児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

長野県子どもを性被害から守る条例(深夜同伴)違反の被疑者が自殺

 信濃毎日新聞が、被疑者の遺族と被害者の保護者に接触しています

遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。
 男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。
 少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。

「(少女は)大きな心の傷を負っているのではないかと心配している。数年といった長期的な支援が必要だ」というのは深夜同伴によるものではなく、自殺の影響ですよね。

「長い支援必要」支援委で検証 子どもの性被害条例 /長野県
2017.07.13 朝日新聞社
 昨年施行された「県子どもを性被害から守る条例」を初めて適用した事件を、県子ども支援委員会が12日、被害者の心のケアなどの観点から検証した。県警の担当者が初めて出席した。

 検証したのは、県警が4月、18歳未満の少女を深夜に連れ出したとして、同条例違反(深夜外出の制限)の疑いで男ら2人を書類送検した二つの事件。支援委員会の求めに応じて県警少年課の担当者が出席し、事件の概要や事情聴取の経過などを説明した。個人情報を扱うため、非公開で議論した。

 このうち1件では、書類送検された茨城県の男性地方公務員が死亡。県警は自殺だったと明らかにした。児童精神科医で、支援委員会の木村宜子会長は「(少女は)大きな心の傷を負っているのではないかと心配している。数年といった長期的な支援が必要だ」と指摘した。

 長野地検は男性地方公務員が死亡した経緯などについて「プライバシーの点からコメントを控える」としていた。
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県「性被害」条例違反2事件検証 阿部知事「良い運用へ努力」
2017.07.13 信濃毎日新聞
 阿部守一知事は12日の記者会見で、「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)で県外の男性2人が摘発されたことについて、条例の運用状況を検証する「県子ども支援委員会」の議論などを踏まえ、「しっかり検証し、条例の運用が良い方向になるよう努力していく」と述べた。

 県警は4月、ともに同条例違反容疑で茨城県前橋市の男性2人を書類送検。いずれも18歳未満を「威迫」や「困惑」させて行う性行為などを禁じた17条の処罰規定ではなく、18条の「深夜外出の制限」で摘発した。このうち、茨城県の男性が同罪で略式起訴された後に自殺した。

 「深夜外出」という「外形」が整えば立件できる18条について、知事は「家庭に戻りたくない子どもが外出しているからといって、みんな処罰の対象になるわけではない」と説明。「構成要件を明確化しないといけない中で、どこかで線引きしないと罰則がまったく適用できなくなる」とした上で、「問題があれば改善していくことが重要」との考えも示した。
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県「子ども性被害防止」条例、施行1年 阿部知事が会見 県民運動再構築へ 罰則初適用言及回避
2017.07.08 信濃毎日新聞
 18歳未満を「威迫」や「困惑」させて行う性行為などへの処罰規定を盛った「県子どもを性被害から守るための条例」が7日、施行から丸1年を迎えた。阿部守一知事は同日の記者会見で「総合的な対策によって子どもを性被害から守っていく思いを新たにしている」と述べ、「青少年サポーター」制度を改善するなどし、性被害防止に向けた県民運動を再構築する意向を示した。

 一方、県警が昨年11月施行の罰則を初めて適用し、同処罰規定とは別の「深夜外出の制限」の疑いで4月に書類送検した茨城県の男性が自殺したことについては「個別事案についてはプライバシーの問題もあり、公の場における議論は慎重な対応が必要」として言及を避けた。

 知事は罰則について「他県の条例と比べれば、かなり絞り込んだものになっている」と説明。警察による恣意(しい)的な捜査を懸念する声もあるが、知事は「条例は子どもの人権を守ることが基本」と強調した。条例の検証については、子どもの人権という観点から「県子ども支援委員会」で「しっかり議論いただいている」とした上で「検証の中で仮に必要な対応を求められれば、より良い制度、運用がされるようにしていく」と述べた。ただ、捜査の妥当性については「県警に言ってもらう話」とした。

 罰則を巡っては、犯罪の構成要件をより限定的に明確化すべきだとする指摘の一方、処罰対象の拡大などを求める声がある。知事は条例に盛られた見直し規定について「現時点で直ちに見直しを行うことは考えていない」とした。

 県民運動の担い手として新設したボランティアの青少年サポーターが、当初の目標2千人に対して600人余にとどまっている点では「具体的に期待する役割や活動をはっきりさせ、県民に参加してもらえる仕組みに改善していきたい」との考えを示した。
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「性被害防止」条例の深夜外出制限 県「他県より限定的」 男性自殺では詳細情報示さず 県会委
2017.07.04 信濃毎日新聞
 「県子どもを性被害から守るための条例」違反(深夜外出の制限)の疑いで書類送検された茨城県の男性が5月に自殺したことを巡り、県は3日の県会県民文化委員会で、条例の制定趣旨が「性被害の防止」であり、「他県よりも限定的に運用されると理解している」との見解を示した。委員からは、摘発事例について「より詳細な情報がなければ、議会としてチェックできない」などの意見が出た。

 県条例の18条2項は、保護者の委託や同意、正当な理由がなく、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出すなどの行為を禁止。違反者には30万円以下の罰金を科す。他県の青少年健全育成条例にも同様の規定がある。

 同委員会で寺沢功希委員(信州・新風・みらい)は、自殺に至る経緯や男性の生前の発言、両親の思いなどを報じた本紙の報道を念頭に、「2人の関係が続いたとしても、深夜に連れ出すことは条例違反か」と質問した。

 高橋功・次世代サポート課長は、他県の条例が「青少年の健全育成の観点」で制定されていると説明した上で、県条例は「深夜に外出している状況は(18歳未満に)性被害が及ぶ危険性が高く、予防規定として(18条を)置いている」と述べた。「恋人関係には当たらないとの判断の下、(県警は)書類送検したと理解している」とも答弁した。ただ、県警の判断に関し、根拠は示さなかった。

 県側は、県警が初めて書類送検した男性2人と、少女らの居住地域や年齢などを示した資料を提示した。毛利栄子委員(共産党)がより詳しい情報を求めたが、県は「プライバシーへの配慮」を理由に応じなかった。轟寛逸こども・若者担当部長は、処罰規定について「直ちに見直すつもりはない」とした。

 一方、警察委員会では小林伸陽委員(同)が男性の自殺に触れ、「冤罪(えんざい)や行き過ぎた捜査が心配」と指摘。条例の運用状況を検証する「県子ども支援委員会」などに、県警が詳細な情報を提供するよう求めた。三石昇史生活安全部長は「プライバシー保護や二次被害防止に配慮し、できる範囲で努力する」とした。
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検証・県「子ども性被害防止」条例1年(1)=安部哲夫氏 「深夜外出制限」適用に課題
2017.07.02 信濃毎日新聞
 18歳未満を「威迫」や「困惑」させて性行為することなどへの処罰規定を盛った「県子どもを性被害から守るための条例」が県会で成立して1日で1年。4月には、保護者の同意なく深夜に18歳未満を連れ出したとして、県警が条例の「深夜外出の制限」違反容疑で、男性2人を初めて書類送検したが、このうち1人が5月に自殺していたことが明らかになっている。捜査が個人の内心に踏み入る危険性や、子どもを取り巻く環境の変化など、さまざまな意見が交わされた同条例。運用の透明性や課題について、条例に関心を寄せてきた人たちは今どう考えているのか。5人に聞く。

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[元「条例モデル検討会」座長 独協大教授 安部 哲夫氏]

<処罰対象限定の意味考えて>

 ―「条例モデル」を議論した県の検討会座長を務めた。条例の必要性、性格について改めてどう考えるか。

 「長野県は長い間、子どもの育成に地域が関わる県民運動を重視してきた。条例ありきではなく、住民の底力で子どもを育てる歴史的経緯がある。一方、運動が行き詰まり、他県のような条例があれば被害に対応できたという県警の歯がゆい思いもあった」

 「条例を検討する上で柱にしたのが教育と被害を受けた子どものケア、そして大人の行動規範を示すことだ。被害者には最初、被害意識がないことが多い。特に性病や妊娠などが伴う場合は後で非常に苦しむ。支援する公共の責任を明示する必要もあった」

 ―罰則について県は「極めて抑制的」な内容にしたと説明している。

 「17条で、『威迫』『欺き』『困惑』させて行為に及ぶなど、大人がしてはいけないことを具体的に例示して規範を示したことには意味があった。実際に適用されなくても、県民がこのような手段を用いてはならないとの問題意識を強く持ち、関心が高まることは望ましいことだ。犯罪としての構成要件を絞り込むほど警察にとって使いにくくなるのは当然で、これがぎりぎりのラインだろうというところで結論を示した」

 ―自由な恋愛に捜査が介入する懸念は依然残る。

 「確かに恋愛の形はさまざまだ。県警が具体的な運用基準をしっかり作れば、親が反対しているからといった理由で、継続的な1対1の関係に介入することはないだろう。行為者(加害者)が次々と女性と関係を持っている、複数と関係があるなど、あくまで子どもの健全な成長過程に照らして問題があるかが基準だろう」

 ―4月に罰則が初めて適用され、県外の男性2人が書類送検された。ともに18条の「深夜外出の制限」を適用したが、深夜外出という「外形」さえ整えば立件できる18条は抑制的と言えるのか。

 「18条は親の監護権の尊重を前面に出しており、一定の絞り込みはできている。親が認めていない場合、子どもは少年法の枠組みでも不良行為として補導対象になる。17条に比べて罰則は軽く、略式起訴で済むなど警察にとっては使いやすいだろう。子どもを保護するという視点もある。帰りが遅いからといって全てに網を掛けるわけではない」

 ―立件されたうち1人は事件を苦に自殺したとみられる。18条で処罰することに危うさはないのか。

 「18条は、時間という形式的なもので要件が固まっている。県警は実質的には17条での立件を目指したのだろう。正直、顕著な状況がなければ17条は認定しにくい。仮に18条が無限定的に適用できるというのであれば、限定的な機能を持たせる書きぶりが今後の課題で、どのように限定できるかの議論も必要になってくるだろう。条例の見直しは提案した県の責任で行うべきだが、見直しの働き掛けは県民レベルからあっていい」

 ―将来の厳罰化や適用範囲拡大を求める声も既に一部から上がっている。

 「それは条例の趣旨と違ってくる。条例ではあえて処罰対象を限定的にしたのだから、その意味を考えてほしい。そこは強調しておきたい」

 [あべ・てつお]

 独協大法学部教授。慶応大大学院博士課程満期退学。専門は刑事政策。「子どもを性被害から守るための条例のモデル検討会」元座長。茨城県青少年健全育成審議会前委員長。66歳。茨城県
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社説=性被害条例 県民に検証報告を示せ
2017.07.02 信濃毎日新聞
 県の「子どもを性被害から守るための条例」が成立から1年たった。反対意見を押し切って制定されたのに運用状況は不透明だ。
 一人の男性の自殺が波紋を広げている。条例に規定された深夜外出制限の違反容疑で書類送検されていた。

 条例は、保護者の委託や同意などがある場合を除き、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出す行為を禁じている。違反は30万円以下の罰金だ。

 茨城県の地方公務員男性(当時23歳)は、1月下旬の深夜、南信地方の10代後半の少女を誘い出し、公園に駐車した自身の車に一緒に乗った疑いで摘発された。端緒は職務質問。県警が公表しているのはここまでだ。

 遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。

 男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。

 少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。

 浮かび上がるのは、性被害が起きていなくても、深夜に親の許可なく一緒にいたというだけで処罰される現実だ。改めて処罰規定の妥当性が問われる。

 深夜外出制限は、18歳未満が自由意思で外出しようと、相手が恋人、友達であろうと関係なく適用対象になる。子どもの自由が過度に制約される。県弁護士会はそんな指摘もしてきた。

 問題は、摘発された事例が十分、検証されていないことだ。県が先月、条例の適用状況を報告した青少年問題協議会で事例の詳しい説明はなかった。

 条例にはもう一つ、処罰規定がある。威迫や欺き、困惑によって18歳未満に性行為やわいせつ行為を行ったり、行わせたりすることに対してだ。真摯(しんし)な恋愛でも捜査対象になると懸念されている。摘発例はないが、検証されなければ懸念は払拭できず、捜査の歯止めにもならない。

 条例は「施行の状況等を勘案しつつ検討する」という見直し条項を設けている。県は詳細な検証報告書を少なくとも1年ごとにまとめるべきだ。それを県民に示してこそ見直し条項が生きる。