及びBの各新供述は信用できるから,これに反し,かつ,両名が虚偽であったと認めている各旧供述は信用できない。
  (3) 各旧供述の供述内容の疑問点
   ア また,A及びBの各旧供述の内容について改めて検討してみると,各旧供述には,いくつかの不自然な点や疑念を抱かせる点を指摘することができる。まず,A及びBの各旧供述によれば,被告人は,被告人の母やBがいる部屋の隣の部屋や廊下で各犯行に及んだことになるが,そのような家族への犯行の発覚の可能性が非常に高い状況で,被告人が嫌がるAに対して強姦等を試みるとは,何らかの特別な事情がない限り通常は考えられず,その内容自体不自然であるとの感を抱かせるに足りるものである。また,A及びBは,平成16年11月にAが被告人に強姦されていた際に泣き叫んでいた旨供述するところ,Bの旧供述によると,当時,隣の部屋で被告人の母と一緒にテレビを見ていたが,心配になってAの部屋をのぞき見て,本件犯行を目撃したというのである。被告人の母は,当時,高齢であったとはいえ,Aの旧供述によっても,少し耳が遠かったが,大声で話さなくとも聞こえる程度であったというのに,BがAの叫び声を聞いて異変を感じたが,一緒にテレビを見ていた被告人の母が全くこれに気づかなかったというのも不自然であり,他方で,聞こえていたにもかかわらず被告人の母が知らないふりをしたとも考えられないのであって,この点でもA及びBの各旧供述の内容に疑念を生じさせるものといえる。
   イ さらに,Aの旧供述には,最初の強姦被害の時期等に関して不合理な供述の変遷が認められる。すなわち,Aは,捜査段階当初は,平成17年11月に初めて強姦され,その後にトイレに行ったところ下着に血が付いており,同年10月頃に初潮を迎えていたため,その血を見て生理が始まったのかと思った旨述べていたにもかかわらず,捜査段階の途中で,最初に強姦された時期は平成16年11月の誤りである旨供述を変遷させている。Aは,その理由について,確定審の公判において,最初の強姦被害の時期は,Cが経営する美容室の従業員の娘の結婚式に出席した次の日であったとはっきり記憶していたが,その結婚式の日にちを1年記憶違いしていた旨述べている。しかしながら,変遷後のAの供述によれば,最初に強姦された時期は平成16年11月となり,被害当時Aはまだ初潮を迎えていなかったことになるところ,そうであるとすればAが「初潮を迎えていたため下着に付いていた血を見て生理かと思った」という供述内容と大きく矛盾することになり,単に結婚式の日にちを1年間違えていたというだけでは,納得のいく説明がなされているとはいえず,不合理な変遷と指摘せざるを得ない。
 そして,BもAと同様に最初の強姦を目撃した時期について平成17年11月から平成16年11月へと供述を変遷させているところ,Bは,確定審の公判において,変遷の理由について,結婚式に中学校の制服を着て行った記憶があり,一学年間違えてしまった,Aと被害時期等について話し合ったことはない旨述べている。しかしながら,A及びBの両名が被害時期について偶々同じような記憶違いをするとは考え難く,Bの旧供述は,捜査官の事情聴取に先立って,何らかの方法でAの供述内容を知らされ,これに迎合して供述していたことが強く疑われるのであって,そうすると,被害時期にとどまらず,被害内容それ自体についても,その信用性は大きく減殺されるものである。
  (4) 小括
 以上のとおり,A及びBの各旧供述は,その核心部分が重要な客観的事実と大きく矛盾している上,A及びB自身が各旧供述は虚偽であり,被告人による強姦等の事実はなかった旨の各新供述をするに至っており,各新供述には信用性が十分に認められる。加えて,各旧供述の内容自体にも不自然不合理な点を指摘できることからすると,両名の各旧供述が信用できないことは明らかである。
第4 結論
 以上のとおり,本件各公訴事実については,犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
 (裁判長裁判官 芦髙源 裁判官 藏本匡成 裁判官 髙津戸朱子) 

http://www.moj.go.jp/content/001131747.pdf
性犯罪の罰則に関する検討会の第4回会合
○宮田委員 私は刑事弁護をする立場から先日のヒアリングを聞いていて,違和感があるというか,この視点が落ちているのではないかと思った部分があります。それは,言ってみれば「被害者神話」あるいは「逆強姦神話」とでも言えるものです。つまり,私どもが捜査段階,公判段階で弁護活動をしているときに,被疑者,被告人の言い分を警察官や検察官に伝える,裁判所で裁判官の前でそれを申し述べる際,警察官や検察官,あるいは裁判官が,「このような恥ずかしくて強烈な経験をした被害者が嘘を付いているわけがない」という御覧のなり方をしていないのだろうかと感じるのでございます。
自分自身の例ではなく,判例集に出てきている例や先輩方からお聞きしたことを幾つか申し上げます。加害者とされた人は便宜上アルファベットで示します。
富山県で氷見事件という強姦罪の再審無罪事件がございましたが,真犯人が現れて,受刑しているAさんが実は無罪であったとが分かりました。この事件では,2人の被害者の方が写真で「この人が犯人だ」とAさんを特定しました。その後,生でAさんを見たときに,1人の被害者はもしかするとちょっと違うのではないかとおっしゃっていたのだけれども,最初の被害者2人の写真識別がある意味決め手になってAさんが逮捕され,Aさんが虚偽の自白をしたという特異な流れがあり,有罪判決が言い渡されました。ただし,その自白の内容は非常に不合理なものだったのでございます。
また,先日,水戸地裁土浦支部で強姦事件の無罪判決が出ました。若い被害者とBさんとの非常に特異な人間関係の中で起きた事件なので,この被害者の言うことは非常に信用できるというふうに検察官はお考えになったのだろうと思います。弁護人が検察官に対して,Bさんにはアリバイがあると,スケジュールや事件の日に他の場所で撮られたBさんの写った写真等を示して,この人は無実だと主張しましたが,起訴されました。そして,この事件は非常に特殊な人間関係が背景にあるということで,被害者の証言だけではなく,心理学者の鑑定証言等の長い検察官証拠の取調べがあり,被告人はその間保釈されることもありませんでした。最後に,アリバイとして写真を撮った機械のハードディスクの解析までして無罪が言い渡されました。
ほかにも,強姦事件で,非常に申し上げにくいことですが,被害者が,男性との合意に基づく性的な関係があったことが恋人あるいは夫に露見したということから,強姦をされたと虚偽を述べたのではないかと思われるような事件もございます。特殊な人間関係が背景にあり,被害者と加害者と目された男性の交際に関する事情等を立証することが成功して,無罪あるいは不起訴になったものの,それまでに非常に時間がかかった案件もございます。
このように,被害者と加害者の1対1の関係で起きることも多い性犯罪の刑事手続において,「被害者の言うことの方が信用できる。被告人の言うことは信用できない」という形で切って捨てられる無実の案件もあるのではないかと思われるのです。被害者の言うことが信用できないと判断した判決だとして,女性団体等が非常に批判している最高裁の判決は,客観証拠がない事件で供述証拠に頼ることに非常に問題があることを指摘した案件であると,私たち刑事弁護をやる弁護士は理解しております。供述に頼らず客観的な証拠を収集することは捜査の基本であり,判断に際しては,客観的な事実あるいは客観的な証拠に照らして供述が信用できるのかどうかが考えられる必要があります。
刑事裁判には「無罪の推定」,そして,「検察官の立証責任」という大原則があり,その原則に基づいて判断がされなければならないものであるのに,「被害者の言うことが信用できる」というバイアスによって動いている部分がないかという疑問を常に持ちながら私たちは活動しているわけでございます。
このような被害者や目撃供述に対しての過度の信頼のようなものは,性犯罪に限った話ではないのかもしれませんけれども,ヒアリングに際して,「被害者の言うことをなぜこんなに信用してくれないのだ」という被害者の方たちの声がありましたが,一方で,被害者の言うことを一方的に信じることによって誤った裁判がなされた例もあることについて,私はやはりここで声を大にして言わせていただかなければならないと思った次第です。お時間を頂きまして,ありがとうございました。
○山口座長 ただ今の御発言は,本検討会で検討する性犯罪の罰則に関する全般的なことについての御発言ということで理解をさせていただきました。この段階で特に何か御質問等がございましたらお願いしたいと思いますが,なければ,この段階では宮田委員のお考えをお伺いしたということで,先に進ませていただきたいと思います。それぞれの各論点で随時委員の皆様に御意見をお伺いし,御発言いただくことになりますので,ただ今の御発言についてはそういう形にさせていただければと思いますが,よろしゅうございましょうか。
(一同 異議なし)